- 作品 : ワンさんは働き者
- 番組 : FMシアター
- 格付 : B
- 分類 : SF(日本)
- 初出 : 2021年1月16日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 三井隆
- 音楽 : 冬野ユミ
- 演出 : 佐藤譲
- 主演 : 平田満
名古屋でラーメン屋を営む初老の夫婦の元に、日本語の怪しいアルバイト希望の若者が転がり込んできた。
少しでも赤字を減らしたい妻の提案で受け入れることを決めた店主だが、彼のやることはどこかおかしい。
夜中に“太陽系音頭”を大声で歌うわ、大量の放射性廃棄物を一般ゴミに出すわ。
耐えきれなくなった店主は、どこから来たのか彼に問いただすが帰ってきたのは奇妙な音ばかり。
その若者“ワンさん”曰く「私の故郷の名前、地球上で発音すると超音波になってしまう」。
そう彼は宇宙人だったのだ。
本作品「ワンさんは働き者」はNHK-FMのFMシアターで放送されたラジオドラマで、制作したのはNHK名古屋局です。
主演は平田満さん
本作品の主役は初老のラーメン店店主で、それを演じるのは平田満さん。
ご存じのとおり平田満さんと言えば、地味系の名バイプレイヤー。
早稲田大学在学中に知念正文さん(「妖精作戦」に出演されていましたね)主宰の劇団暫(しばらく)に入団して演劇界に身を投じ、初期のつかこうへい作品を支え、後に深作欣二監督の「蒲田行進曲」のヤス役でブレイクした…ことになっていますが、まあブレイクしたと言ってもおじさんです。
水野勝さんも準主演級だが
一応、準主役のワンさんに、男性アイドルグループ「BOYS AND MEN」の水野勝さん(「ほかの誰でもないアヤコ」など)を据えてはいるのですが、ワンさんは狂言回しであり、基本的に本作品は平田満さんと小島範子さんが演じる老夫婦の物語である以上、ストーリーも地味にしかなりようがありません。
宇宙人?が登場するので、一応当ブログでの分類は「SF(日本)」にしましたが、SF的な外連味のある展開は一切ありませんので、その面の期待はしないでください。
ある意味、ラジオドラマらしい?
本作品はSFという小道具を使った人情ものであり、ワンさんは少し極端に戯画化した外国人労働者の暗喩なのだと思います。
それに加え終盤、妻が長い間抱えてきた、ある思いが吐露されるのですが、それもあくまで登場人物たちの内面的な理解と受け入れで終わり、激情の発露などはあまりなし。
あくまで淡々と進むこのような作品は今時、ある意味、ラジオドラマでしか成立しないのかも知れません。
名古屋色強し
さて、上記で述べた3人の出演者には共通点があります。
それは全員愛知県出身であること。
そして音楽の冬野ユミさんも愛知県ご出身です。
また、そして三井隆さんの脚本は名古屋局が実施した「令和元年度名古屋放送局創作ラジオドラマ脚本募集」の佳作受賞作であり、つまりは名古屋局による名古屋局のための名古屋局のドラマ。
というかそれ以前に、独特の怪しい音楽と不思議なストーリーはいかにも名古屋局風というか、佐藤譲さん演出作品らしいというか。一聴しただけで分かります。
他には代えがたい独特の色
個人的に特に好きというわけではないのですが、この個性はなかなか他で代えられません。
実際、本ブログで実施した2021年のFMシアターアンケートでも第4位の7票を得ました。
名古屋局は2021年12月に連続ドラマから制作からの撤退を公表しているのですが、ラジオドラマについては是非独自色での制作を継続していただきたいものです。
三井隆さんの他の脚本作品
ところで、三井隆さんのFMシアターにおける前作は、平成24年度「NHK中四国ラジオドラマ脚本コンクール」で佳作を受賞した「イナナギ」。
「イナナギ」は戦国時代を舞台にした時代活劇だったそうなので、随分と振れ幅がありますよね。
本作品は当ブログで実施した2021年FMシアターアンケートの4位になりました。
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