あおなり道場始末 原作:葉室麟(青春アドベンチャー)
ついに米櫃の米が尽きてしまった。
それはそうだ、最後の門人も先日出て行ってしまったのだから。
このままでは父上の一周忌もできない。
それなのに道場主の兄上は「困ったなあ」と繰り返すばかり。
世間の人たちは、失礼にも兄上を「青瓢箪」と「うらなり」を掛けて「あおなり」などと呼ぶが、これでは評判どおりだ…
姉上は姉上で「こうなったら道場破りをするしかない」などと、脳筋ならではの暴言を吐く始末。
これでは姉上が「鬼姫」などと呼ばれるのも仕方がないではないか。
しかし…道場破り?
意外といいかもしれない。
兄上が得意なものといえば剣術だけなのだから。
こうなったら、この勘六、神童の誉れ高く「天神小僧」の異名をとる末弟様が軍師役を務めて、何とか道場破りを成功させるしかない。
それに道場破りを続ければ、兄上が言う父上の死の謎に迫れるかもしれないし。