- 作品 : 邪鬼が来る
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 1997年3月31日~4月11日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 谷登志雄
- 脚色 : 綾瀬麦彦
- 演出 : 松本順
- 主演 : 岡田義徳
今から1000年ほど昔の長徳三年。
伊勢国・鈴鹿山中で、僧侶・三条院初法(さんじょういん・もとのり)らの手によって、疫病をまき散らす醜悪な化け物「邪鬼」(じゃく)が宇宙へと放逐された。
しかし、1000年を経て邪鬼は再び地球へ舞い戻り、初法の生まれ変わりである潮見浄(しおみ・きよし)の身体に宿った。
そして無邪気な赤ん坊に見えた邪鬼は、浄の邪念を吸い上げて成長を始める。
そして、現代の科学では太刀打ちできない悪性の疫病EVIを発生させ始めたのだった。
本作品「邪鬼が来る」は、谷登志雄さんの小説を原作とするラジオドラマです。
ライトノベル原作
原作は「電撃文庫」というライトノベルのレーベルから出版されており、同じ電撃文庫原作の「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」(1996年)や「ダブル・キャスト」(2001年)、第5回角川学園小説大賞特別賞受賞作の「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(2002年)、ソノラマ文庫の「イカロスの誕生日」(2000年)などと並んで、数少ない明確にライトノベルと呼んでよい作品です。
ただしライドノベル作家ではない
ただし、原作者の谷さんはライトノベル作家としてはあまり有名ではなく、青春アドベンチャーでも本作以降は「ジャガーになった男」(2001年)、「プラハの春」・「ベルリンの秋」(2001年)、「失われた地平線」(2009年)といった作品での脚色での活躍が目立ちます。
ちなみに原作のタイトルは厳密には「邪鬼が来る!」。
このラジオドラマはNHK年鑑で見る限り「邪鬼が来る」。
なぜこの微妙な差が生じたのかは不明です。
主人公もラノベぽくはない
さて、平安時代を舞台として伝奇物ぽく始まる本作品ですが、舞台はすぐに現代へと移り、いかにもライトノベル的な、中2病的な設定のドラマが始まります。
ただし、主人公の浄(きよし)は、現代ライトノベルの典型的な主人公とは異なり、強引でわがままですぐ拗ね、相手を思いやりもしない、言ってみれば「チンピラ」的なキャラクターです。
そのため、あまりラノベ臭さは感じられず、むしろ一昔前のジュブナイルチックな作品です。
これには浄を演じる俳優の岡田義徳さんの影響もあろうかと思います。
岡田義徳さんブレイク前夜
ご存知のとおり岡田義徳さんは、本作品の約年後にTVドラマ「木更津キャッツアイ」でブレイクして以降、多くの作品に出演されることになる若手人気俳優さんですが、こういう男っぽい俳優さんが演じていることによってダメ若者感が生々しくなっていると感じます。
それにしても1993年は岡田さんがデビューした直後のハズ。
この岡田義徳さんの主役抜擢も青春アドベンチャースタッフの先物買いの目の確かさを証明する一事例だと思います。
アニメ声優も
この岡田さんの主役抜擢と対照的に感じられるのが、準主役的な位置づけの三乗院初法(の幽霊)を専業声優として有名な関俊彦さんが演じていることです。
初法は霊体なので敢えてアニメ畑の方をキャスティングしているのだと思います。
なかなか芸が細かい配役ですね。
ちなみに、関俊彦さんといえば、やはりご出演されている「イーシャの舟」も天野邪鬼伝説に関係する作品です。
偶然だと思いますが。
その他の出演者、特に名古屋章さん
また、声優系といえば医師の役で、塩沢兼人さんも出演されており、この役、最初は温和な性格の役と思いきや、最後は塩沢さんらしいキレ芸も見ることができ、納得の配役です。
他にも90年代前半の青春アドベンチャーを代表する女性出演者・前田悠衣さん(本作品あたりが最後に近い出演になるのかな?)や80年代に活躍された女性アニメ声優・深雪さなえさん、そして80年代までのNHKのラジオドラマでの名バイプレイヤーだった東京放送劇団出身の関根信昭さんの声が聞けるのも魅力です。
でも、やはり本作品で忘れてならないのは名古屋章さんの「語り」。
名古屋さんといえば、90年代くらいまでのTVドラマや特撮にやたらと出ていた印象があり、一時代を気づいた忘れられないバイプレイヤーですが、ナレーションも味がありますよね。
気になる部分はあるけど
本作品、主人公・浄の思慮の浅さ、不良っぷりの生々しさにイライラさせられる面も強いですし、見捨てられた邪鬼の心情をもう少し丁寧に描くと随分と印象が変わったのではないかという気もします。
しかし、エンターテイメント作品としては、スピード感といい、ストーリー展開といい、終盤の邪鬼のちょっと寒気のする演技(演:深雪さなえさん)といい、まずまずの出来だと思います。
主人公の性格が気になるのも岡田さんの熱演あってだと思いますし、その他の方も含めて聞きごたえのある声がそろった作品だと思います。
珍しいCD化作品
なお、本作品は青春アドベンチャーでは極めて例外的なのですが、徳間ジャパンコミュニケーションズからCDとして発売がされています。
原作がメディアワークスで、CDが徳間というが非常に微妙な感じです。
なお、CD版「邪鬼が来る!」(これには「!」が付いているようです)の各回には以下のサブタイトルが付いているようです。
CD1-1.千年の逆恨み
CD1-2.邪鬼が宿った!
CD1-3.不浄より生まれしモノ
CD1-4.癒せぬ思い
CD1-5.見捨てられた邪鬼
CD2-1.復讐の始まり
CD2-2.生死の狭間
CD2-3.蔓延するEVI
CD2-4.一路、雨野路村へ
CD2-5.母の遺言
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