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虫明亜呂無短編集 (ふたりの部屋)

  • 作品 : 虫明亜呂無短編集
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : A-
  • 分類 : スポーツ
  • 初出 : 1979年10月1日~10月12日
  • 回数 : 全10回(各回10分)
  • 原作 : 虫明亜呂無
  • 脚色 : 竹山洋
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 滝田栄

本ラジオドラマ「虫明亜呂無短編集」は作家・虫明亜呂無(むしあけ・あろむ)さんによるスポーツをテーマにした10編を原作とする作品です。


本名です

珍しいお名前の虫明さんですが、名字も名前も本名とのこと。
虫明さんご自身は文京区の湯島生まれ(開成中学校→早稲田大学)ですが、虫明は岡山に多い実在する名字。
亜呂無は大正時代の洋画家だった父・虫明柏太氏がフランス語の「香り」(英語でいうアロマ)から付けたのだそうです。

直木賞候補作

さて、映画や文芸、スポーツなどの評論をされていた虫明による初期の短編小説から10編を選んで音声化したのがこの作品です。
当時「虫明亜呂無短編集」という書籍があった訳ではなく、「シャガールの馬」収録の作品を中心に番組独自で選んだ編成のようです。
ちなみに虫明さんはこの「シャガールの馬」で直木賞の候補にもなっています。

1話10分

さて、1978年の番組開始から1982年まで「ふたりの部屋」は10分番組だったのでこの作品も1話10分で制作されています。
もともと虫明さんは評論家時代から抒情性の高い文章を書く方だったそうですが、本作品は1話10分しかないこともあり非常に抒情性・抽象性が高い作品です。

スポーツものとはいえ

そもそもスポーツものでありながら、生々しい闘争の現場を描くというより、スポーツをとおして人間像あるいは人生の一場面を描く内容になっています。
その一場面も、選手生命の晩年あるいはスポーツに関わる誰かの人生の曲がり角が中心で、特に男女の関係が絡むものが多く、全般的に人生の苦さをにじませたものになっています。
ちなみに脚色を担当された竹山洋さんは多くのTV・映画で脚本を書かれた方で、後日、竹中直人さん主演の大河ドラマ「秀吉」や、唐沢寿明さん・松嶋菜々子さん主演の大河ドラマ「利家とまつ~加賀百万石物語~」などで有名になる方です。

各話の概要

さて、本作品でラジオドラマ化されている10編の概要は以下のとおりです。

◆第1話 「シャガールの馬」(競馬)

パリに置いてけぼりにされた女。獣医の男は馬に関係した仕事をしていると信じ遂に所在を突き止めたが。

◆第2話 「黄色いシャツを着た男」(野球)

リリーフ投手として脚光を浴びた日々。どうしたんだ俺は。今日がラストチャンスなんだ。見ていてくれ、ヤスコ。

◆第3話 「アイヴィーの城」(テニス)

美しいスマイルを見たければ石黒恵子の試合を見よと言わてきた。しかし肩の痛みはテニスをやめろと言っているようだ。私は笑えるのか。

◆第4話 「あの女だけには」(スケート)

札幌オリンピックからもう4年。私には女性らしい日常はなかった。もし結婚していたら外国人スケーターのようになれていたのだろうか。

◆第5話 「英国(イギリス)庭園」(マラソン)

いつもマラソンコースでデッサンをしている女。ランナーは走ることで全てをさらけ出す。だが女の書くランナーの顔はどれも似ていた。

◆第6話 「ふりむけば砂漠」(100メートル走)

初めてヒロシにあったのはジャマイカのレストランだった。女優と100mランナー。ふたりなぜ女優とランナーになったのか。

◆第7話 「水からあがる時」(水泳(背泳ぎ))

オリンピックの最終選考会にエースの姿はなかった。昔は厳しく、そして楽しかった。水からあがる時が来たのだ。

◆第8話 「タンギーの蝶」(野球)

1年間の海外出張の前に野球の観戦に女を誘う男。テレビディレクターの男は仕事、家庭など多くのものを持っていたが女は…

◆第9話 「おんなの極道」(?)

(本作品は音源未所有です。お聞かせいただける方がいらっしゃいましたら是非。)

◆第10話 「もっと簡単に」(スキージャンプ)

スキージャンプの写真撮影に女を誘うカメラマン。ジャンパーは一生に1度か2度しかない完全なジャンプのために飛ぶ。男はなぜ女を誘ったのか。

滝田栄さん主演

さて、本作品の出演者は俳優の滝田栄さんと女優の二宮さよ子さん。
滝田さんは劇団四季でミュージカルをされていましたが、本作品と同じ1979年の大河ドラマ「草燃える」でTVに進出。
正統派二枚目として人気を博し、翌1980年には連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」で主演の星野知子さんの夫役を演じた後、1983年には大河ドラマ「徳川家康」では主役の徳川家康を演じました。
またミュージカル俳優としても活動を続け「レ・ミゼラブル」では日本版初演から14年間、鹿賀丈史さんとともにジャン・バルジャンを演じました。
本作ではあまり大きな声を上げることもなく静かに演技されるのが印象的でミュージカル俳優ぽさはあまりありません。

アナウンサーがご出演

なお、本作品は番組名のとおり基本的に滝田さんと二宮さんのお二方しか出演されませんが、向坂松彦アナウンサー、西田善夫アナウンサー、杉山邦博アナウンサーといったNHKの誇るスポーツアナが実況シーンを担当しています。
主演や脚色も含めて意外に豪華な作品です。


Hirokazu

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