踊る黄金像 原作:ドナルド・E・ウェストレイク(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 踊る黄金像
  • 番組 : 春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : スラップスティック
  • 初出 : 1995年10月9日~10月20日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : ドナルド・E・ウェストレイク
  • 脚色 : 香取真理
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 海津義孝

ニューヨーク子のジェリー・マネリーは、空港で荷物の運び屋をしている。
運び屋と言っても、警備の目を盗んで、他人の荷物を勝手にちょろまかすのが仕事だ。
仕事は順調。
最近は、“その筋”の得意先からの依頼で、特定のブツを回収する仕事も増えた。
その日、ジェリーが盗んできたブツも、ある得意先の依頼によるものだった。
しかし、依頼主のヘマで、違うブツを回収してしまった。
依頼主のミスなので、ジェリーに責任はない。
依頼主も「忘れてくれていい」と言っている。
しかし、依頼主の態度が何かおかしい。
独自にブツの正体を調べ始めたジェリーは、回収するはずだったものがアステカ文明の秘宝“踊る黄金像”だということを知る。
一攫千金のチャンス到来!
大金をせしめるためには、16体の黄金像の中から本物を探さなければならない。
依頼主を出し抜いて16体も調べるためには、とにかく急がなければ!
“Gotta Hustel!”(ガッタ、ハッスル!)



アメリカの小説家、ドナルド・E・ウェストレイク原作の小説のラジオドラマです。
ウェストレイク原作の作品は本作品のあと、「二役は大変!」と「嘘じゃないんだ」の2作品が青春アドベンチャー化されています。
全3作品の放送は、すべて1995年と1996年に集中しています。

翻訳もの独特のテンション

さて、本作品はもともと外国作家の小説が原作なのですが、このラジオドラマも外国作品らしい独特のノリが特徴の作品です。
具体的には、登場人物達が急いで行動することを迫られるたびに「ガッタ、ハッスル!」とハイテンションで叫んで気合いを入れるところや、随所にちょっとしたギャグ(アメリカンジョーク?)が挟まることなど。
それに、主人公がナレーションと会話する(恐らく主人公の思考をそのような形式で表現しているのだと思いますが)というのも、独特な様式です。
また、台詞も、海外小説調(あるいは翻訳小説調)の独特なもので、個人的にはちょっと違和感がありました。

複雑な展開

また、登場人物が多く、しかも複数の登場人物がやたらと激しく移動を続けるのもこの作品の特徴。
とにかくスピーディーな展開で、プロローグとエピローグを除けば、作中での時間はほとんど3日程度しか経っていないのに、複数の登場人物達が、めまぐるしく入れ替わりながらハッスルして移動を続けます。
これでも原作小説よりは相当、簡略化しているようですが、ただでさえカタカナの名前は覚えづらいもの。
小説のように登場人物表が付いていれば、それを眺めながら読めばよいのですが、ラジオドラマでは、一旦、聴き損なうとどんどんストーリーが先に進んでしまいます。
最初聴いた時は、特に序盤は、かなり混乱してしまいました。
正直、ラジオドラマにするには厳しい作品だった気がします。
しかし、よく練られたテンポの良い構成と、びっくりするほど明るい雰囲気は、他の青春アドベンチャー作品にはない独特のものです。
この作品は何度も聴かないと良さが分かりづらい作品なのかも知れません。

海津さんには珍しい小者役

主人公のジェリー・マネリー役は、この当時の青春アドベンチャーの常連出演者だった海津義孝さんが演じています。
本作品のほかにも多くの作品で主役級の役を演じられている海津さんですが、やはり一番のはまり役は「ジュラシック・パーク」のグラント博士でしょうか。
本作品のジェリーは、小物だけどノリのいい男で、理知的なグラント博士や豪快なジェラード・アッテンボロー(カルパチア綺想曲)などとは全く違うのですが、これはこれで味のある演技です。

その他の出演者

また、ジェリーとチームを組んで黄金像を追う、メル、フランク、フロイドの3人を演じるのは、近江谷太朗さん、佐戸井けん太さん、遠山俊也さんです。
また、メルの妻の浮気相手で、途中で事情を知って独自に黄金像を追いはじめるウォリーを小松正一さん。
この他、1体の黄金像の所有者として登場し、終盤にはヒロイン扱いになるボビー役が舵一星(かじ・いっせい)さん
その他、密輸元のギャングスターや、ボビー以外の黄金像の所有者達も追跡に加わっていきます。
皆が“ガッタ、ハッスル!”しているので、徐々にハチャメチャになっていくわけです。

名作を多数送り出したコンビ

脚色は香取真理さんで、演出は川口泰典さんです。
このコンビで制作された青春アドベンチャー作品は、本作品のほか、「悲しみの時計少女」、「ジュラシック・パーク」、「アナスタシア・シンドローム」、「カルパチア綺想曲」、「エデン2185」の合計6作品。
とてもレベルの高い作品群ですね。

ペルー?メキシコでは?

また、選曲は、本作品も、長い間青春アドベンチャー系の番組の選曲を一手に担ってきた伊藤守恵さんが担当されています。
伊藤さんが本作品のオープニングのために選択された曲は“コンドルは飛んでいく”。
これは本作品の黄金像がアステカ文明の遺跡から持ち出されたものであることに掛けているのだと思うのですが、“コンドルは飛んでいく”はペルー。
ペルーと言えばインカ文明で、全然違うじゃないか、という気もしますが、恐らくわかってやっているのだと思いますし、高原の古代文明の雰囲気は十分伝わるので、無粋なつっこみはやめておきましょう。
一方で、エンディングテーマ曲はヴァン・マッコイの「ハッスル(The Hustle)」。
本編中でもハッスル、ハッスル。
エンディングテーマもハッスル、ハッスル。
ノリノリの本作品です。


【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。


【近代から現代にかけてのアメリカ合衆国を舞台にした作品】
第1次世界大戦後に完全にイギリスから覇権国家の座を奪い取ったアメリカ合衆国。
その発展期から現代までを舞台にした作品の一覧はこちらです。




コメント

タイトルとURLをコピーしました