- 作品 : 蒲生邸事件
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : A+
- 分類 : タイムトラベル
- 初出 : 1999年2月15日~2月26日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 宮部みゆき
- 脚色 : 関澄一輝
- 演出 : 佐々木正之
- 主演 : 林泰文
浪人が決まった尾崎孝史は、予備校を受験するために訪れた東京のホテルで、古い洋館と男性が写っている写真が飾られていることに気がつく。
ホテルのフロント係によれば、その洋館はホテルが建設される前にこの地にあった建物であり、男性はその洋館の持ち主であった蒲生陸軍大将であるという。
そして、今でもこのホテルには蒲生大将の幽霊が出るとのことであった。
不安を感じながらもこのホテルに泊まった孝史だが、その夜、ホテルで火災が発生する。
孝史は平井という不気味な男に助けられ火災現場から脱出することに成功したが、気がつくと平井と自分が、すでになくなってるはずの蒲生邸にいることに気がつく。
そう、「ニ・二六事件」の起こった昭和11年2月の東京へとタイムトラベルしてしまったのだ。
宮部みゆきさんの小説が原作のラジオドラマです。
SF+ミステリー+歴史要素
冒頭の紹介文のとおり、本作は時間旅行という小道具を使ったSF作品です(原作は日本SF大賞を受賞しています。)。
しかし同時に、蒲生大将の自殺をめぐる推理作品でもあります。
また、二・二六事件という歴史的な事件を味付けに使っており、歴史ものの雰囲気もあるという贅沢な作品です。
作中では、SF要素(時間旅行者の苦悩)、推理要素(蒲生大将の自殺の原因)、歴史的事実(二・二六事件の「兵達に告ぐ。」)などが無理なく組み合わされ、作品のテーマ(ままならない世の中であっても、人として出来る範囲で精一杯堂々と生きよ、という感じでしょうか)に結実しており、さすがに人気作家の原作です。
歴史ものではない
冒頭のホテルの幽霊の話も伏線となっているなど、細かい点もきちんとしており、全体としてよくできた話です。
ただし、物語はあくまで蒲生一家とのその周りの人々に関わるものです。
ニ・ニ六事件は本作品の事件の背景に過ぎず、いわゆる歴史ミステリー・歴史サスペンスを期待すると期待はずれかと思います。
数少ない関澄一輝さん脚本作品
脚色は関澄一輝さん。
青春アドベンチャー系の番組で関澄さんが脚色された作品は、この「蒲生邸事件」以外では、私が知る範囲では「妖精作戦」(アドベンチャーロード)と「6月19日の花嫁」(サウンド夢工房)くらいです。
「6月19日の花嫁」は聴いたことがないのですが、「妖精作戦」はかなり大胆な脚色がなされた作品で、それに比べると本作は大人しい脚色です。
エピローグが長いのはいいよね
とはいえ、第1話が昭和初期に行くまでの話、第9話・第10話は昭和初期と現在のそれぞれの後日談です。
以前にも書いたようにそもそも青春アドベンチャーの標準フォーマットである全10話構成は本格的な小説を取り上げるにはやや短めの枠であることを考えると、これだけの長さをプロローグとエピローグに割くのはやはり思い切った決断だと思います。
その他、最終第10話の初回放送日を2月26日にしたり、冒頭のインタビューシーンをラジオドラマの放送年にシンクロさせたり、何気ないですが、構成自体も凝っています。
白鳥靖代さんの声と話し方
主役の孝史役は林泰文さん、ヒロインの向田ふき役は白島靖代さん。
特に白島さんの声は、決して派手ではないですが、まさに美人の声というものはこういう声なのだろうなあ、と思わせる良い声です。
少しだけ若い頃の山下容莉枝さんを思い出します。
しかも昭和初期の設定ですので、話し方が丁寧で、少しだけ(←ここ重要)古風な言い回しの敬語で話すのが非常に好印象です。
ふき効果
もともと私はフィクション作品に出てくるいわゆる奥ゆかしい女性像があまり好きになれないことが多いのですが、話し方は丁寧な方が良いなあと、最近思うようになってしまいました。
これはひとえに「ピエタ」のエミーリアとこの「蒲生邸事件」の「ふき」のせいです。
この作品の格付けの「+」の部分は「ふき」効果といっても過言ではないでしょう。個人的な嗜好丸出しでスミマセン。
脇役がなぜか豪華
あと、本作品で特筆すべきは脇役を演じた役者さんの豪華さ。
タイムトラベラーの平田次郎役が石立鉄男さん、蒲生家の長男・孝行役は萩原聖人さん、そしてなぜかホテルのフロント係が「せんだみつお」さん。
石立さんは準主役級の役柄で、作品中も大活躍。さすがに上手いです。
萩原聖人さんは青春アドベンチャーでは「エンジェルス・エッグ」(天使の卵)で主演もされており、NHKのテレビにもよく出る役者さんなので、ある意味納得なのですが、謎なのはせんださん。
ちょい役に毛が生えた程度の役に敢えてせんださんを起用したNHKスタッフの意図とは?
これがこの作品の一番の謎なのかも知れません。
なお、宮部みゆきさんの作品では、本作のほかに「今夜は眠れない」と「夢にも思わない」が青春アドベンチャー化されています。
コメント
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自分も最初はなんで「せんだみつお」さんなんだろうと思っていたのですが
実際は洋画吹き替えで活躍している「千田光男」さんだったのではないかと思うようになりました。
読みはどちらも同じですし「せんだみつお」さんだった可能性ももちろんあるのですけど
「千田光男」さんであるほうがしっくりくるんですよね。
とはいえ確定情報という訳ではないのでまちがっていたらごめんなさい。
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SKさま
コメントありがとうございます。
「千田光男」さんですか。
なるほど、想像もしていませんでした。
改めて気になってきたので、NHKクロニクルで検索してみたところ…
何と「せんだ光雄」さんと出てきました!
3人目の「せんだ」さん登場!と驚いたのですが、wikiで確認したところ「せんだ光雄」は「せんだみつお」さんの別名義とのこと。
やはりタレント・コメディアンの「せんだ」さんでよさそうです。
それにしても、このコメントわかりづらいですよねえ。
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返答ありがとうございます。
やっぱり当初の予想通り「せんだみつお」さんでしたか・・・。
こちらとしても長年の疑問が解消された気持ちです。
今後ともレビュー楽しみにしてますね。
そうそう、意外なキャスティングといえば
個人的に歴代の青アドキャスティングで一番謎配役だったのは「ゲノム・ハザード」のセイン・カミュさんです。
中盤の爆発シーンの野次馬として登場しているのですが、外人である必要性も無く、台詞も一言くらいというレベル。
たまたまスタジオ付近を歩いていて「ちょっと野次馬やらないか?」
というノリで誘われて出演したんじゃないかと妄想していますね。
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セイン・カミュさんですか!
全く覚えていません。
本当に謎配役ですねえ。
どなたか事情をご存知の方がいらっしゃたら、ぜひご教示願いたいものです。