ジャンヌ 原作:安彦良和(ダミーヘッド・アドベンチャー・スペシャル)

格付:A
  • 作品 : ジャンヌ
  • 番組 : ダミーヘッド・アドベンチャー・スペシャル
  • 格付 : A
  • 分類 : 歴史時代(海外)
  • 初出 : 1996年1月1日
  • 回数 : 全1回(100分)
  • 原作 : 安彦良和(原著:大谷暢順)
  • 脚色 : 香取真理
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 幸和希

ジャンヌ・ダルクがルーアンで火刑に処せられてから9年後の1440年。
未だ戦乱の最中にあるフランスはボードリクールの城代のもとに、国王から参陣の命令が届く。
これを聞いた城代の養子エミールは、城代に代わり自分が国王の下に赴くことを直訴する。
実はエミールはさる貴族の落胤であり、親族間の争いを避けるために男性として養子に出されていた少女であった。
そのいきさつからか、エミールは男装で闘ったジャンル・ダルクに強いあこがれを持っていたのだ。
そして、国王の下に赴く途中、エミールはジャンヌの幻想に出会うのだが…



本作品「ジャンヌ」は、漫画家、イラストレーターそしてアニメーターとして有名な安彦良和さん原作の漫画をラジオドラマ化した作品です。
1996年の正月元旦に、1部・2部に分けて合計100分強で放送されました。

アニメーターとしては第1人者

現在でこそ、「アリオン」、「王道の狗」、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」などで漫画家として有名な安彦さんですが、もともとは「宇宙戦艦ヤマト」と「機動戦士ガンダム」の両SFに参加した著名なアニメーターさんでした。
特に「機動戦士ガンダム」ではキャラクターデザインと作画監督として作品を支えた主要スタッフでした。
個人的には「クラッシャージョウ」の挿絵が印象的です(「クラッシャージョウ」映画化の際には監督を務められました)。

漫画家としても著名

「アリオン」で初めて漫画を描かれた際には、当時としては珍しいスクリーントーンを使わないその独特のタッチに魅了されたものです。
個人的には、登場人物が叫ぶときなどに活字を使わず手書きで文字を書くのが安彦さんの特徴として強く印象に残っています。
また、安彦さんは情けない男を、本当に情けなさそうに表現されるのもとても印象的でした。
何はともあれ、本作品の原作漫画「ジャンヌ」も、安彦さんならではの流麗なタッチで描かれた作品であり、幻想的なストーリー展開と相まって独特な作品世界の漫画でした。

割り切りも必要

それに対して、本ラジオドラマはストーリーについてかなり単純化と明確化がなされた作品です。
というのも、原作全般に漂う幻想的な雰囲気には、全編カラーで描かれた安彦さん独特の彩色表現が大きく貢献しています。
絵のないラジオドラマではどうしてもこれは表現できないでしょうし、いっそのこと割り切って、単純でまっとうな政治劇兼冒険ものにしてしまったのは、ある種の割り切りとして勇気のある決断だったと思います。

途中までなのは残念

もうひとつ原作との関係で言及しておかなくてはならないのは、本ラジオドラマが原作の途中まで(全3巻のうちの2巻相当まで)のラジオドラマ化であること。
それもそのはずで、本ラジオドラマ放送時にはまだ最終第3巻は発売されていませんでした。
ストーリー的には完全に尻切れトンボで終わってしまっており、続編ラジオドラマも制作されなかったのはとても残念です。

宝塚出身の女優

さて、本作品の出演者を紹介しますと、まず主役のエミールを演じるのは幸和希(こう・かずき)さんです。
また、現実の存在ではないながら、エミールに次ぐ重要な役どころであるジャンヌを演じたのが森奈みはるさん。
青春アドベンチャーでいうと、幸さんは「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」や「嘘じゃないんだ」、森奈さんは「ランドオーヴァーシリーズ」などに出演されています。
ナレーションの春風ひとみさんと併せて、川口泰典さん演出作品の常連だった宝塚出身の女優さんです。

川口泰典演出作品らしい出演陣

川口さん演出作品ではどんなジャンルでもやたらと宝塚出身の女優さんが出演されていたのですが、本作品は宝塚女優さんによくあった作品だったと思います。
その他、ボードリクールとルネ・ダンジューを演じた山西惇さん、ベルトランとリシュモンを演じた吉田鋼太郎さん、ピエールとグラリエールを演じた舵一星さん、ガルソンとシャルル国王を演じた佐戸井けん太さん、王太子ルイとジル・ド・レを演じた武岡淳一さんなど、如何にも川口泰典さん演出作品らしい出演者陣です。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。

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