- 作品 : ふたり
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AAA
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 1993年7月5日~7月16日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 赤川次郎
- 脚色 : 吉田浩樹
- 演出 : 吉田浩樹、伊藤豊英
- 主演 : 増田未亜
何でも器用にこなす姉・千津子と、のんびり屋の妹・実加。
常に妹を気遣う姉と、姉に憧れる妹。
ふたりは性格は違えど仲良しの姉妹だった。
しかし、千津子が事故で急死し、生活は一変してしまう。
ショックが大きすぎて心の平衡を失ったままの母親。
実加自身も表面的には落ち着きを取り戻したものの、心の中では喪失感から立ち直ろうともがいていた。
そんな中である事件に巻き込まれた実加。
必死で抵抗していると、頭の中に死んだはずの千津子の声が聞こえてきた…
赤川次郎さんと東野圭吾さん
いきなり脱線なのですが、最近、東野圭吾さんの「秘密」を読みました。
その際に連想したのが赤川次郎さんのこの「ふたり」でした。
両作品とも映画化されています。
特に「秘密」は広末涼子さん主演で比較的最近公開されていますので、ストーリーをご存知の方も多いかと思いますが、両作品に一致しているのは「亡くなった人の魂が別の家族の肉体に宿る」という点だけです。
そのため、私の連想はあくまで思いつきに過ぎないなのですが、ふと作品自体よりも作者の「生態的地位」が似ているのではないかと考えたのです。
国民的作家
生態的地位とは、個々の生物種が自然界において占める地位のことで、ある生態的地位を占める種がいなくなると、別の種が進化して同じような生態的地位を占めるようになるそうです。
別に赤川次郎さんが「絶滅」した訳ではないのですが、改めて考えてみるとミステリー中心ながらその枠にとどまらない作家であること、かなりの多作であることなど、東野圭吾さんは現代の赤川次郎の観があります。
私は東野さんの作品をあまり読んでいないので実感していなかったのですが、赤川さんの「国民的作家」という地位を承継したのが東野さんと考えると現在の人気を理解できそうです。
ちょっと恥ずかしい
さて「ふたり」の話題に戻ります。
格付けの記事で書いた「私の評価は、SF、海外原作もの、歴史もの、仮想歴史ものには甘い」との記述と一致しませんし、そもそもいい歳をした大人の男性がこのようなリリカルな作品を推すのは正直照れくさい面もあるのですが、やはり心に響く優しい作品です。
年齢や精神状態の影響
私にとって小山田いくさんの「すくらっぷ・ブック」などが代表的なのですが、その時々の年齢、環境、精神状態で、なぜか感傷的な作品が妙にツボに入ってしまうこともあるようで、「ふたり」もきっと20年前に初めて聞いたときにこれを受け入れやすい精神状態だったのだと思います。
子供を持った現在改めて聞いてみると、主役のふたり、北尾千津子・実加がともに本当に良い子であることがまた好印象です。
お父さんとしては、こういう子に育って欲しいものです。
どうも「ふたり」の話を書くと自分語りの脱線ばかりになってしまって恥ずかしいですね…
うっすらファンタジー
本作のジャンルは「幻想(日本)」としました。
超常現象がベースの話なのでこうしましたが、聞いているうちに次第に姉が身近にいるだけのように感じられてくる作品で、「日常」としても良い内容です。
伊藤守恵さんの優しい選曲がまたこの作品の雰囲気によくあっています。
クラシックが上手く使われている作品(ピエタ、暗殺のソロなど)は良作品が多いです。
これ以上の内容は聞いての(読んでの)お楽しみということで。
キャストがまたいいのよ
主演のふたり、実加役の増田未亜さんと千津子役の中島ひろ子さんともイメージどおりの演技です。
また宮川一朗太さんも役にあった優しい声ですよね。
ちなみに、おとうさん役の岸部一徳さんは映画版「ふたり」でも同じ役でした。
映画化の2年後
それにしても名匠・大林宣彦監督が映画を作ってからわずか2年後のラジオドラマ化。
この大林監督の映画版は編集されてNHK(TV)でも放送されています。
吉田浩樹さんが演出と脚色を兼ねている(「カラマーゾフの森」、「女たちは泥棒」など少数)のもイレギュラーですし、何か事情がある作品だったのでしょうか?
それとも単にNHKドラマスタッフの趣味なのでしょうか?
随分と挑戦的に感じます。
【伊藤豊英演出の他の作品】
多くの冒険ものの演出を手掛けられた伊藤豊英さんの演出作品の記事一覧は別の記事にまとめました。
詳しくはこちらをご参照ください。
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