Categories: 格付:B

ニューネッシー殺人事件 原作:嵯峨島昭(アドベンチャーロード)

  • 作品 : ニューネッシー殺人事件
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B
  • 分類 : 冒険(山岳海洋)
  • 初出 : 1985年10月7日~10月18日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 嵯峨島昭
  • 脚色 : 瀧沢ふじお
  • 演出 : 花房実
  • 主演 : 水島裕

1977年4月、日本の漁船がニュージーランド沖合で引き揚げた謎の生物の死体は「ニューネッシー」と呼ばれた。
その姿が太古に滅んだ首長竜あるいはその子孫と噂されるネス湖の怪獣に酷似していたからだ。
しかし、時ならぬニューネッシーブームは数日で収束。
ニューネッシーはウバザメの死体が腐乱したものとされてしまった。
わずか数日で、だ。
「わが社の総力を挙げて世紀のスクープに体当たりだ!」と息巻いていた出版社もすぐに別の事件を追い出した。
日本のマスコミのムード一辺倒の報道姿勢はけしからん。
ひとりだけでもニューネッシーを追い続けてやると息巻いたルポライターの本間だが、彼の前に予想もしなかった出来事が次々と起こり始めた。



本作品「ニューネッシー殺人事件」は嵯峨島昭さんの小説「深海恐竜(ニューネッシー)殺人事件」をラジオドラマ化した作品です。
原作本では「深海恐竜」に「ニューネッシー」とルビが振ってあります。
ラジオドラマ内では「ニューネッシー」と発音しているので当記事のタイトルはカタカナ表記としていますが、ラジオドラマとしてカタカナ表記が正しいのか漢字表記が正しいのかは微妙。
NHKクロニクルの昭和時代までの拡充を望むところです。

嵯峨島昭さんの正体を探しましょう

ところで、原作者とされている嵯峨島昭さんですが、ご存じの方も多いかと思いますが、実は官能小説で有名な宇能鴻一郎さんが、推理小説を書くときに使っていた別ペンネームです。
「嵯峨島昭」は音読みすると「さがしましょう(=探しましょう)」となり、暗に覆面作家であることを暗示していたのだそうです。気が利いていますね。
ちなみに宇野さんはもともと芥川賞作家!でもあり、ついでにこの記事を書いた2022年現在もご存命とのこと。
ある意味、化け物ですね。

まさに大衆小説

さて、通俗作家中の通俗作家でもある嵯峨島さんの作品ですので、本作品もキオスクで売っている新幹線移動の時間を潰すためのおやじ向けの文庫小説のようなコテコテの内容。
キワモノの極み「ニューネッシー」に、本格推理を想起させる「殺人事件」を組み合わせたタイトルからしてすでにぶっ飛んでいますが、中身も強烈。
同じ「南洋の楽園+首長竜」というプロットの直木賞受賞作「遠い海から来たCOO」などと比べても如何にも昭和な内容なのです。
具体的には、謎の深海生物、株価操作、世論操作、不審死、総会屋による拉致と油ギッシュな要素がてんこ盛りで、様相は推理小説風からサスペンス小説風へと展開していきます。

中盤で急展開

…と思ったら第4回でさらにびっくりの急展開、蜂須賀伯爵を主人公とする物語がスタートします。
これはどちらかというとこの作品やこの作品(←完全にネタバレなの読了又は聴取前にクリックしないことをお勧めします)的な内容。
というか蜂須賀「伯爵」という時点で完全に狙っていますよね。

2人の主人公

かといって、本間が主人公から「語り」的な位置付けに移行するか(同じアドベンチャーロード時代の作品で同じ要素がでてくる「幽霊海戦」のパターン)と思いきやさにあらず。
本間と蜂須賀の物語は交わりながらも、それぞれが継続していきます。
結局、○○ものだったのか、サスペンスだったのか、海洋冒険ものだったのかよくわからないのですが、まあ全てということなのでしょう。
この多様さを面白いと感じるか、わかりづらいと感じるかでこの作品の評価は変わるのだと思います。

元祖アイドル声優

さて、出演者の紹介に移ります。
本作品の主役のルポライター・本間逸男を演じたのは声優の水島裕さん。
レコードデビューしたり、NHKのクイズ番組「連想ゲーム」のレギュラー解答者になるなど、1980年代の男性アイドル声優の草分けのともいうべき方で、香港俳優のサモ・ハン・キンポーの吹き替えでも有名でした。
ちなみに同じ声優の佐久間レイさん(沈黙とオルゴール、見習い魔女にご用心)とは元夫婦の間柄です。

声優+俳優

本作品では吉田理保子さん(「アルプスの少女ハイジ」のクララ、「魔女っ子メグちゃん」の神崎メグなど)やNHK-FMが重用していた塩沢兼人さんもアニメ畑の方でした。
これらの方々と、「大江戸捜査網」の井坂十蔵役が有名な瑳川哲朗さんが共演されているのがこの作品のキャストの面白いところです。



Hirokazu

オーディオドラマの世界へようこそ!

Recent Posts

もと天使松永 作:樋口ミユ(FMシアター)

都会の雑踏の中、生ギター一本で…

3週間 ago

レオナルド・ダ・ヴィンチの恋人 作:竹山洋(FMシアター)

なんて馬鹿なんだろう。軽蔑だわ…

4週間 ago

逆光のシチリア 作:並木陽(青春アドベンチャー)

1859年。貧しい身分から身を…

1か月 ago

バスタイム 作:中澤香織(FMシアター)

中学の頃、好きなものの話が長く…

1か月 ago

近未来物語 原作:筒井康隆(ふたりの部屋)

本作品「近未来物語」は筒井康隆…

2か月 ago