電気女護島~エレクトリック・レディランド 作:藤本有紀(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 電気女護島~エレクトリック・レディランド
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : SF(その他)
  • 初出 : 1998年2月16日~2月27日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 藤本有紀
  • 音楽 : 鶴澤清治
  • 演出 : 大山浩史
  • 主演 : 今井雅之

オゾン層の破壊や酸性雨、度重なる原発事故によって、息をするだけで寿命が縮まるほど大気も大地も汚染されてしまっている、21世紀末の大阪。
人々は地下に移住して暮らしていたが、地下の管理された暮らしを厭い、自由を求めて敢えて地上(この時代の言葉でいうところの「外地」)で暮らすアウトローたちもいた。
主人公のヨージもそんなひとり。
ある日、ヨージは、地上の“大なにわ大学”で、植草教授の葬式が行われているのを目撃する。
その葬式に出席している女性とお近づきになるために葬式に乱入するヨージだが、植草教授が大阪湾に浮かぶ人口島で研究していたというアンドロイドをめぐる事件に巻き込まれてしまう。
人口島 ―エレクトリック・レディランド― でヨージを待ち受けているものは何なのか。


脚本家の藤本有紀さんによるオリジナル脚本のラジオドラマです。
藤本さんは連続テレビ小説「ちりとてちん」(2007年)や大河ドラマ「平清盛」(2012年)の脚本を書かれた方ですが、本作品は藤本さんがTVドラマの脚本を書かれるようになる前の、いわば駆け出しの時期の作品です。

女護島?

それにしても、この作品のタイトルである「電気女護島」(でんきにょごのしま)、何とも奇怪なタイトルだなあ、と勝手に思っていました。
しかし、1719年に初演された近松門左衛門作の人形浄瑠璃に「平家女護島」(へいけにょごのしま)というものがあるのですね。
本作品はBGMに三味線奏者の鶴澤清治さん(のちの2007年に人間国宝)を起用し、全編が三味線の音色に彩られた作品ですので、このタイトルが「平家女護島」を意識しているのは明らかでしょう。
我ながら、ものを知らないと言うことは恥ずかしいものです。

独特のテイストの怪作

さて、本作品は「プリンセス・トヨトミ」や「屋上デモクラシー」と同様に、NHK大阪局の制作で、全編が大阪弁で展開される作品です。
本作品が制作された1998年にはもう1作大阪局が制作した「少年漂流伝」という怪作があるのですが、本作品もそれに勝るとも劣らない独特なテイストの作品です。

近未来の大阪はロックで三味線だった

具体的に、近未来の荒廃した大阪(2013年のFMシアター「ニューワールド」をちょっと思わせる設定ですね)が舞台で、三味線やロックがBGMとして飛び交う、他の作品にないロックでアンニュイな独特の雰囲気がある作品です。
といっても、真面目一方の作品ではなく、まさに大阪人というイメージどおりの調子のよい若者が主人公で、基本的には軽快で陽性の作品なのです。ですが…

笑いのツボがわからない

正直言って、私はどうにもこの笑いのセンスがよく分かりませんでした。
漫才のようにポンポンと台詞が飛び交うのですが、どこで笑って良いのか…
ちゃんと笑えたのは、第8回の笑点のくだりだけでした。
また、笑い以外の部分についても、欲望丸出しの主人公ヨージに共感を持てませんし、特に前半の展開が冗長なので何度も爆睡しかけてしまいました。
「これは久しぶりの格付け“C”でも良い」かな、とも思いました。

オリジナルならでは

ところが、後半をちゃんと聴いてみると、酸性雨や人口島、タブレット(錠剤)などの小道具が伏線としてちゃんと回収され、SF的な謎解きがキチンとされています。
また、ヨージの敵にして相棒でもあるジョーの最後の決断を含めた、物語の結末も好感が持てます。
前半は何が言いたいのかさっぱりわからない作品でしたが、終盤になるとヨージがしきりに口にしていた「死ぬ気で生きる」とか「与え合って奪い合って愛し合おう」というテーマにうまく収斂しています。
正直言って、説明が難しい、ハチャメチャな作品ですが、さすがオリジナル脚本、全10回のラジオドラマとして上手く着地していると感じました。

今井雅之さん主演

主人公のヨージ役は俳優・演出家の今井雅之さん。
レッドレイン」にも出演されていましたね。
ヨージを追うジョー役は「蜩ノ記」(2012年放送)も印象深い小市慢太郎さん。
主に後半にしか出番のないヒロインのマリ役は女優の西村頼子さんです。
ちなみに作の藤本さんと演出の大山さんはともに青春アドベンチャーでは恐らくこの1作品しか担当されていないと思います(短編集はわかりませんが)。
色々とよくわからない作品です。



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