泥の子と狭い家の物語~魔女と私の七〇日間戦争~ 作:オカモト國ヒコ(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : 泥の子と狭い家の物語~魔女と私の七〇日間戦争~
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : ホラー
  • 初出 : 2013年4月1日~4月12日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : オカモト國ヒコ
  • 音楽 : 山下康介
  • 演出 : 小見山佳典
  • 主演 : 岸田茜

スカイツリーを見上げる下町。
建物の隙間としか思えない狭い狭い路地を通らないと辿り着けない、小さな家に高校生の少女・小豆(あずき)は住んでいる。
家族は両親と小豆、そして寝たきりのおばあちゃんの4人。
ところが、ある頃から母の言動が少しずつおかしくなり始める。
しかし、この狭い家が大嫌いで両親にも不満だらけだった小豆はそのことを深くは考えない。考えたくもなかった。
ところが、母親の言動がエスカレートを始め、母親の信頼を得た謎の占い師・加々美(かがみ)が小豆の家に住み着くに至り、小豆も事態の異常さに気がつき始める。
そして、つぎつぎと狭い家に移住してくる加々美の「家族」たち。
少しずつ起こり始める異常な現象。崩壊していく小豆の家族。
失われた家族の絆を取り戻すために小豆は行動を始めるが…


劇団テノヒラサイズを主宰する脚本家・演出家のオカモト國ヒコさん脚本のラジオドラマです。
オカモトさんは青春アドベンチャーでは過去に原作付きの長編の脚色担当として、荻原浩さん原作の「僕たちの戦争」と万城目学さん原作の「プリンセス・トヨトミ」を担当されています。
その他、別途紹介済みの「ボディ・ライフ」の1篇や、青春アドベンチャー以外の番組でも脚本を担当しており、NHK-FMのラジオドラマの常連脚本家の一人です。
なお、本作品の2年後にはオリジナル長編の第2弾「人喰い大熊と火縄銃の少女」が採用されることになります。

舞台作品が先行

本作品は、オカモトさんのブログ及び劇団テノヒラサイズのホームページによれば2012年9月に劇団テノヒラサイズが上演した舞台のラジオドラマ化とのことで、舞台が原作ともいえる珍しい作品です。
ただし、本作の舞台版を見られた方の観劇ブログを拝見すると、ラジオドラマ化にあたり作品の舞台が大阪から東京に変更になったほか、登場人物、ストーリー共に大幅にアレンジされているようです。
似たような経緯を経てラジオドラマ化された作品に「エドモンたちの島」があります。
両作品とも、本ブログでは一応、原作なしのオリジナル作品として「作」扱いとさせて頂きました(原作と作についてはこちらの記事をご参照下さい)。

(参考URL:全て外部リンクです)

珍しい試みを歓迎

ところで、舞台と縁が深い青春アドベンチャーの作品といえばかなり昔の作品ですが「マドモアゼル・モーツァルト」が思い出されます。
「マドモアゼル・モーツァルト」は原作が漫画ですが、音楽座ミュージカルでミュージカルになった後で、ミュージカルと同じ主演(土居裕子さん)・音楽(小室哲哉さん)で青春アドベンチャー化されました。
本作品は舞台とラジオドラマでは出演者が全く違うので「マドモアゼル・モーツァルト」とは全く違うタイプの企画ですが、いずれの作品も面白い試みだと思います。

嫌な要素満載

さて、本作の内容ですが、前半はとにかく怖い、というか、きつい。
反抗期の少女、学校での仲間はずれ、劣悪な住環境、精神的に病んでいく母親、老人介護など、割と身近にある(全て関係ないという幸せな方もいると思いますが)、イヤ~な要素が満載の状態で物語はスタートします。
そして、加々美なる気味の悪い人物の登場で、更に暗転していく話。
オリジナル作品で、舞台版のストーリー展開も知らない方々が大半だと思いますので、これ以上のネタバレにつながるストーリー紹介は避けたいと思います。

前半と後半で雰囲気が違う

全体の展開だけ書きますと前半がサイコホラータッチ。
前半の最後辺りから超常現象がチラホラでてきて後半は雰囲気が変わり、ファンタジーっぽい内容。
後半は、より青春アドベンチャーらしい展開でこれはこれで楽しめましたが、個人的には前半の気持ち悪くてイヤ~な感じの方を推します。
魔法より人の悪意の方が怖いと思いますしね。

山下康介さんの音楽はいい

また、山下康介さんのオリジナル音楽も作品を盛り上げるのに一役買っています。
青春アドベンチャーは毎回良い選曲だとは思いますが、やはりオリジナル音楽は雰囲気にあっていますね。
それにしても、新年度最初、しかもエイプリルフールからスタートする放送にこの作品を持ってきたNHKのスタッフが何を考えていたのか少し気になってしまいます。
でも、どうせやるならこの位やった方が気持ちよいと思いますが。

迷ったけど

なお、格付けに関してはAAにすべきかAにすべきかかなり悩みました。
前半が意外性のある内容だったので、AA以上の水準の作品になるであろう期待感を持って後半に臨んだのですが、残念ながら後半はあまりにありきたりな展開。
ただ、前半は青春アドベンチャーには数少ない本格的に気持ちの悪い作品であったこと(褒めています)、後半もそれなりに楽しめる内容であったこと、結局*****(ネタばれ防止のため伏字)は今後もズレた時間を生き続けるのだという微妙に苦味の残る結末、そして綺麗にまとまったラストシーンを勘案して、AAとしてみました。
やはり最終話が終わった後の読後感(視聴後感?)はとても重要だと感じます。

敢えてホラー系に分類

作品のテーマについて公式ホームページでは「邪悪とは何か、正義とは何か、善とは何か、揺れ動く心の中で次第に少女が精神的にも成長していき」などと書いてあります。
まさにそのとおりで本作は少女の成長物語であり、家族の絆を取り戻すための戦いが主題ではあるのですが、特に前半の展開に敬意を表して、本ブログでは作品ジャンルを敢えて「ホラー系」に分類してみました。

高校生で行ける声

主役の小豆役は女優の岸田茜さん。
以下のブログによれば「アラサー」とのこと。
(岸田茜さんブログ・外部リンク)
http://ameblo.jp/akane-0906/entry-11493641340.html
http://ameblo.jp/akane-0906/entry-11502935832.html
ちなみに同級生役の占部房子さん(青春アドベンチャーでは「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」や「闘う女」などに出演)も35歳だったりします。
お二人とも高校生役でも十分いける声です。


★2013/4/19追記★
オカモト國ヒコさんの過去の脚色作品についての記載を修正。
ザ***ル(了解を得ていないため一応、伏字)さん、ご指摘ありがとうございました。
★2023/6/8追記★
「泥の子と狭い家の物語」が映画化されていたことに気が付きました。
主演は映画初主演の織田ひまりさん。
2022年12月から公開されていたようです。

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