クリスマスの幽霊 原作:ロバート・ウェストール(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : クリスマスの幽霊
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 幻想(海外)
  • 初出 : 2017年12月19日~月23日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : ロバート・ウェストール
  • 脚色 : 福田卓郎
  • 音楽 : 坂東邑真
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 櫻井優輝

物語の舞台は1930年代、イギリス北部の片田舎。
街の経済を支えているのはユダヤ人オットーが作った巨大な化学工場、そして少年の父はその工場で働く職長だった。
少年にとって、工場は大人たちだけが入ることを許される謎の世界。
だから、父は「魔法の王国にいる油まみれの魔法使い」だし、オットーは「死後も工場の中を彷徨う伝説の怪物」だった。
ある年のクリスマス。
少年は、父のために工場へ忘れ物を届けに行くことになった。
それは単なるお使いではない。
少年にとってワクワクドキドキの冒険の始まりだった。



本作品「クリスマスの幽霊」の原作者ロバート・ウェストールはイギリスの作家で、主に児童文学作品で有名な方です。
生没年は1929年~1993年で、生誕地はイングランド北部のノースシールズですので、本作品はウェストールの幼年期をほぼそのまま背景としている作品です。

過酷な労働環境

作中でも述べられていますが、当時は世界大恐慌(1929年)後の不況期です。
また、現代ほど労働衛生環境が整っていなかった時代の「化学工場」が舞台であり、時代の影を背負った作品という側面もあります。
また、「不況期」や「深夜勤務が続く過酷な労働環境」という点からいうと、このラジオドラマ版のスタッフが現代日本の世相にイメージを重ねた側面もあるのかもしれません。

アイロニカルな表現

という訳で、子供向きというにはいささか重い雰囲気の作品ですが、これはどうもウェストール作品に共通の特徴のようです。
青春アドベンチャーではすでに2003年に同じ真銅健嗣さんがウェストールの「海辺の王国」(子役時代の内山昂輝さん主演!)をラジオドラマ化していますが、こちらも戦時下という暗い状況を舞台とした作品でした。
本作品でも「家は暖かく気持ちいい罠だ」、「神さまはちいさなことなら時々何とかしてくれるけど、大きなことについては結局何もしてくれない」、「例え世の中を良くするような奇跡があるとしても、小さい子供がそこで役に立つなんてことは絶対にありえないんだ」といった皮肉な、あるいは作品自体を否定するような表現が随所に出てきます。

考え過ぎるのも考えもの

そのほかにも「キーキャラクターであるオットーがユダヤ人であることの意味」(「クリスマス・キャロル」へのアンチテーゼ?)、「この物語がクリスマスを舞台とすることの意味」(単にクリスマスの起源であるユール(=冬至祭)が霊が集まる日であることが西欧人の常識であるから?)などなど暗喩的な内容を考察しようと思えばいくらでもできるのでしょうが、正直言って、個人的に児童文学作品でそこまでしたいとは思いません。
児童文学にテーマ性(=教訓?)が必要なのはわかりますが、それは物語の中で自然ににじみ出てくるべきもので、声高に「自分は社会派です!」と叫ぶ類のものではないと私は思います。
テーマ性が滲み出すという面では本作品の次に(再)放送された「びりっかすの神さま」くらいで十分です。

色々と気になるけど

また、少ない放送時間の中で、ルブラン法(18世紀末にフランスの科学者二コラ・ルブランが考案した炭酸ナトリウムの製造法)とかソルベー法(1861年にベルギーの科学者エルネスト・ソルベーが考案した炭酸ナトリウムの製造法)を詳細に説明することも必要だったのでしょうか。
ストーリーを的確に伝えるという点では「マントのついたオーバーを着て、悪魔のような顔をしながら、昼も夜も工場の中を歩きまわっているオットー」のイメージをちゃんと伝えるために時間を割く方がずっと重要な気がします。
私だけかもしれませんが、色々と気になりだすと、物語に集中できませんでした。

坂東邑真さんの音楽が素敵

という訳で何となく重苦しい本作品ですが、その雰囲気を和らげているのはなんといっても青春アドベンチャー初登場の坂東邑真(ばんどう・ゆま)さんの音楽。
専門的なことは何もわかりませんが、音楽だけで一気にクリスマスの雰囲気になっています。
2018年に放送予定の「毒見師イレーナ」でも音楽担当予定ですので、楽しみです。

少年はウェストール自身?

出演者は、主人公の「少年」を演じるのは劇団ひまわり所属の櫻井優輝さん。
NHKらしく女性声優ではなく本物の子供(子役さん)を起用しています。
この役、「少年」だけで固有名詞がないのですが、これは読者(リスナー)にこの役に自分と同一視してほしいと思ってのことだと考えたのですが、ウェストールとしては、この「少年」を自分自身として書いたのかもしれませんね。
なお、同じウェストールの「海辺の王国」で主演された内山昂輝さんはその後、声優として有名になりました。
櫻井さんがどのようになるか今後が楽しみですね。

阪脩さんの語りは雰囲気十分

また、「語り」を担当している阪脩(さか・おさむ)さんも注目。
阪さんの語りといえば「ザ・ワンダーボーイ」。
「ザ・ワンダーボーイ」の語りは、ある意味「役」でもあった訳ですが、本作品の「語り」もある意味「役」でもあります。
阪さんは30年以上前の「101便着艦せよ」(1984年放送)でも老齢の副大統領を演じていた訳で、その芸歴の長さは驚異的ですが、さすがに声に時間の経過を感じます。
でも懐かしくてイイ感じです。

その他の出演者

そのほか、父ジャック(こちらにはちゃんと名前がある)を横堀悦夫さん(「碧眼の反逆児 天草四郎」主演)が、母親役を最近の青春アドベンチャーで多くの作品に出演されている都築香弥子さんが演じていらっしゃいます。


【パクス・ブリタニカの時代を舞台にした作品】
大英帝国の最盛期である19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台にした作品を整理しました。
ヴィクトリア朝から第1次世界大戦の勃発するジョージ5世時代まで。
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