- 作品 : 赤川次郎の天使と悪魔
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : A-
- 分類 : スラップスティック
- 初出 : 1989年1月9日~1月13日
- 各回 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 赤川次郎
- 脚色 : 森保鉄志
- 演出 : 小木哲郎
- 主演 : 古舘伊知郎
お人好しの刑事・吉原丈助のものに、研修中の天使マリ(マリア様のマリ)と、落ちこぼれ悪魔のポチ(人間界では犬の姿をしているためポチ)がやってきた。
早速、丈助が担当することになった殺人事件を解決するために、天使と悪魔のコンビが大活躍を…しているのだか、いないんだか…
作品タイトルでも明示されているとおり、赤川次郎さん原作のライトなミステリー小説をラジオドラマ化した作品です。
原作はシリーズ化されており、全部で7作品ほど発表されているようです。
詳細は定かではないのですが、本ラジオドラマ「天使と悪魔」は恐らくその第1作が原作であろうと思います。
赤川作品の中でもライト路線
赤川次郎さんの作品は、アドベンチャーロード期に2作品(本作品と「ビッグボードα」)、青春アドベンチャー期に2作品(「ふたり」と「魔女たちのたそがれ」)が制作されています(他にショートショート作品がひとつあり)。
本作品は上記の4作品の中でも唯一、全5回で制作された小品で、内容的にも最もライトでコミカルな作品です。
推理というよりコメディ
本作品は殺人事件の謎を追って、ふたりと一匹が奔走する話です。
短いなりに結構、複雑な人物関係が背景にあり、展開もころころと変わるのですが、頭脳を使って謎を解くというより、展開に応じて主人公たちがバタバタしているうちに勝手に謎が解けていくという感じです。
「殺人事件が起き、刑事が捜査をして、犯人が判明する」というフォーマットであることから、一応本ブログでの分類は「推理系」も考えましたが、最終的にはドタバタコメディ色が強いことから「スラップスティック」としています。
古舘節全開
出演は、「比較的正義感が強い悪魔」ポチを、アナウンサーの古舘伊知郎さんが演じています。
後に報道ステーションのメインキャスターとして、報道色が濃くなる古舘さんですが、この頃はプロレスやF1の実況中継で名を馳せたバリバリのスポーツアナウンサー兼司会者でした。
本作品でも、古舘さん演じるポチが、殺人現場や追跡劇に遭遇するたびに、いきなりスポーツ中継風の実況中継を始めるなど、古舘さんのキャラクターを十分に生かした作品になっています。
その他の出演者も楽しい
一方の(自称)「可愛い可愛い天使」マリは、女優の“あめくみちこ”さんが演じています。
番組最後の出演者紹介なども、古舘さんとあめくさんが交互に軽やかに(多少アドリブを交えて?)演じており、とても楽しい雰囲気の作品になっています
また、刑事・丈助役は、「小心者をやらせたら右に出る人はいない」と言われる小倉一郎さん。
小倉さんは「フルネルソン」にもご出演されていました。
その他、宮川洋一さん、須永宏さん、斎藤さとるさんといったアドベンチャーロード期を代表するバイプレーヤーが多数ご出演されており、懐かしい限りです。
スタッフ紹介
スタッフは脚本が森保鉄志さん、演出は小木哲郎さんのコンビです。
手元にアドベンチャーロード期より前のデータがあまりないので漏れは大いにありそうですが、私が知る範囲では、青春アドベンチャー系列の番組で森保さんがご担当された作品はこれ1作だけだと思います。
テレビドラマや、映画、アニメなど、若年層向きの作品を手広く手がけられていた方のようです。
また、小木さんは80年代の後半にこの番組の演出担当をされていた方で、「いつか猫になる日まで」(新井素子さん原作)、「風の名はアムネジア」(菊池秀行さん原作)、「西風の戦記」(田中芳樹さん原作)など、ライトノベルの元祖のような作品群を演出されました。
本作品を含めて、ライトな作品ばかりですが、その全ての作品がラジオドラマとして水準以上のエンターテイメント作品になっており、とても上手い演出の方だと思っています。
自粛ムードだったはずだが
ところで本作品の放送開始日は1989年1月9日。
1月7日に昭和天皇が崩御し、翌1月8日より平成となったため、平成2日目にあたります。
ご存知のとおり、崩御直後はスポーツ、歌舞音曲、TVCM等の大量自粛(という名の同調圧力)がなされていました。
9日はやや落ち着いていたとはいえ、引き続きかなりの自粛ムードだったはずなので、このスチャラカな作品は相当浮いていたのではないかと思います(本当にこの日に放送されたのか記憶が定かではありませんが)。
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