河童の記憶 作:東憲司(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 河童の記憶
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 幻想(日本/シリアス)
  • 初出 : 2019年4月1日~4月12日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 東憲司
  • 音楽 : 澁江夏奈
  • 演出 : 小見山佳典
  • 主演 : 吉井乃歌

倉野香苗が河童に出会ったのは小学6年の夏休み。
父の故郷である山間の小さな田舎町に引っ越してきてすぐのことだ。
河童の名前はサーチャ。
サーチャは正確には河童ではなく、人間の子供の魂を基に作られた「河童もどき」。
サーチャがいうには、河童世界の奴隷である「河童もどき」は河童の中では最下層の存在だが、位の高い河童ともなると時を遡る神通力が使えるらしい。
実は香苗は昔から河童に会いたいと思ってきた。
河童の力で過去を遡り、香苗のために鉄道事故で帰らぬ人となった父を救いに行きたいと思い続けてきたのだ。


本ラジオドラマ「河童の記憶」は、劇団桟敷童子(さじきどうじ)代表の東憲司(ひがし・けんじ)さん脚本によるオリジナルラジオドラマです。
ちなみに今回の「河童の記憶」の出演者のうち大手忍さんと原口健太郎さんが桟敷童子の劇団員です。

河童といえば九州らしい

さて、東さんはNHK-FMのラジオドラマに関しては、FMシアターで近藤正臣さん主演の「タッグ」(2016年)や小松正夫さんが出演した「みちのり」(2017年)の脚本を書かれていますが、青春アドベンチャーでは初脚本(2020年に本作以上にダークな作風の「隠しの国」の脚本も提供しています)。
もともと福岡県出身の方で、「自らの生まれ育った炭鉱町や山間の集落をモチーフにした作品」を作られる方らしいのですが、本作品もまさに河童伝説が多く残る九州の山間の町を舞台にした作品です。
作中でも触れられていますが九州には河童伝説が多く、中でも九千坊(きゅうせんぼう)という河童の元締めは九千匹の河童を束ねていたとされているとか。
そういう意味でも本作品は九州のご当地ものではあります。
ただ、主人公の香苗も準主人公のサーチャも福岡弁を話さないのであまり福岡色は強くなく、特に舞台を意識しなくても楽しめる作品です。

ほのぼの系?

さて、本作品、小学6年生の女の子・香苗が主人公で、かつ河童という一般的にはユーモラスなイメージで知られる怪物が登場する作品。
しかもエンタメ枠である「青春アドベンチャー」枠での放送。
さらに河童のサーチャ(なぜか東欧っぽい名前)を演じる大手忍さんの声がかなりかわいい系ということもあり、聞き始めた当初は「ほのぼのファンタジー」なのかと思ったのですが、そうではありません。

意外とシリアス

主人公の女の子は父を亡くしていますし、引っ越し先で待っていた祖母もかなり冷たい感じ。
途中、産業廃棄物の不法投棄の問題が取り上げられますし、そもそもサーチャ自身も人間の少女の魂を基に作られたというちょっと不気味な設定。
香苗がサーチャとともに時空を超えた冒険(タイムトラベルものでもある)をするわけですが、同じオリジナル脚本ものだった「ニコイナ食堂」のような爽快感のある展開ではありません。
リアルとバーチャルの割合、言い換えると現実からの遊離具合が極めて舞台演劇的です。
「河童は人間とはあべこべ」という設定もあまり意外性がありませんし、河童の大王ガラッパタイガの特徴もさほど目を引くものではない。
結構な重要キャラクターであるダッタラさんがなぜ香苗たちにあれほど協力的なのかがよくわからないなど、ストーリー的に???な部分もありました。
総じて、私が青春アドベンチャー枠に「アドベンチャー」を求めすぎなのかもしれませんが、正直なところ「ちょっと地味すぎない?」というのが正直な感想です。

仕掛けや結末は好印象

ただ、この辺は多分に趣味の問題なので、このようなファンタジーが好きな方にはおのずと違う見解もあると思います。
また、第2週の過去編では、ある人物とある人物が同一人物であることがわかるなどタイムトラベルものらしい仕掛けもありましたし、単純なハッピーエンドとは言えない苦みのある結末も好ましく思いました。

吉井乃歌さん主演

さて、本作品の主役である倉野香苗を演じるのはオスカープロモーション所属の女優の吉井乃歌(よしい・ののか)さん(16歳)。
子役の頃から「レ・ミゼラブル」などの舞台に出演経験がある立派な女優さんで、本作品でも達者な演技なのですが、本作品の香苗が(それなりに過酷な境遇のはずなのですが)あまり鬱屈したところがないキャラクターであることもあり、落ち着きすぎていて、気を抜くと高校生くらいに聞こえてしまうのは良いのか悪いのか微妙に感じました。



コメント

タイトルとURLをコピーしました