- 作品 : 窓辺には夜の歌
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2001年9月3日~9月14日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 田中芳樹
- 脚色 : 佐藤ひろみ
- 演出 : 松本順
- 主演 : 尾崎右宗
10月の最後の日。
St.ルカス大学の学園祭にて、大学1年生の耕平と14歳の来夢、そして北本老人は再会した。
夏の日の、あの洋館での冒険から2カ月。
3人はそれぞれに日常生活へと戻っていた。
再開を祝す三人。
しかし、人気急上昇中のシンガーソングライター・小田切亜弓の学園祭コンサートを期に、現世は再び異世界へと変貌を遂げるのだった。
1997年に放送された「夏の魔術」の続編です。ちなみに本作品の放送期間中にアメリカ同時多発テロが発生しています。
舞台は都心部
さて、前作の最後で、狂気に支配された首謀者と対決したうえで、ようやく日常生活へと復帰した3人ですが、耕平や北本老人の母校であるSt.ルカス大学で、再び、魔術に関連する事件に巻き込まれていきます。
前作は不気味な蒸気機関車により連れ去られた謎の洋館が舞台でしたが、本作では都心の大学や遊園地、それに新宿・池袋などに怪物が出現し一般人が巻き込まれるという、よりスケールの大きな展開になっています。
スケールの大きい作品にはなったのですが…
ホラーではない
もともと前作もそれほど恐怖感を前面に出した作品ではありませんでしたが、本作は前作以上にホラー要素が薄くなっており、はっきりいって聴いていて怖くなるような箇所は全くありません。
前作は「オフィート」(拝蛇教)という要素を魔術的な雰囲気を出す小道具として効果的に使っていましたが、本作ではこれを掘り下げるような展開もなく、ちょっと肩透かしです。
ミステリーでもない
前作であった謎解きの要素もありません。
また、前作の事件の首謀者は狂気に犯されているとはいえ、その悲しみに共感できる要素もあったのですが、今回の首謀者は独善的というか、はっきり言って気持ち悪いだけというか、どうにも感情移入できません。
更にどういうわけか「夏の魔術」では結構頻繁に見られたスパイスの効いた田中節も影を潜めています。
ちなみに、「夏の魔術」以前にラジオドラマ化された「西風の戦記」や「カルパチア綺想曲」もいかにも田中さんらしい辛辣なセリフが多かったのですが。
冒険ファンタジー
冒険活劇としてはスケールも大きいですし、前作の登場人物たちのその後がわかって楽しい作品です。
ただし、冒険といっても耕平と来夢が不思議な世界を旅する話で現実感は希薄ですし、恐怖感も感じず、謎解き要素もなく、SF的な屁理屈もなくなっているため、本作のジャンルは前作の「ホラー」ではなく「幻想(日本)」にしました(ジャンル区分についてはこちらの記事を参照してください)。
4部作の2作目
ちなみに本作の原作は「夏の魔術」にはじまり、「白い迷宮」・「春の魔術」へと続く4部作の2作目の位置づけです。
本記事を書くにあたり全巻読みました。
本作のラジオドラマ化は2013年2月現在、この2作目でとまっているのですが、続編がどうしても聞きたいか問われると微妙なのが正直なところです。
原作を読んだ感想としてはこの2作目が最もピンと来ない作品で、「白い迷宮」・「春の魔術」は比較的楽しめる内容ではありました。
しかし、上記でも書いた「気持ち悪さ」に関係する要素が3作目以降は増幅されています。
特に3作目以降はその要素が敵方だけでなく、主人公の耕平にも感じられるのが、どうしても気になりました。
確かに10年後には気にならなくなることかも知れませんが、少なくとも作品時点は10年後ではありません…
ヤンははじめてあったときのフレデリカをそういう目では見ていなかったと思うのです(銀河英雄伝説ネタです。ご存じない方、すみません)。
キャストは変わらず
出演者については、メインキャスト3人組、耕平役の尾崎右宗さん、来夢役の篠原恵美さん、北本老人役は永井一郎さんは前作と変わらず。
作品内容が個人的な趣味にあっていたかはともかく、おなじみのメンバーがおなじみの声で聞けるのは嬉しいものです。
その他、前作では3人組と一緒に事件に巻き込まれたその他の4人の乗客たちの言動もまた面白かったのですが、今回はそれに該当する人たちはいません。
この辺もちょっと物足りなかった原因かもしれません。
【田中芳樹原作・原案の他の作品】
- 西風の戦記
- カルパチア綺想曲
- 夏の魔術【本作の前日譚】
- バルト海の復讐
- 月蝕島の魔物(VHA1)
- 髑髏城の花嫁(VHA2)
- 水晶宮の死神(VHA3)
- 黒十字の魔女(VHA外伝)
- 白銀騎士団 シルバー・ナイツ
※VHA=ヴィクトリア朝怪奇冒険譚
【30周年記念全作品アンケート】
2022年に当ブログが独自に実施した青春アドベンチャー30周年記念・全466作品アンケートの出演者編において、本作品に出演している永井一郎さんが5票を獲得し8位になりました。
リスナーの感想等の詳細はこちらをご覧ください。
コメント
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聴いて暫くはミステリーかなと思いました。言葉も通じない異世界に飛んで孤軍奮闘してやっと現世に戻ってきたら敵だと思っていた小田切亜弓が寝返りを打って話は終わります。もっと小田切が寝返りを打つきっかけを提供してほしかったですね。例えば、幼い頃虐待を受けてそれをずっと根に持つとかですね。
とはいえ、小田切亜弓役の菊池志穂さんの艶めかしい演技は素晴らしかったです。菊池志穂さんが出演された作品があれば紹介してほしいです。
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コンさま
コメントありがとうございます。
確かにストーリーが物足りないですよね。
原作はどうだったかな。
読んだはずなのですが忘れてしまいました。