タイムスリップ川中島 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : タイムスリップ川中島
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2007年1月8日~1月19日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原案 : 鯨統一郎
  • 脚本 : 山本雄史
  • 演出 : 保科義久
  • 主演 : 田村ゆかり

統一執行部の時間捜査官・石松は、1560年の川中島で旧知の女子高生・麓(ふもと)うららの名前を耳にする。
うららは、石松と何度も一緒に時間旅行をした特異な経歴の持ち主だが、基本的には21世紀の一女子高生に過ぎないはずだ。
うららが何か大きな事件に巻き込まれていることを察知した石松は、すぐさま、うららに決して1560年には来ないように警告を発する。
しかし、突如、蛇型の殺人ロボットの襲撃を受けたうららは、さしたる理由もなく、警告を無視してノリと勢いで石松のいる1560年に向かってしまうのだった…



鯨統一郎さん原案(第1作目の「タイムスリップ明治維新」のみ原作)、山本雄史さん脚本のタイムスリップを題材としたラジオドラマの第4弾です。
ちなみに、2007年には本作品「タイムスリップ川中島」のほかに、「僕たちの戦争」もタイムスリップを題材とした作品でした。
また、広くタイムトラベル的という作品まで含めれば「冷凍人間の復活」も仲間に入ります。

第3作

さて、「タイムスリップシリーズ」も実質的に山本さんのオリジナル作品になってもう3作品目です。
そのせいか「川中島」というタイトルの枠を飛びだした、かなり自由な内容の作品になっています。
というのも、本作品はリヒャルト・ワーグナーのオペラ「ニーベルングの指輪」がモチーフになっているのです。
万事、脳天気でテキトーなうららと、重厚なワーグナーのオペラ。
この奇妙奇天烈な組み合わせがこの作品の特徴です。

世界が舞台

さて、本作品はストーリーもかなり複雑で、1560年の川中島に向かったはずのうららが到着するのは何と951年のライン川の中州です(1560という数字を上下逆に入力したという設定)。
日本史上の人物である武田信玄と上杉謙信に出会うはずが、実際に出会ったのは世界史上の人物である“赤毛のエイリーク”。
そのままなぜか10世紀のヨーロッパを旅し始めてしまい、16世紀の日本の川中島へはなかなか到着しません。

なぜか超能力バトル

最終的に川中島に到着しても、いわゆる「川中島の戦い」はほとんど描かれず、第1作から登場する主要キャラクターである剣崎薔薇之介と、本作品の黒幕とのサイキックバトルになってしまいます。
細かい設定を積み上げた緻密な話ではあるのですが、基本的に荒唐無稽な話でもあり、雄大というか大雑把ともいえます。

今回は「風林火山」とタイアップ

ところで本作品も他のタイムスリップシリーズと同じように、その年のNHK大河ドラマとタイアップする舞台が使用されました。
2007年の大河ドラマは、内野聖陽さん主演の「風林火山」だったため、この作品は「川中島」になった訳です。
例によって楽屋オチも健在で、うららが山本勘助、武田信玄、上杉謙信(長尾景虎)をみて、内野聖陽、市川亀治郎、Gacktと見た目が違う、というお約束の台詞もあります。
内野聖陽さんといえば青春アドベンチャーでは1996年の「モンテ・クリスト伯」にご出演されており、青春アドベンチャーと縁がないわけではないのですが、さすがに本作品では別の方が山本勘助を演じられています。

楽屋オチ多し

また、うららが、タイムスリップ森鴎外とか水戸黄門とか叫ぶ台詞もあるのですが、これは青春アドベンチャー化はされていない鯨さんの原作シリーズをネタにした楽屋オチだと思います。
脚本の山本さんは「レインツリーの国」でもタイムスリップシリーズをネタにした楽屋オチをやっています。

メインキャスト

出演者に話を移しますと、本シリーズのレギュラー出演者である、うらら役の田村ゆかりさん、薔薇之介役の織田優成さん、石松役の浜中博史さんは、本作品も引き続いてご出演されています。

磯部勉さん大熱演

そして本作品の黒幕の役を演じるのはベテラン俳優・声優の磯部勉さんです。
番組がアドベンチャーロードと呼ばれていた時代(「さらばアフリカの女王」など)からたくさんのNHK-FMのラジオドラマにご出演されています。
青春アドベンチャー時代でも「マドモアゼル・モーツァルト」や「あでやかな落日」、最近では「魔岩伝説」などにもご出演されています。
突然、超能力対決になってしまって、どことなく胡散臭くなってしまったのも事実ですが、最終回に相応しい磯部さんの大熱演のお陰で楽しい作品になっています。

語りの佐々木睦さんも楽しそう

また、1作目から共通して“語り”を担当しているのは佐々木睦さんなのですが、本作品はかなりリラックスした雰囲気の語りになっています。
語りというよりほとんどツッコミ役。
挙げ句の果てには登場人物達と会話をしたりします。
この辺も、脚本の山本さんがこの登場人物達を操り慣れてきたことを感じます。

真面目なうらら

さて、上でも書きましたが、本作品は終盤にかなり今までと違った展開を迎えます。
正直、第2作・第3作ではあまり好感の持てる少女ではなかったうららも、本作品では川中島の戦いの仲裁に入るなど、かなりまともな行動をとります。
そして、最後には主要登場人物のひとりが死亡してしまい、一応、このシリーズは区切りが付いた形になります。
そして実際、翌年からしばらくはタイムスリップシリーズの新作は放送されませんでした。
山本さんはこうなることをわかっていてこの大げさな脚本を書いたのでしょう。
でも結局、2011年に一度だけ復活するんですけどね。

【タイムスリップシリーズ各作品の記事へのリンク】

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紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
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