封神演義 第3部 易姓革命 訳:安能務(青春アドベンチャー)

格付:AAA
  • 作品 : 封神演義 第3部 易姓革命
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AAA
  • 分類 : 伝奇(海外)
  • 初出 : 2000年8月7日~9月1日
  • 回数 : 全20回(各回15分)
  • 訳  : 安能務
  • 脚色 : 綾瀬麦彦
  • 音楽 : 住友紀人
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 石橋蓮司

巨星、墜つ!
今を遡ること3000年前、商王朝末期の中国。
商の大軍師・聞仲(もんちゅう)が倒れたことにより、商と周との戦いの趨勢はついに周に傾いた。
しかし、この戦いが仙界の争いの代理戦争であることを知る周の軍師・姜子牙(きょうしが)の心は晴れない。
心ならずも仙界主流派の操り人形として仙界再編の片棒を担がされたが、この戦いを人間にとって少しでも意味のあるものに変えたい。
そのためには、人間自らの手で新しい秩序を打ち立てることが必要だ。
平和的な新体制の確立をめざし姜子牙が諸侯との会談をセッティングし始めた頃、ただひとり仙界の陰謀に背を向けていた、一匹狼のはぐれ道士・申公豹(しんこうひょう)もまた自らの意地を掛け最後の行動を始めようとしていた。
商と周との易姓革命の行方は、まだ完全に定まった訳ではない。



数ある青春アドベンチャーの長期シリーズ作品の中でも、大型作品として一際、異彩を放っていた封神演義(ほうしんえんぎ)シリーズ。
完結編であるこの第3作「封神演義 第3部 易姓革命」も他の2作と同様に、「青春アドベンチャースペシャル」と銘打たれ、全20回と通常の倍のスケールで制作されました。

次々と退場していくキャラクターたち

さて、王侯、武人、政治家、仙人、道士、妖怪たちが入り乱れた殷周革命も、この第3作目でいよいよラストステージに入ります。
本シリーズは出演者も、俳優(石橋蓮司さん、大和田伸也さん、近藤正臣さんなど)と声優(野澤雅子さん、増山江威子さん、大山のぶ代さんなど)が入り乱れた豪華仕様だった訳ですが、そのあまりに多すぎるキャラクターも終盤に入り次々と死者が出て(封神されて)数が少なくなっていきます。
かといって新規登場するキャラクターが皆無かというとそうでもなく、怪しげな毒使い仙人・呂岳(ろがく)など、この期に及んでも新登場のキャラクターもいて、この作品の勢いは全く衰えていません。

考えてみると化け物だらけ

なお、この呂岳を演じるのは声優の槐柳二(さいかち・りゅうじ)さん。
中年の方であれば「バカボン」の「レレレのおじさん」役といえばわかるでしょうか。
この「レレレのおじさん」以外にも、本シリーズには、バカボンのママ(増山江威子さん)、愛・地球博マスコットのモリゾー(八奈見乗児さん)、「うる星やつら」のチェリー(永井一郎さん)、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎(野沢雅子さん)とねずみ男(大塚周夫さん)と目玉のおやじ(田の中勇さん)と主題歌(熊倉一雄さん)、ムーミンパパ&トトロ(高木均さん)、3代目・くまのプーさん(亀山助清さん)、「新世紀エヴァンゲリオン」の碇ゲンドウ(立木文彦さん)、「機動戦士ガンダム」のドズル・ザビ(郷里大輔さん)、そしてドラえもん(大山のぶ代さん)と、とんだ化け物(役の声優さん)だらけの作品になっています。

運命にあらがう

さて、話を元に戻しますと、本作品の終盤では、今まで何十話も掛けて親しんできたキャラクター達、特に主人公である姜子牙(演:石橋蓮司さん)側の者達が次々と死んでいきます。
「天命」という抗いがたい運命の前で、人はどう生き、どう死んでいくべきか。
その苦悩を最も感じているのは他ならぬ姜子牙自身です。

主人公側≠善

この作品では主人公側の黒幕である仙界・主流派は自分たちの考える理想(あるいは利益)のために、他派の仙人や人間の運命を弄ぶことにほとんど躊躇がありません。
雲中子(演:田の中勇さん)や赤精子(演:高木均さん)などの例外を除いたほとんどの大幹部の発言はとても良心的とは言えません。
彼らの非人道性を正面から扱った第8話の姜子牙・黄飛虎(演:大和田伸也さん)と、殷郊(演:松野太紀さん)との血が滲むような論戦は、この作品の聴き所の一つだと思います。

人間・姜子牙の決断

そして、最後、第20話で見せた“人間” 姜子牙の意地には感嘆!
また、最後の最後、寄り添って舞台を去っていく姜子牙と武吉(演:山崎銀之丞さん)の師弟の姿は、涙なしには聴けません。
基本的にこの作品は痛快なアクション大作ですが、実は意外と、組織の中で日々もがいているサラリーマンや学生にこそ共感される作品なのかも知れません。

各回のタイトル

なお、各回のタイトルは以下のとおりです。
どうみても悲劇しか予感できないタイトルが多いのが悲しいですね。

  1. 嵐の前の静けさ
  2. 呂岳の壷
  3. 周軍全滅の危機
  4. 死者の囁き
  5. いざ朝歌へ
  6. 嗚呼!黄天化
  7. 弔い合戦
  8. 立ちはだかった皇太子
  9. 挑発
  10. 有頂天
  11. さらし首
  12. 海洋派の切り札
  13. 万仙陣大爆破
  14. 不意うち
  15. 黄飛虎の遺言
  16. 地底戦実況中継
  17. 孟津上陸
  18. 諸侯会盟
  19. 商王朝滅亡
  20. 新たなる旅立ち

綾瀬麦彦さんの脚色

さて、スタッフの紹介に移りますと、まず本作品の脚色をされたのは、脚本家の綾瀬麦彦さん。
本ラジオドラマは、SFチックに翻案していた藤崎竜さんの漫画版「封神演義」と違って、原案の安能務さんの作品に忠実で、中華風の雰囲気を色濃く残しています。
しかし一方で、例えば西方から来たという設定の孔宣(演:北島善紀さん)が怪しい外国訛り風の日本語を話すなど面白い工夫もあったりして、きちんと噛み砕いた脚本になっており、エンターテイメント作品としてレベルが高いと思います。

残念ながら…

綾瀬さんは青春アドベンチャーの長編では、封神演義シリーズのほかには「せいけつ教育委員会ホイホイ」、「邪鬼が来る」、「完璧な涙」の3作品しか担当されておらず、是非、他にも担当していただきたい…と書きかけていたのですが、調べてみると、すでに2009年に55歳の若さでなくなられたとのこと。
ご冥福を祈るしかありませんね。

真銅健司さんと松本順さん

また、本作品を演出されたのは、第1作と同様に真銅健嗣さんです(第2作「朝廷軍の逆襲」のみ千葉守さん演出でした)。
後に「妖異金瓶梅」や「垂直の記憶」、「ウォーターマン」、「闇の守り人」、「蜩ノ記」、「オリガ・モリソヴナの反語法」などの個性的な作品群を演出されることになる真銅さん。
しかし、「封神演義」(第1作)は青春アドベンチャーにおける真銅さんの初演出作品ですので、本作品のあまりに豪華なキャストが実現できたのは制作統括の松本順さんのお力も大きかったのではないかと思います。

是非配信を

なにはともあれ青春アドベンチャーの誇る超大作
機会があったら是非皆様にも聴いていただきたいものです。
そのためにもNHKのスタッフの方は是非、オンデマンドで配信をお願いいたします。

【封神演義シリーズ】

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