- 作品 : 気分はだぼだぼソース-日本の異様な結婚式について
- 番組 : ふたりの部屋
- 格付 : B+
- 分類 : エッセイ
- 初出 : 1982年5月17日~5月28日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 椎名誠
- 脚色 : 津川泉
- 演出 : 大沼悠哉
- 主演 : 伊武雅刀
昭和の時代、エッセイスト・小説家として著名だった椎名誠さんのエッセイを原作とする作品で、「ふたりの部屋」では「さらば国分寺書店のオババ、かつをぶしの時代なのだ」に次ぐ第2弾になります。
姉妹作品
主演が伊武雅刀さんで、これに佐々木允さんともう一人女優さんの加わり3人で多数の役の演じ分けるスタイルは「さらば国分寺書店のオババ~」と同じ。
放送された時期も近く、実質的にセットの作品と言ってもよいと思います。
大げささも魅力だが
本作品は、当時の日本の結婚式の様々な様式を、椎名さんが微に入り細を穿ち分析し、時にはユーモアを交え、時には怒りをあらわにしながら、ばっさばっさと切っていくエッセイ調の作品です。
主演が伊武雅刀さんであることもあり、大げさで素っ頓狂な表現が満載ですが、そのズレている感じもまた本作品の魅力。
…といいたいところですが、放送から約40年を経過して今聞いてみると本当にズレてしまっているのが少々残念。
例えば第8回でお色直しを取りあげた際には「お色直しの回数はもっと増えていくに違いない」と言っているのですが、現実はバブルの崩壊とともに地味婚ブーム。
そして今は結婚式、あるいは結婚の形はずっと多様になりました。
当事者にとっては宝もの
世の中に異を唱えるスタイルのエッセイを得意とした(というかエッセイとはそもそもそういうもの)椎名さん自身がバブル経済下の常識的パターナリズムに囚われていたと思うとなかなか感慨深いものがあります。
ただこれはそもそも「時代に沿う」タイプの作家の宿命であり、こういった作家に同時代に出会い感動することができた人間にとって、「今となっては」などという感想自体が無意味。時代を共有出来たこと自体が宝物なのだと思います。
各回の概要
さて、本作品の各回のタイトル、取りあげられている様式、そして個人的な一言感想は以下のとおりです。
◆第1回 「傲慢なる幕開け」
一言 : 地方の結婚式を称揚しているが、あの身内イベント特有の排他感があまり好きではない。
◆第2回 「式場写真の美の研究」
一言 : 職略礼服を着るおっさんは最高にコーディネイトされた伝統の美らしい。椎名節全開。
◆第3回 「一方通行型赤字経済」
一言 : 食事を選ぶ方はそうそう適当に決めていないと思うが。
◆第4回 「人生の席次」
一言 : 確かに席次は何かを象徴している。ただごちゃまぜにされるとむしろ出席者側が困る。
◆第5回 「仲人に花束」
一言 : F・グリーンヒルの「こういうことには形式が必要で、しかもたいした形式ではありませんわ」というセリフを思い出した。
◆第6回 「おんなじ的三大ワンパターン」
一言 : 話は結婚式とは関係ないマンネリネタへ。この辺の脱線は流石にうまい。
◆第7回 「ウェディングケーキ」
一言 : こういった大げさなウエディングケーキも見なくなったなあ。確かに恥ずかしい。
◆第8回 「お色直し狂乱」
一言 : 回数は減ったとしてもお色直しは花嫁のトイレタイムとして必要なものだと思う。
◆第9回 「披露宴の夜は更けて」
一言 : 居酒屋と違う、と言われてもそりゃそうだろとしか。日本は酔っ払いに寛容。
◆第10回 「父の顔」
一言 : 最終話で急にしんみりするのがあざとすぎる。実際しんみりしちゃったけど。
なお、このうち第2回のみ、2015年9月に放送された「今日は一日ラジオドラマ三昧」で再放送されました。
出演者について
出演は冒頭で書いたとおり伊武雅刀さん、佐々木允さん、島津冴子さんの3人。
基本的に佐々木さんが花婿役、島津さんが花嫁役、伊武さんがナレーション(椎名さん役)ですが、それ以外の登場人物もこの3人で演じ分けられており、さすがの演技力です。
島津さんは人気もの
島津さんは、冒頭で自ら「うる星やつらの」と言っている通り当時の人気声優さんで、同時期のNHK-FMでは「絶句」や「二分割幽霊綺譚」、「伸坊の哲学的」、「カムイの剣」など多くの作品に出演されていました。
また佐々木さんは上記の各回サブタイトルを読む役割も担っているのですが、その部分が毎回なぜか微妙に聴き取りづらい発音。
間違えて聴き取っていたらすみません。
出演者その他
ちなみに、最終回の終了直前にこの3人がご自身の立場で会話するシーンがあるのですが、力が抜けていてとても良い雰囲気でした。
なお、上記で3人しか出演しないと書きましたが、実は第2回には脚本の津川泉さんが少しだけ出演されています。
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