谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド 作:樋口ミユ(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 幻想(日本/シリアス)
  • 初出 : 2021年3月1日~3月12日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 樋口ミユ
  • 音楽 : 谷川賢作
  • 演出 : 小見山佳典
  • 主演 : 木津誠之

世界は言葉でできている。
少年ハル(葉琉)は昔から言葉を「見る」ことができた。
見るだけでなく、つまんで並べることもできる。言葉はハルの遊び道具。
あの頃、全ての言葉は輝いていた。
しかし中学校に上がった今、言葉はハルを追いつめるものでしかない。
毒々しい色の言葉の数々。吐きそう、吐きそう、吐きそう…。夜も眠ることができない。
しかし、ある夜、丘の上に立つ洋館の明かりを見たハルは安らかな気持ちを得る。
あの明かりは何だろう?
友人たちの肝試しに付き合い洋館を訪れるハルだが、そこで古いトランクを開け言葉の洪水に飲み込まれるのだった。


本作品「谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド」は、樋口ミユさんオリジナル脚本による青春アドベンチャー4作品目のラジオドラマです。

谷川俊太郎さんの詩をフィーチャー

ただ樋口さんのオリジナル脚本といっても、谷川俊太郎さんの名前を冠した作品タイトルからもわかるとおり、その一定の部分を詩人・谷川俊太郎さんの詩の言葉で構成されるという点で、本作品はちょっと変わった作品です。
谷川俊太郎さんは言わずと知れた現代日本を代表する詩人。
単に詩人としての枠にとどまらず、童話や作詞や脚本、エッセイの執筆なども手がけています。
本ブログでは「今日は一日ラジオドラマ三昧」内で放送された「十円玉」(1963年放送)が谷川さんの脚本作品です。

タイムスリップものでもある

いずれにしろ詩がベースにある作品だけあって、ストーリーは基本的にファンタジック(その割に冒頭から「吐きそう」という言葉の連呼にちょっとゲンナリしますが…)。
言葉を見ることができる(匂いを見ることができるのは「オルファクトグラム」)主人公が、洋館にあるトランクを介して過去へと旅立ちます。
見知らぬ少女・空子(カラコ)とともに着いた先は終戦直後の日本……ってどこかで聞いたような?
そうか「ニコイナ食堂」だ!そういえばあれも同じ樋口ミユさんの脚本(しかも演出も同じ小見山佳典さん)でしたね…
まあ、何はともあれなぜハルは選ばれたのか、そして現代に戻ることができるのか。
ファンタジー色が強くストーリーも鬱々としていた前半と比較すると、後半は冒険色やストーリー性が高まり、谷川俊太郎色より脚本家・樋口ミユさんの色が濃くなります。
個人的には後半の方が好みですが、その辺は聴いてのお楽しみとしましょう。

谷川さんの詩

なお、本作品で使われた谷川さんの詩は以下のとおりです。

  1. 「月のめぐり」
  2. 「月のめぐり」、「芝生」
  3. 「ひも また」、「さようなら」
  4. 「さようなら」、「除名」
  5. 「わかんない」
  6. 「わかんない」、「月のめぐり」、「芝生」、「除名」
  7. 「生まれたよ ぼく」
  8. 「うそとほんと」
  9. 「かなしみ」
  10. 「生まれたよ ぼく」、「かなしみ」、「わかんない」、「言葉は」

原作者・音楽家の出演

さて、本作品においてキャストの最初に書かれているのは俳優の木津誠之さん。
最近では「隠しの国」にも出演されていました。
ただし木津さんはハル役ではなく、ナレーション。
詩の朗読役も兼ねているのですが、敢えてトップクレジットされていることからわかるように単なるナレーションではありません。
この辺は最終話まで聴くとわかる仕掛けです。
最終回といえば、本作品の最終回ではモチーフとなった詩の作者である谷川俊太郎さんと音楽の谷川賢作さんもキャストとして出演されます。
そして最終回では単なる朗読ではなく劇団四季出身の高瀬麻里子さんが歌にのせて歌うシーンもあります。
最後まで聞き逃せない作品ですね。

作品制作の経緯

そして、主人公のハルを演じるのは俳優の池田将さん。
同級生たちを含めてどうしても声が中学1年生に聞えない気もするのですが、池田さんの37歳ということを考えれば当たり前なのかもしれません。
その他、老人のカラコを演じる谷川清美さんと、少女カラコを演じる上田桃子さん(「河童の記憶」ご出演)などが主要なキャストです。
ちなみに谷川清美さんは同じ谷川でも谷川俊太郎さんとは無関係なのですが、本作品で音楽を担当している谷川賢作さん(FMシアター「異人たちとの夏」担当)は、谷川俊太郎さんのご子息です。
本企画はもともと演出の小見山さんが、10年近く前に他のラジオドラマの音楽を谷川賢作さんにお願いしたころから「谷川俊太郎さんの詩をモチーフにしたドラマを作りたい」と温めてきた企画なのだそうです。




コメント

タイトルとURLをコピーしました