大いなる冒険 原作:ミッキー・スピレーン(アドベンチャーロード)

格付:B
  • 作品 : 大いなる冒険
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B
  • 分類 : 冒険(山岳海洋)
  • 初出 : 1987年4月27日~4月31日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : ミッキー・スピレーン
  • 脚色 : 有高扶桑
  • 演出 : 峯岸透
  • 主演 : 利根川龍二

ある日突然、カリブ海から潮が引き、沿岸の海底があらわになった。
カリブ海は沈没船の宝庫、それはつまり海底に眠る財宝の宝庫でもある。
父ビンセントとともに財宝を探すために移住してきた少年ラリーにとっては千載一遇のチャンスの到来だ。
しかし、父は新しいサルベージ船を建造するためアメリカ本土で銀行と交渉しており不在。
でもこのチャンスは逃せない。
友人のジョシュとともに父子だけが知る秘密の沈没船ベル号を探しに干上がった海底を探検し始めたラリーだったが…




凄いタイトル

大いなる冒険!
凄くないですか?
番組タイトルにアドベンチャー(=冒険)と入る青春アドベンチャー系列の番組でも、作品名に直接「冒険」なんて入る作品はごくわずか。
しかも「大いなる」ですよ?
さらに原作者はミッキー・スピレーン!
「裁くのは俺だ」で始まる、あの探偵マイク・ハマーシリーズにおいて強烈な暴力描写と性描写で大衆の大喝采を浴びた(そして文壇と世間から白眼視を受けた)あのミッキー・スピレーン!
これは「大いなる冒険」もゴリゴリのハードボイルドなのか?と思わせておいて本作品の内容は冒頭の紹介のとおりなのです。

スピレーンの少年向き作品

実は本作品はスピレーンがキャリアの後期にヤングアダルト向けに書いた一連の作品の第1作なのだそうです。
すでに人気作家になっていたスピレーンがどのような気持ちで少年が主人公の清く正しい冒険もの(ただし悪漢はそれなりにちゃんと悪漢ではある)を書いたのか興味深いですね。
ちなみに「大いなる冒険」の原題は“The Day the Sea Rolled Back”。
「大いなる」に相当する単語も「冒険」に相当する単語もありません。
スピレーンの代表作のひとつに「大いなる殺人」(The Big Kill)というタイトルの作品があるので翻訳版を出す日本の出版社側があわせたのでしょう。
まあ売る側の都合ですね。

少年ふたりの冒険

さて、本作品の内容は原題がそのまま表しています。
“The Day the Sea Rolled Back”を直訳すると「海が後退した日」でしょうか。
物語はカリブ海でトレジャーハントをもくろむビンセントとその子ラリーが突然の沈没でサルベージ船を失うところから始まります(もちろんこの沈没もいわくアリ)。
妻(ラリーからすると母)を亡くしたあと、思い切って全財産を投じて得た船だったので父子にとっては廃業の瀬戸際だったのですが、財宝探しを続行することを決意し父親は資金調達に向かいます。
そして、一人残ったラリーの目の前で一夜にして起きたのが原因不明の急激な海岸線の後退。
舞台はカリブ海、いわゆる「魔の三角地帯」と恐れられた沈没船銀座でしたので、島民たちは大興奮。
露出した沈没船に群がり一時のゴールドラッシュに大騒ぎになります。
ラリーも地元の同年代の友人ジョシュとともに探索を開始するのですが、もとからビンセント親子を良く思っていなかったジムスン兄弟から暴力的な妨害を受けるのです。

予想と違った

という訳で、父・ビンセントと子・ラリーが主人公であれば「遠い海から来たCOO」のような展開もあり得たのでしょうが、結局、主人公は少年ふたり。
悪漢のお蔭でそれなりに緊張感はあるのですが、どうしても子供向けの感があります。
特に主人公ふたりが声を合せて「えー!」などというシーンが多く、教育番組的な水島裕さんナレーションも含めて、どうしても学芸会的な印象は抜けませんでした。
また、作中で海が後退していたのはわずかな時間ではあるのですが、放送時間も短いのでとにかく展開やナレーションが急ぎ足。
スピレーンのハードな世界(スピレーンのアメリカ万歳思想は鬱陶しいですが)を想像しているとかなり拍子抜けの作品でした。

これはこれで

ただアドベンチャーロードはハードな作品だけでなくライトノベルの元祖のような軽い作品(例えば「怪事件が多すぎる パート2」とか)も放送していました。
そっち系の作品だと思えば、いつものアドベンチャーロードらしい、気持ちの良い小品だともいえると思います。

主演は利根川龍二さん…だよね

さて本作品の名前で検索すると出演者の最初にでてくるのは俳優の久富惟晴さん…なのですが、久富さんは父ビンセント・ダマーの役。
役者としての格はともかく、本作品の主演は息子ラリーを演じた利根川龍二さん、そしてその友人のジョシュを演じた阿部慶次さんでしょう。
また、ふたりを妨害するジムスン兄弟を演じたおふたりが特徴的。
兄バドを演じた志垣太郎さんは一世を風靡した人気役者さんでNHK-FMのラジオドラマでは「カムイの剣」で主演されています。
また弟ジョイを演じた花房徹さんは演出家としても活躍された方で後番組のサウンド夢工房では「フランケンシュタイン家の家庭読本」にて脚本を書かれています。



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