- 作品 : 水を運ぶ
- 番組 : FMシアター
- 格付 : A
- 分類 : 日常
- 初出 : 2025年11月8日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 足立聡
- 音楽 : 菅谷昌弘
- 演出 : 木村明広
- 主演 : 橋本淳
毎日、高速に乗って富士山へ向かう。
病床の友人のところに富士山の水を運ぶためだ。
いつかここに一緒に住みたいと彼は言った。
しかし別れた今、それは叶わない。
いや、そもそも彼に時間は残されていない。
それでも僕は水を運ぶ。
彼の恋人はそれをどう思っているのだろうか。
当ブログで主催した2025年のFMシアターリスナーアンケートは例年にない低調な投票数だった訳ですが、それはともなく、選ばれた作品がとにかく地味!というのが最大の感想です。
FMシアターだもの…
FMシアターだから地味なのはいつものことなのですが、特に作品編第1位の「手が冷たい」と本作品「水を運ぶ」(同第3位)は地味にとどまらず、人生のつらさ、苦しさをこれでもかとぶつけてくる、いかにもFMシアターらしい作品。
正直、聞いていてつらいです。
とはいえそのつらさを丁寧に描いており、つい聞き入ってしまうのも事実ではありますが。
3人の関係性がすべて
主な登場人物は5人。
主人公の橋本淳さんが演じる「佐藤太陽」と、その元恋人で余命いくばくもない神谷圭介さん演じる「立野慎吾」、そして慎吾の現恋人である内田慈さん演じる「上野美智子」。
これに水汲み場のお節介なおばさん(演:梅沢昌代さん)と佐藤の後輩(演:相川春樹さん)の5人の会話だけでほぼ全体の話が進みます。
特に最初の3人が中心で、テーマは公式HPで記載されている「同じ相手を愛してしまった男女の、その喪失の受容と再生の物語」がすべてといってもよいです。
30回の「はい…」
彼らが直面する理不尽な状況。
特に佐藤はこれをひたすら淡々と受け止めます。
その象徴が佐藤の発する「はい…」というセリフ。なんと作中で30回にも及びます。
そのすべてが微妙にニュアンスが違うのですが、基本的には現実を受容し、自分を納得させるためのもの。
それ以外にも
さらに立野に対して発する「うん」が16回あります。
また「そうなんですね」(5回)、「そうですか」(5回)をはじめとした「そう~」というセリフも19回。
これだけでも佐藤のただ黙って受け入れている姿が浮かぼうというものです。
橋本淳さんの演技
これだけのセリフで物語が成立しているのは脚本もさることながら、橋本さんの演技があってのことでしょう。
青春アドベンチャーの「高天原探題」や「人工心臓」でもよかったのですが、こういった重くて濃淡のはっきりしない作品で細かい機微を伝えられるのはさすがだと思いました。
だけどやっぱり…
それにしてもねえ。やはり暗い、重い。
FMシアターが基本、シリアスなのはやむを得ないとして、もう少しエンタメ方向に振れないものでしょうか。
脚本の足立聡さん、2024年の「アンモナイト!!!」は割と明るめだったんだけどな。
例えば番組全体で「うつくしい靴」みたな感じのものをもう少しお願いしたいです。お願います。
本作品は当ブログで実施した2025年リスナーアンケートのFMシアター・作品編で第3位の得票を得ました。
リスナーの感想等は以下をご覧ください。


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