魔人復活 第2部 地底の魔術王 原作:江戸川乱歩(アドベンチャーロード)

格付:B
  • 作品 : 魔人復活 第2部 地底の魔術王
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B-
  • 分類 : アクション(国内)
  • 初出 : 1987年7月20日~7月31日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 江戸川乱歩
  • 脚色 : 大野哲郎
  • 音楽 : 桜田誠一
  • 演出 : 上野友夫
  • 主演 : 広川太一郎

昭和24年、まだ「青銅の魔人」の事件の余韻もさめやらぬ頃。
少年探偵団員の天野勇一君の前に、黄色と黒の髪の奇妙な男が現れた。
彼は自らを「魔法博士」と名乗り、「魔術を見せてやる」と誘って勇一君を始めとする少年探偵団員を自らの家に招く。
しかし、その場で魔法博士と勇一君は姿を消してしまったのだ。
魔法博士とは何者なのか、彼の目的は一体何なのか。



江戸川乱歩さん原作の少年探偵団シリーズを原作とする作品です。
2013年9月にこのブログで初めての少年探偵団シリーズ「透明怪人と黄金どくろの謎」をご紹介してから1年弱。
本作品「魔人復活 第2部 地底の魔術王」の紹介をもって、アドベンチャーロード版の少年探偵団シリーズを全て紹介することが出来ました。

異例の長期シリーズ

なお、詳細はこちらの一連の記事を見て頂きたいのですが、青春アドベンチャー系列の番組では、何作品にも分けて長期のシリーズ作品を放送したことが何度もあります。
その中でもこの少年探偵団シリーズはとびきり多くの放送回数を使ったシリーズでした。
しかも、広川太一郎さん、羽佐間道夫さん、中西龍さんを始めとした出演者や、大野哲郎さんや上野友夫さんなどのスタッフは、全作品、ほとんど同一。
少年探偵団シリーズは、過去NHKのAMラジオや民放のラジオで何度もラジオドラマ化されており、やはりラジオドラマの原作として別格の作品だと感じます。

もはや犯罪者ですらない

さて、前作「魔人復活 第1部 青銅の魔人」で、愉快犯化しつつあると書いた、妖怪博士こと怪人二十面相ですが、本作品ではもはや何も盗む気配がありません。
一応、この事件で冒頭で誘拐はしているのですが、これすら営利目的の誘拐ではありません。
全体的に、やっていることは犯罪というよりは悪戯に近く、実際の行動もミステリーのトリックというより手品です。
これに対して明智ですら作中で「こんな途方もないことを思いつくのは…しかし何のために…」といっているほどです。
二十面相の相手も、本作では明智と言うより小林少年を始めとする少年探偵団がメインとなっている有様。
そのため本作品では、小林少年の他、天野勇一君や篠崎君、そして少年探偵団の世話役のラジオドラマオリジナルキャラクター・セツコさんの活躍が目立っています。

「怪人」とは?

ところでこの二十面相、「怪盗」ではなく「怪人」であることに、子どもの頃の私は全く気がついていませんでした。
言わずと知れたアルセーヌ・ルパンが「怪盗」であるのに対して、二十面相は「怪人」なのです。
これは、少年雑誌に連載するためには「盗」という字を使うのは良くない、との理由でこうなったのだそうです。
でも、そもそものルパンの「怪盗」も、もともとのフランス語「gentleman cambrioleur」では強盗紳士くらいの意味で、これを日本語に意訳したもののようです。
「怪盗」も「怪人」も今では全く違和感がなくなっていますが、先人の苦労が込められたネーミングなのですね。

単なる意趣返し

その他、内容は、まあ、その、あれです。
典型的な少年探偵団モノというか、きつい言い方をすると“探偵ごっこ”の観があります。
というのも、原作は1950年発表の「地底の魔術王」(雑誌連載時のタイトルは「虎の牙」)ですが、特に今回の二十面相は明智一党に対する復讐しか目的にしておらず、明智関係者以外には全く犯罪行為を働いていません。
しかも、二十面相は基本的に血を見るのが嫌いな平和主義者ですので、明智一党に対しても意趣返しが出来れば十分で、殺そうとは全く思っていないはずです。

むしろ笑える

そのためいくら大がかりで本格的な仕掛けをしているとはいえ、貴重な美術品をぎりぎりの攻防で奪い合うような緊張感はなく、どこかコミカルな雰囲気が漂っています。
作中で図らずも二十面相が部下にボーナスを出していることが明らかになる(二十面相一党はワンマン体制ではあるものの、待遇面では意外とブラック企業ではないようです)ことも微妙にコミカルです。
面白いと言えば、羽佐間さんの声で各作品ごとに二十面相が化けているのが誰かわかってしまうというラジオドラマ版の欠点?は以前も指摘したところですが、広川さんの声で明智が化けているキャラクターがわかってしまう場面も多いのが、このシリーズのトホホなところだったりなんちゃったりします。

気にしちゃいけない

…などと細かいことも書きましたら、本作品の楽しみ方はそういう細かい点を突っ込むことにあるのではありません。
広川さん、羽佐間さん、中西さんといったシリーズの看板役者さんだけではなく、青砥洋さんや林寸奈保さん(開化殺人帖シリーズ-にごりえ殺人事件・帝都誘拐団)や松坂隆子さん(地の涯、幻の湖)も、上野友夫さん演出作品ではおなじみの方です。
こういった不動の黄金メンバーの演技を素直に楽しめば良い作品だと思います。

次は暗号解読だ

さて、このブログでの紹介順ではこの作品が最後ですが、物語は「透明怪人と黄金どくろの謎」に続きます。
この作品は、後半で、紙と鉛筆を用意して一緒に暗号を解くという、ちょっと楽しい趣向のある作品です。
是非、こちらの記事もお読み下さい。

【アドベンチャーロードの少年探偵団シリーズ】

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