- 作品 : 2001年巳年の旅
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : コント
- 初出 : 2000年12月18日~12月22日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 作 : 藤井青銅
- 演出 : 川口泰典
- 主演 : 温水洋一、飯塚雅弓
刮目せよ!我々は監視されている!
とかく暴走しがちな地球文明を監視するため、地球には銀河連邦から密かに監視員が送り込まれているのだ。
今年も地球暦にしたがい、年末に監視員の交代が行われる。
交代する監視員は、銀河連邦に対し、地球のいかなる事項を報告(=告げ口)するのだろうか。
そして、その報告を受けた銀河連邦は地球文明をどのように遇するのか。
成熟した文明として銀河連邦への加盟を求めてくるのか、あるいは、野蛮な文明として殲滅を決断するのか。
刮目せよ!我々は監視されているのだ。
…などとシリアスに書いてしまいましたが、この作品「2001年巳年の旅」は、青春アドベンチャーで1993年から2009年まで放送されていた特番「年忘れ青春アドベンチャー・通称「干支シリーズ」」の中の一作で、コントで構成されるコメディ作品です。
つまり、銀河連邦が接触してくることも、地球が殲滅されることもなく、毎回、「今少し見守る必要があるようです。」という緩めの結論で締めくくられることになりますので、ご安心ください。
ほぼいつもどおりのフォーマット
干支シリーズのフォーマットは毎年ほとんど決まっていました。
具体的には、15分×5回の枠のもと、1回ごとに「政治・経済」、「スポーツ」などのテーマが設定されます。
そしてそのテーマに沿って、その1年に起こった出来事を題材にして数個のコントが展開され、それについて前年の監視員と翌年の監視員(それぞれ干支の動物に化けて人間社会に紛れ込んでいる設定)がコメントする。
最後にはその内容の総評が「銀河連邦への報告書」として読み上げられ、流行歌(なぜか12年前の同じ干支の年に流行った曲)が流れて終了するパターンです。
本作品もほぼこのフォーマットに則って制作されていますが、最後の流行歌は省略されました。
各回の内容
さて、本作品でネタとなった2000年の出来事は以下のとおりです。
第1回:社会的な出来事
「IT」「有楽町そごう閉店」「虫の混入事件」
「IT」という言葉はバズワードにならず見事に生き残りましたね。
また、この回で脚本家の藤井青銅さんは登場人物に「デパートに必要なものは、エレベーターガールと地下食品売り場と屋上のミニ遊園地」だけと看破し、デパートは2階建てで十分と言わせていますが、現在の商業施設の方向性を考えるとなかなか含蓄の深い言葉です(エレベーターガールは除く)。
第2回:芸能界
「叶姉妹」「いっこく堂」「できちゃった結婚」
叶姉妹もいっこく堂もなんとか生き残っていますね。
なお「できちゃった結婚」については、平成17年(2005年)の国民生活白書に「婚前妊娠」増加の分析がなされているそうですが、それ以前からもちろん増えており、この回で言及されているとおり、1997年3月の安室奈美恵さんの結婚・妊娠発表がひとつのターニングポイントだったように思います。
第3回:政治・経済
「九州・沖縄サミット」「失言ばかりの首相」「500円玉・2000円札」
沖縄サミットもイレギュラーな場所でしたが、次の2008年「北海道・洞爺湖サミット」、2016年「伊勢志摩サミット」も、かなり個性的な開催地でした。
作中の「サミットを地区大会を勝ち抜いた国だけ出場できるようにすればいい」という提案は、実現性はともかくネタとして面白いと思います。
一方、失言ばかりの首相はもちろん森喜朗氏。
サミットと万博を間違え、「IT」を「イット」と読むなど、なかなかレベルが高いです。
彼も、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長として今でも生き残っています。
第4回:スポーツ
「シドニーオリンピック」「トルシエ監督・小出監督」「イチロー、メジャーリーグ入り」
思えば高橋尚子さんの金メダルは日本女子陸上界初だったんですねえ。
翌年には世界記録も更新。
まさに「Qちゃん」時代でした。
また、イチローこと鈴木一朗選手がメジャーリーグ入りしたのはこの2000年(出場は翌2001年から)。
今年(2017年)、現役引退が取りざたされていますが、頑張ってほしいものです。
ちなみにこの回だけはエンディング曲が流れました(ただし曲の紹介はなし)。
流れた曲はサザンオールスターズの「TSUNAMI」。
この年1月に発売されたサザンオールスターズ最大のヒット曲ですが、東日本大震災以降はあまり流されることはなくなりました。
「曲に罪はない」という意見もありますが、tsunamiって侘しいものではないことが明らかになってしまったので仕方がないと思います。
第5回:文化
「ゴッドハンド」「白川博士ノーベル賞受賞」「動物占い」
「ゴッドハンド」といって若い人にはなんだかわからないと思います。
是非、「旧石器捏造事件」をネットで調べてみてください。
一時期、日本中で前期旧石器時代の石器が発見された…ことになっていたんですよ。
もちろん捏造をしていた藤村氏が悪いことは言うまでもないですが、「日本の旧石器時代はアジアでも最も古い時代に始まった」という「事実」を歓迎する風潮が事件の背景にあったように感じます。
科学的な態度の重要性を認識させられた事件でした。
出演者
出演者は、当年の監視員である「辰」(龍)を演じる温水洋一さんと、翌年の監視員であるミソサザイ…ではなく「巳」(蛇)を演じる飯塚雅弓さんがメインでした。
干支は元々動物ではない
ちなみに、本作品でも十二支は動物であることを前提としては話されていますが、もともと「辰」は「草木の整った状態」、「巳」は「草木の成長が極限に達した状態」を表しているそうです。
つまり、もともと十二支に動物の意味はなく、後から割り当てられただけ。
しかもなぜ動物が割り当てられたかは詳細不明なのだそうです。
歴史ミステリーは意外と身近に転がっているものだと感心します。
川口泰典さん唯一の干支シリーズ
なお、本作品は20世紀最後の青春アドベンチャー作品です。
そして、1990年代にとても多くの作品を演出した川口泰典さんが演出した唯一の干支シリーズの作品です。
そして、川口さんの演出作品は、この翌年の「見習い魔女にご用心 ランドオーヴァーpart5」で最後になりますので、川口さんの作品の中でも最後期の作品のひとつになります。
【藤井青銅原作・脚本・脚色の他の作品】
青春アドベンチャーの長い歴史において、最も多くの脚本と最も多くの笑いを提供しているのが脚本家・藤井青銅さんです。こちらに藤井青銅さん関連作の一覧を作成していますので、是非、ご覧ください。
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紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。
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