- 作品 : 優しい死神の飼い方
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2022年7月11日~7月22日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 知念実希人
- 脚色 : 三上幸四郎
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 松田悟志
この世に未練を残して死んだ人間は地縛霊になる。
地縛霊になると、われわれ死神といえどもあの世に魂を運ぶことはできない。
だからわれわれが業務を円滑に遂行するためには、未練を持った人間が生きているうちに接触してそれを解消してやる必要がある。
ここは丘の上医院という緩和医療施設。
入院しているのは終末期の患者、つまり余命幾ばくも無い人間ばかり。
この世に未練を残している人間は甘い腐臭がする。
あの男からも腐臭がする。
それは未練があるだろう。
人生にはいくら悔い改めても取り返しのつかないことは確かにあるのだから。
しかし死神たるわれわれは未練を取り除かなければならない。
だから私は彼に問いかける。
「とにかく話してみろ、お前の未練を。」
本作品「優しい死神の飼い方」は内科医にして推理小説家である知念実希人さんによる同名の小説をオーディオドラマ化した作品です。
意外と多いお医者さん作家
医者兼小説家という方はいないようで案外いる存在で、古くは「どくとるマンボウ航海記」の北杜夫さんや「失楽園」の渡辺淳一さんが有名。
最近でも「チーム・バチスタの栄光」の海堂尊さんや「神様のカルテ」の夏川草介さんをはじめかなりの事例があります。
医療というもの自体が物語の題材になりやすいのと、まあみなさん頭が良いのでしょう。
そういえば小説家ではありませんが手塚治虫さんもお医者さんでした。
医療ドラマ?いえいえファンタジー
さて、そんな知念実希人さんが書いた本作「優しい死神の飼い方」もホスピスという知念さんの専門性が発揮されそうな場所を舞台にしています。
実際、前半でもひとつだけ大きなネタが病気絡みなのですが、それ以外は医療知識をそれほど活かした作品ではありません。
そもそも主人公が死神というチートな存在。
そのため基本的に本作品はファンタジーにしかなり得ません。
過去の類似作
実は、本作のような超常的な存在(天使だったり悪魔だったり死神だったり)が案内役になるお話は、青春アドベンチャー系列のオーディオドラマでは折に触れ制作されて来ました。
その意味では青春アドベンチャーらしい作品チョイスと言えます。
このブログですでに紹介している作品だけでも以下のとおりです。
そういえば2021年のFMシアター「あなたは最期に」も死神絡みではありましたね。
■天使が案内役
- アイム・アン・エンジェル(1982年・ふたりの部屋)
- 赤川次郎の天使と悪魔(1989年・アドベンチャーロード)
- 夢見るように愛したい・天使の降る夜(1990年・サウンド夢工房)
- カラフル(1999年・青春アドベンチャー)
- 輪廻転Payうた絵巻(2021年・青春アドベンチャー)
■悪魔が案内役
- 赤川次郎の天使と悪魔(1989年・アドベンチャーロード)
- ネオ・ファウスト(2000年・特集「ガラスの地球を救え~手塚治虫のラストメッセージ」)
- 世界から猫が消えたなら(2013年・FMシアター)
■死神が案内役
- 死神の精度(2006年・青春アドベンチャー)
■その他の不思議な存在が案内役
- クリスマス・キャロル(2013年・青春アドベンチャー)
- びりっかすの神さま(2014年・青春アドベンチャー)
- 負け犬たちのミッドナイトバス(2021年・青春アドベンチャー)
やはり死神の精度
上記の作品群の中でも死神に拘るのであればやはり伊坂幸太郎さん原作の「死神の精度」。
本作品と「死神の精度」は緩やかにつながるいくつかのエピソードで構成されるという意味でも似ているのですが、完全な連作短編の形式を取っている「死神の精度」とは違い本作品はあくまでつながったひとつの長編です。
また、肝心の死神の人柄?もかなり違い、物静かでありながら風変わりな「千葉」と比較すると、本作品の「レオ」は相当、人間?ぽいです。
この辺の違いは人により好みの分かれるところでしょう。
ミステリー要素強し
また、冒頭にファンタジーと書きましたが、本作品は推理小説家である知念さんらしくかなりミステリーを意識した作りになっています。
特に、種まき段階で連作短編ぽい前半と比較すると、後半は前半の登場人物たちが集結し、ひとつの大きな謎を解いていくつくりです。
個人的には、菜穂の立場や殺人事件の真犯人など、前半に敢えてぼかされていた事項が大きな意味がでてくる展開は流石だと思いました。
ただ、結末はファンタジーとしてあくまでセンチメンタルに終わる作品ですので、知念さんだからと言って本格ミステリーを期待すると少し拍子抜けするかもしれません。
松田悟志さん青春アドベンチャー初主演
さて、主役の死神・レオを演じるのは俳優の松田悟志さん。
「仮面ライダー龍騎」の秋山蓮(仮面ライダーナイト)役で準主役的な役を演じて以降、多くのTVドラマにレギュラー出演されています。
青春アドベンチャーでは先日再放送された「七帝柔道記」のほか、「神去なあなあ日常」などにも出演されていますが、主演は初めてだと思います。
脇役も印象的
また、ヒロインの菜穂役は第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリを獲得した吉本美憂さん。
当ブログでは主演作「遥かな旅 蝶の道」を紹介済です。
その他、野村昇史さん、吉見一豊さんのおじさん(おじいさん?)コンビが良い感じです。
また、「タイムライダーズ」、「鷲は舞い降りた」に続き山崎たくみさんが「浮き世離れした雰囲気」を担当されています。
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