- 作品 : 木になった亜沙
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : A
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2022年2月12日
- 回数 : 全1回(50分)
- 原作 : 今村夏子
- 脚色 : 中澤香織
- 音楽 : 菅谷昌弘
- 演出 : 木村明広
- 主演 : 石川瑠華
亜沙は食べてもらえない子。
初めて焼いたクッキーは男の子に受け取ってもらえず、ボケ始めた祖母は亜沙を食べ物に毒を入れていると罵った。
学校の金魚すら亜沙が飼育係だと水底から動かず、それを見た級友たちは亜沙がよそった給食に手を付けない。
母親すら、死に際にお寿司を食べさせようとする亜沙を拒否した。
亜沙はただ食べて欲しいだけなのに。受け入れて欲しいだけなのに。
作家という人達は一体何を考えて、何に着想を得て物語を考えているのだろう。
本作品「木になった亜沙」はそんなことを考えた作品でした。
今村夏子さん+中澤香織さん
原作は芥川賞作家である今村夏子さんの小説。
これをピリピリするような気味の悪い脚本を書かせたらピカイチの中澤香織さん(あのひとのカナリア、志願と拒絶、ミラーボール、王妃の帰還など)が脚色しています。
当ブログで実施した2022年FMシアターリスナーアンケートで「キツイ」「胸糞悪い」「モヤモヤしたものが残る」など激賞?されているのを知った上での聴取だったこともあり「大丈夫か、これ」と思いながら聴いたのですが…
希望はあるのか
それほどキツイ一辺倒の話ではありませんでした。
確かに前半は主人公にとって決して幸福とは言えない状況が続きますし、エンディングだって、これでいいのか?という終わり方。
ただ、当人は幸せになったのかも知れず、後半のファンタジックな展開を含め希望のない話ではない…
いややっぱり希望はないかも知れないけど薄気味悪い話ではありませんでした。
個人的には、亜沙が凄く特殊な子だったと思えず、祖母の発言や母親の病気や離婚?などのタイミングが非常に悪かった結果として、少女の感性のまま拗らせてしまっただけなのではないかと思えました。
その面では荒唐無稽な話だとも言い切れないと感じます。
部分的にはよくわかるが
それにしても作家ってどうしてこういう話を思いつくのかな。
確かに、プロ以外の人が作った料理を食べられない(お手製の弁当やお菓子が食べられない)という人は聴いたことがあり、確かにそういわれると良く知らない人の握ったおにぎりとか何がしかの穢れの気配を感じないでもない自分に気が付いたりはします。
また、子どもは(大人から見ると)どうでもよいものを相手が受け取ることを疑いもせずにプレゼントしてきたりしますし、昨今はフリースクールやゴミ屋敷が話題になることも多い。
どうしてこういう物語になるのか
ただそういった色々な素材からどうすればこういう物語が生まれてくるのだろう。
やっぱり箸の動きとか見ながら思いついたのかな(その辺の表現は微かに官能的)などと色々と考えてしまいました。
お薦めしてよいのかよく分からない作品ですが、毛嫌いすような作品でもないと思います。
出演者紹介
本作品で主役の亜沙を演じたのは女優の石川瑠華さんですが、竹村麻帆さん(幼稚園時代)、境葵乃さん(小学生時代)がリレーして演じています。
比較的、亜沙の幼少期の期間が長いため、子役の二人の演技も印象的です。
(補足)
本作品は、当ブログが年末に実施した2022年のFMシアターリスナー人気投票で第5位の得票(6票)を得ました。
本作品のほかに人気だった作品にご関心のある方は別記事をご参照ください。
■中澤香織さん関連作■
日常的な舞台でもチクチクするセリフが魅力的。
中澤香織さんの脚本、脚色作品の一覧はこちらです。
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