- 作品 : 薔薇のある家
- 番組 : FMシアター
- 格付 : A
- 分類 : 家族
- 初出 : 2010年7月31日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : オカモト國ヒコ
- 音楽 : ニウナオミ
- 演出 : 江澤俊彦
- 主演 : 大竹しのぶ
足のケガ以降、仕事をしていない往年の大女優に舞い込んだ依頼は知り合いの女優の代役。
代役ということで一度は断ったが、じっくりと考えた末に受けることを決め、付き人の中年女性に伝えたところ、猛反対を受ける。
代役なんて受けるべきではない、復帰ならしっかりした作品でやりましょう、という付き人に対し、役者でいられる時間は残り少ないと強硬に出演を主張する女優。
そして、女優は付き人に言い放つ、「あなたは私をずっと恨んでいる。だから復帰させたくないのでしょう」。
やがてふたりの会話は、ふたりの関係、ふたりの過去を明らかにしていく。
本作品「薔薇のある家」は脚本家・オカモト國ヒコさんのオリジナル脚本のオーディオドラマで2010年にFMシアターで放送されました。
オカモト國ヒコさん
エンタメドラマを放送する青春アドベンチャーの作品を主に紹介する本ブログでオカモト國ヒコさんといえば、「砂漠の王子とタンムズの樹」・「滅びの前のシャングリラ」(脚色)、「泥の子と狭い家の物語」・「人喰い大熊と火縄銃の少女」(オリジナル)など、エンタメ作品をきちっと良作に仕上げる方という印象。
まあ地味ですよね
しかし、本作品はこれらとは全く違う文芸調の作品です。
登場人物は中年女性と老女だけ(出演者も2名だけ)ですし、ある晩にこのふたりが語り合うだけで場面転換もありません。
作品内容も冒頭の粗筋のとおりとても渋いものですし、冒頭の紹介の後も特別なことは特に起きません。
一応、ふたりの関係や過去のこと、現在置かれている状況が聴いているうちに少しずつ判明していく仕掛けがあり、それがこの地味なストーリーを飽きずに聞ける効果を上げているようには感じますが、ひととひとのつながりを時に激しく、時に柔らかく綴っていくだけの作品です。
この地味な作品を聴かせる作品として成立させている要素としてやはり出演者のおふたりを挙げざるを得ないでしょう。
純粋女優
付き人の中年女性を演じるのは大竹しのぶさん。
明石家さんまさんの元妻とか、タレントIMALUさんの母親で、ちょっと天然なおばさん、的なイメージもありますが、日本を代表する天才女優のひとり。
結核の役を演じていたら本当に血を吐いたとか、主演の台本を渡された1時間後のゲネプロで完璧だったとか、よくわからないエピソードが一杯の方です。
NHK連続テレビ小説「水色の時」のときは、すでに主演は決まったいたのに演技を見た脚本家が大竹しのぶさん以外を認めず、抜擢されたとか。
ベテラン女優
そして往年の大女優役は女優の奈良岡朋子さん。
劇団民藝の創設メンバーの一人で後にはその代表も務めた舞台女優さんです。
あくまで舞台中心の活動だったためテレビドラマへの出演は限定的でしたが、橋田壽賀子脚本作品のナレーションで声を聴いたことのある方も多いと思います。
上記の「水色の時」で大竹しのぶさんと共演されて以降は大竹さんを実の娘のように接したとか。
石原裕次郎、美空ひばりなど大スターとも仲の良かった昭和の大女優ですが、2023年3月に亡くなられています。
難しいことはわかりませんが
本作品、第48回のギャラクシー賞(優秀賞)や第65回の芸術祭賞(優秀賞)を受賞しているのですが、正直どれほどの芸術性があるのか私には判断できません。
終わり方も穏やかで好印象な作品ですし、とにかく個人的にはこのおふたりの世界を覗くことができるだけで収穫ではあります。
ちなみに、「薔薇のある家」自体はほとんど作品に登場しません(なにせふたりが暮らすマンションの一室だけが舞台ですので)。
コメント