- 作品 : さいごの毛布
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 日常
- 初出 : 2014年10月27日~11月7日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 近藤史恵
- 脚色 : 芳﨑洋子
- 演出 : 江澤俊彦
- 主演 : 徳永えり
人付き合いが下手で新卒での就職に失敗した智美(ともみ)は、友人の紹介で老犬ホーム「ブランケット」で働くことになった。
ブランケットは、何らかの事情で犬が飼えなくなった飼い主から犬を有料で預かる施設であり、オーナーである“大阪のおばさん” 麻耶子(まやこ)と、元看護師の碧(みどり)が運営していた。
預けられている犬は老犬に限らず若い犬もおり、飼い主も含めてそれぞれ様々な事情がある。
そして、働いている麻耶子や碧、そして通ってくる便利屋の灰原も、それぞれ何か事情を抱えている様子なのだった。
近藤史恵さん原作の「老犬ホーム」で働く女性を主人公とした同名の小説「さいごの毛布」を原作としたラジオドラマです。
ただし、「老犬ホームで働く」といっても、主人公達が老犬ホームのスタッフとしてプロフェッショナルな技能を追求していく物語ではなく、主人公・智美の自分探しがストーリーの中心です。
そのため、本ブログでのジャンルは「職業」ではなく「日常」としました。
アドベンチャー?
以上の紹介から分かるとおり、本作品は、一応「青春」ではありますが、ほとんど「アドベンチャー」とは言いがたい題材であり、どちらかといえば、NHK-FMのもうひとつのラジオドラマ番組であるFMシアター向きの作品です。
まあ、たまにはこういう作品もアリだとは思います。
なお、近藤史恵さん原作の作品が青春アドベンチャーで取り上げられたのは本作品が初めてですが、その後の2016年1月に2作品目の「昨日の海は」は取り上げられました。
こちらは「さいごの毛布」よりはミステリー色が強い作品です。
意外とウェットではない
さて、テレビ業界では、子どもと動物を出せば視聴率が取れるものなのだそうですが、本作品も舞台が「老犬」ホーム、タイトルが「さいごの」毛布、となると、これはもう視聴者受けを狙った、涙なしでは語れない展開が予想されます。
しかし、実際に聴いてみると、もちろん身勝手な飼い主、老犬ホームの経営の苦しさ、老犬の末路と言った悲劇的な要素は避けられないものの、意外とウェットな展開ではありません。
あくまで主人公は人間であり、ホームに住む犬は言い切ってしまえば、舞台設定の一部に過ぎないのです。
麻耶子のバランス
また、本作品がウェットになり過ぎず、適度なバランスを保つ作品となった大きな要素のひとつとして、オーナーである麻耶子の存在が挙げられると思います。
麻耶子は、犬たちに愛情を持ちつつ経営者として割り切った考えをすることもできますし、男女の間の問題についてもかなり公平にみることができます。
ただ、そんな麻耶子も、自分の子供への愛情と犬への愛情のバランスはかなり歪です。
なお、本作品は終盤に起こるちょっとした事件以外はさしたるハプニングもありません。
ここまで大人しい作品だと、個人的にはやはりこれが青春アドベンチャーに相応しい作品かは微妙に感じてしまいました。
良くも悪くも「NHKらしいラジオドラマ」というのが正直な印象です。
モデル出身と侮るなかれ
さて、出演者はメインとなる3人を徳永えりさん(智美役)、田岡美也子さん(麻耶子役)、松永玲子さん(碧役)が演じています。
主役を演じている徳永えりさんは、雑誌ピチモデルでローティーン向けの専属モデルとしてデビューし、現在は女優をされている方です。
モデル出身と侮るなかれ、映画「フラガール」、朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、そして毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞と日本映画批評家大賞新人女優賞受賞を受賞した映画「春との旅」では仲代達矢さん(青春アドベンチャーで仲代さんといえば「夢源氏剣祭文」)と共演と、なかなかの経歴です。
NHK-FMのラジオドラマではFMシアター枠で「南国土佐を後にして」や「四季を知る」など多くの作品に出演されています。
佐藤蛾次郎さんが…
その他の配役としては、”焼き芋屋のおじさん”という謎の端役で佐藤蛾次郎さんが出ていたりします。
「世界でたったひとりの子」のベンガルさん、「ハッピーバースデー」の長門裕之さん、「あでやかな落日」の綿引勝彦さん、「光」の若林豪さん、「少年H」の名古屋章さん、「バッテリー」の八名信夫さんなど、渋い中高年の有名俳優を、なぜか主役でもない役で配役することがあるのが青春アドベンチャーの面白いところです。
NHKのドラマぽさ
脚本の芳﨑洋子さんは青春アドベンチャーの長編は「魔術師」に続いて2作品目の担当作品。
多分同一人物と思われる「芳崎」洋子名義では「アクア・ライフ」、「ボディ・ライフ」、「ナンバー・ライフ」に短編を書き下ろされています。
他の作品ではあまり感じませんでしたが、本作品では状況説明のナレーションがやや多いように感じました。
個人的にはナレーションを多用せず、効果音等を効果的に使ったスピーディーな作品が好みです。
この作品はアクション要素がほとんどない作品なので、ナレーションの多用も仕方がないところかも知れませんが、これがまた「NHKの普通のラジオドラマ」感を強めてしまっている気もします。
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