私は、スーパーキューピッド 作:菊地百恵(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : 私は、スーパーキューピッド
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2020年11月7日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 菊地百恵
  • 演出 : 大川ゆき乃
  • 主演 : 桜庭ななみ

銀行員、中野綾の出向先は徳島県の事業引継ぎ支援センター。
後継者のいない中小企業と後継者候補者をマッチングするのが仕事だ。
しかしなかなか上手くはいかない。
今日も畜産会社のマッチングがうまくいかず大学時代のゼミ友人と飲んで管をまいていたのだが、その愚痴を聞いてくれていた友人が急に言い出した。
「頼もうかな。うちも依頼できるやろか。」



本作品「私は、スーパーキューピッド」は脚本家・菊地百恵さんによるオリジナル脚本によるオーディオドラマでFMシアターで放送されました。

外連味ある系よりも…

菊地さんの脚本の作品は「黒十字の魔女 ヴィクトリア朝怪奇冒険譚外伝」や「白銀騎士団 シルバー・ナイツ」を紹介済みですが、これらは原作または原案のある作品ですので、オリジナル脚本の作品を紹介するのは初めてです。
正直なところ(原作のパワーの問題かも知れませんが)上記2作品はいまひとつピンとこなかったのですが、本作品は穏やかに聞ける聴き心地の良い作品でした。
僭越ながら、菊地さんは本作品にような作品の方があっているのではないかと感じました。

地方局らしいテーマ

さて、本作品はNHK松山局の制作なのですが、そのためか作品のテーマは過疎の街の再生。
FMシアターでよくある内容ですが、これを事業引継ぎセンターによる後継者のマッチングという切り口で料理することにより、一種のお仕事ものの色彩を持つ作品になっています。

主演は桜庭ななみさん

マッチングに奔走する銀行員の中野綾を演じるのは女優の桜庭ななみさんなのですが、この綾の言動がとても自然で嫌味な感じがないことが「後継者のいない地方のスーパー」という舞台から想像される暗さを払拭しており気楽に聞くことができました。
桜庭ななみさんはFMシアターでは本作のほか2022年の「私の人生は喜ばれない」に、青春アドベンチャーでは2023年「うるはしみにくし あなたのともだち」に主演されており、NHK-FMのオーディオドラマではお馴染みです。

準主役は犬飼貴丈さん

また、後継者候補となるサーファーの内田湊人がうざさを感じさせないギリギリの線で軽い調子なのも良い方向に作用していると思います。
内田湊人を演じるのは2017年に「仮面ライダービルド」に主演した犬飼貴丈(いぬかい・あつひろ)さん。
とかくイケメンぶりが注目されやすい仮面ライダー俳優ですが、「元中学生日記」の佐野岳さんといい、「六人の嘘つきな大学生」の奥野壮さんといい、演技も印象的な方が多いです。
また、その他の出演者も中原丈雄さん、徳井優さん(お声を聴いているとどうしても「阪堺電車177号の追憶」を思い出してしまう)、谷川清美さん(徳島県ご出身のため本作品では徳島ことば指導も兼任)、佐川和正さんなどオーディオドラマに慣れた面々が過度に重くならないように演じており聞きやすい作品です。

気持ちの良い作品

さて、本作品、綾の実家も同様に事業承継に失敗していたり、有能だけど頑固な社長が割とあっさりと翻意してしまったり、そこはかとなくご都合主義なシナリオではあります。
上記ではお仕事ものと書きましたが、事業承継というプロフェッショナルな世界をリアルに描いている訳でもありません。
その面では、地方ものとお仕事ものの双方の側面が中途半端になってしまった感はありますが、FMシアターの50分という枠の範囲で起承転結のはっきりしたわかり安い作品になっていると思います。
まあ、スーパーキューピッドの「スーパー」がスーパーマーケットの「スーパー」を表すとは思いませんでしたが。


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