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2021年の青春アドベンチャーでオリジナル脚本作品が続く現状をどう考えればよいのだろうか。

NHK-FMの帯ドラマ番組「青春アドベンチャー」は、直接辿っただけでも1984年スタートの「FMアドベンチャー」まで遡ることができ、さらにNHK-R1(ラジオ第一)で放送されていた「連続ラジオ小説」もその前身と言えます。
そして、これらの番組が一貫して続けてきた特徴がひとつあります。
それは基本的に原作のあるエンターテイメント作品を提供してきたということ。
これはもうひとつのNHK-FMの代表的なラジオドラマ枠である「FMシアター」との大きな違いでもあります。
詳細にみると以前から確かに一部、オリジナル脚本の作品もありましたし、近年その割合が高まる傾向にもありました。

2021年、オリジナル脚本作品が急増

しかし、2021年初頭からのラインナップはその伝統を逸脱しつつあるように見えます。
具体的には、

  • 1/4~1/15
    輪廻転Payうた絵巻(オリジナル)
  • 1/18~1/29
    シンクホール(オリジナル)
  • 2/1~2/12
    負け犬たちのミッドナイト・バス(オリジナル)
  • 2/15~2/26
    あなたがいる場所(再)(原作あり)
  • 3/1~3/12
    谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド(オリジナル)
  • 3/15~3/26
    イッツ・ア・ビューティフルワールド(オリジナル)
  • 3/29~4/2
    当面の間、変身します(オリジナル)
  • 4/5~4/16
    アゴラ69 ~僕らの詩(うた)~(オリジナル)
  • 4/19~4/30
    人喰い大熊と火縄銃の少女(再)(オリジナル)

と、現在公表されている9作品のうち、再放送の「あなたがいる場所」以外はすべてオリジナル脚本という状況。
本局以外の作品が多い春先ですので偶然かも知れませんが、偶然にしては多すぎる気もします。

賛否両論あると思いますが

もちろんオリジナル脚本が悪いという訳ではありません。
「元中学生日記」や「屋上デモクラシー」、「バスパニック」のように放送枠に併せてピチッと作ったような作品はオリジナルならではの良さがあると思います。
ただ、正直なところ設定がご都合主義で甘い作品やこじんまりとまとまった作品が多いとも感じます。
またそれと根っこは同じだと思うのですが、脚本家さんの作家性の発露が娯楽性をないがしろにするきらいも無きにしも非ず。
これはあくまで個人的な思いなのですが、私がこの枠に求めているのはあくまでも娯楽作品。
作者に言いたいことがあるのも結構なのですが、その思いを作品に乗せるのはあくまで上質なエンタメ作品として成立させてからにして欲しい。
正直なところオリジナル脚本作品が増加した2015年以降で個人的に満足できたオリジナル脚本作品は「人喰い大熊と火縄銃の少女」、「走れ歌鉄!」、「元中学生日記」、「負け犬たちのミッドナイト・バス」くらい。
これは、と思ったのは「元中学生日記」だけです。

アンケート結果からみるオリジナル脚本の人気

これらの作品はあくまで私のお気に入りであり異論はもちろん認めますが、当ブログで実施している人気アンケートの上位3作品を見ても

  • 2015年
    1. タランの白鳥
    2. スタープレイヤー
    3. アグリーガール
    4. 蜩ノ記(再)
  • 2016年
    1. 逢沢りく
    2. オリガ・モリソヴナの反語法
    3. クラバート
  • 2017年
    1. また、桜の国で
    2. 斜陽の国のルスダン
    3. 風の向うへ駆け抜けろ
  • 2018年
    1. 暁のハルモニア(オリジナル)
    2. リテイク・シックスティーン(再)
    3. 武揚伝
  • 2019年
    1. 元中学生日記(オリジナル)
    2. 紺碧のアルカディア(オリジナル)
    3. 北海タイムス物語
    4. 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組
  • 2020年
    1. ハプスブルクの宝剣
    2. 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組
    3. また、桜の国で(再)

と20作品のうちわずかに3作品のみ。
このうち並木陽さん脚本の2作品(暁のハルモニア、紺碧のアルカディア)については出演されているミュージカルスターのファンによる投票が大きかったことも考慮すべきだと思います(私自身は並木さんについては「ハプスブルクの宝剣」で示された脚色としての腕をより評価しています)。
と、なるとリスナーがオリジナル脚本ばかりの現状を望んでいるかについては疑問を感じずにはおれません。

激増の理由は?

なぜこのような状況になっているのか。
制作陣の方針なのか。
あるいは予算の問題なのか。
はたまたその他の理由があるのか(例えばNHKの放送周波数削減の動きの中で存在意義の再確認を求められているとか。コロナ禍で苦境にある劇作家を支援しようとしているとか。完全な想像ですが)。
何もわかりません。

動向を注視

いうまでもなく、一口にエンタメと言ってもその人にとって何がエンタメになるかは様々だと思います。
個人的にも「シンクホール」の中の「志願と拒絶」のような置いてけぼり感満載の作品も嫌いではないです。
また、オリジナル脚本の増加に伴い「当たり」の確率はあがっているようにも思います。
ただ、このような状況で(脚本家が下げてしまう可能性もあるとはいえ)最低限の質が保証される原作付き作品と同レベルを確保できるのか。

そもそも方針転換があったのかも定かではないなか、このような記事を書くのはどうかと思いました。
ただ、正直心配です。
当面、動向を注視したいと思います。

Hirokazu

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