- 作品 : 白狐魔記 源平の風
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B-
- 分類 : 伝奇(日本)
- 初出 : 2014年7月21日~7月25日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 斉藤洋
- 脚色 : 山本雄史
- 音楽 : 日高哲英
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 成河
狐を狩る一方で、狐に騙されることを恐れてもいる。
そんな賢いと同時に愚かな、人間という不可思議な生物に興味を持ち、人間の言葉を覚えようと思い立った一匹の狐がいた。
そして、彼は、ある若武者に出会う。
崖を駆け下りていく鹿を指さし、「鹿も獣なら馬も獣。同じ崖を降りられないはずがない」と宣言し、自ら崖を騎馬で駆け下りていく、その若者の名は源義経。
彼の作り出した凄惨な戦場を目の当たりにして、狐は再び考え込む。
なぜ、彼は、そして彼ら人間は、そうまでして殺し合うのか。
後に「白狐魔丸」(しらこま・まる)と名乗ることになるその狐は、人間という不思議な生き物への興味を募らせていくのだった。
斉藤洋さんによる児童文学作品「白狐魔記 源平の風」を原作とするラジオドラマです。
斉藤洋さん原作の作品としては、2013年放送の「シュレミールと小さな潜水艦」に続いて2作品目の青春アドベンチャー化であり、演出も同作と同じ藤井靖さんです。
また、全5回というボリュームや、主要キャストに今井朋彦さんが加わっている点でも、両作品は似ている面があります。
獣から見た人間の生態
さて、本作品は、歴史上の人物の事績や、彼を取り巻く人間の営みを、狐という第三者の目から描く作品です。
本作品において狐の観察対象となるのは源義経。
人ならぬ狐の視点ですので、基本的には武人である義経の行為の愚かさを批判的にみることになります。
しかし、狐自身が人間の持つアンビバレントな魅力にひかれていること、いてもたってもいられなくなり観察者の立場を捨てて介入してしまう熱血狐であることから、単純な人間批判のような説教臭さはあまり感じませんでした。
ただ、全5回という青春アドベンチャーでは短めの枠であることに加え、前半を狐が修行をして人に化けられるようになるまでに使ってしまっているため、義経との関わり合いはかなり端折って描かれています。
そのため、何となく物足りない印象が残りました。
源平争乱の話は個人的に好き
とはいえ、個人的に私、この源平期の話って好きなんですよね。
特に、本作品は武蔵坊弁慶や伊勢三郎の陰に隠れがちな佐藤忠信にスポットライトが当たっており、意外とわかっているなあ、と感じます。
NHK新大型時代劇「武蔵坊弁慶」の終盤の回、例えば「吉野の灯」(第24回)、「地に潜む」(第25回)、「荒ぶる海へ」(第28回)、「安宅の関」(第29回)、「衣川立往生」(最終回)などを見て涙した私としては、意外と嬉しい内容でした。
ただ、ラストはいくらなんでも尻切れトンボすぎです。
少なくとも義経主従の末路までは描いてほしかった。
成河さん初主演
出演者は主役の狐(白狐魔丸)役を俳優の成河(ソンハ)さんが演じています。
成河さんは、青春アドベンチャーでは「レディ・パイレーツ」などに出演歴があり、単発の特集ドラマとしては「東の国よ!」で印象的な役を演じられていましたが、本作品は満を持して?の青春アドベンチャー初主演(多分)です。
また、仙人役は、藤井靖演出作品を始めとする多くの青春アドベンチャー作品の超常連である、今井朋彦さんが演じていらっしゃいます。
その他の出演者
そのほか、源義経役は、「星を掘れ!」の主演が印象的な川口覚さん、武蔵坊弁慶役は“いわいのふ健”さん(変わった芸名ですねえ)が演じられています。
なお、青春アドベンチャーで過去に源義経が登場した作品としては、本作品と同じ山本雄史さん脚色の「タイムスリップ源平合戦」がありますが、この作品では義経は今井朋彦さんが演じられていました。
ちなもに、今井さんは「風神秘抄」では源義平を演じられています。
そういえば、青春アドベンチャーでは「夢源氏剣祭文」でも源氏が登場します。
歴史ものの王道である江戸時代や幕末よりも、マイナーな時代を取り上げることが多いのが青春アドベンチャーの特徴の一つです。
シリーズは続くのか?
ところで、この「白狐魔記」の原作はシリーズものであり、「源平の風」はその第1作にあたるそうです。
原作はこのあと「蒙古の波」、「洛中の火」、「戦国の雲」、「天草の露」、「元禄の雪」と続きます。
本作品の結末があまりに唐突だったこともあり、この青春アドベンチャー版も続編ができるのか、楽しみです。
【30周年記念全作品アンケート】
2022年に当ブログが独自に実施した青春アドベンチャー30周年記念・全466作品アンケートの出演者編において、本作品に出演している今井朋彦さんが5票を獲得し8位になりました。
リスナーの感想等の詳細はこちらをご覧ください。
【2014/10/11追記】
何と早くも2か月後に続編「蒙古の波」が放送されました。
予想外の早さでした。
【2015/1/25追記】
そして第3作「洛中の火」も2015年1月に放送です。
ハイペースで続編が制作されています。
【2015/8/30追記】
第4作「戦国の雲」が放送中です。
ここまできたらあと2作。
最後まで行くのか?
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