遠い海から来たCOO 原作:景山民夫(アドベンチャーロード)

格付:AA
  • 作品 : 遠い海から来たCOO
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 冒険(山岳海洋)
  • 初出 : 1988年9月19日~9月30日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 景山民夫
  • 脚色 : 湯本香樹実
  • 演出 : 笹原紀昭
  • 主演 : 金杉太朗

洋助は、海洋生物学者である父・哲郎とフィジー諸島のパゴパゴ島に住んでいる少年。
ある日珊瑚礁で、1億6500万年前に絶滅したはずの首長竜プレシオサウルスの幼生に出会う。
クーと名づけられたそのプレシオサウルスが、インプリンティング(刷り込み)により洋助を母親と認識してしまったため、洋助の母親代わりの日々が始まった。
大変ながらも楽しい日々。
しかしその平穏な日々は長くは続かなかった。
洋助の周りで、核実験を目論むフランス軍とこれに反対する組織の暗躍が始まり、哲郎・洋助親子、そしてクーもその争いに巻き込まれていく…



「深海・謎の未確認生命体」シリーズの第2弾は、先年他界された景山民夫さんの直木賞受賞作が原作の「遠い海から来たCOO」です(なお第1段はこちらの記事です)。

直木賞受賞作だが…

本作が直木賞を受賞する際、特に作品の後半があまりに冒険小説的なので選考委員の間でも評価が分かれたというのは有名な話です。
ちなみに景山さんの作品では本作と同様に「遥かなる虎跡」もアドベンチャーロード時代にラジオドラマ化されています。
景山さんといえばもともとは放送作家で、個人的には高田文夫さんと組んでラジオ番組のパーソナリティをしていたのが思い出深いです。
その後、某宗教団体がらみでワイドショーをにぎわすなど、いろいろな話題を提供してくださいましたが、惜しくも1998年に50歳の若さで事故で亡くなられています

エコテロリズム

本作はUMA(未確認動物)と核実験というコテコテの題材を軸に、南太平洋を舞台にアクションが展開されます。
聞いていても特に後半は一般的な直木賞作品とはちょっと趣が違う純粋な娯楽作品で、「これは権威ある直木賞選考では揉めるだろうなあ」と思いますが、娯楽作品を求めている私としてはむしろ願ったりです。
当時はまだエコテロリスト的な活動は日本ではあまり知られていませんでしたが、本作では実力行使を厭わない環境保護団体が登場するなど、先見性のある内容だったと思います。
作品展開についてはドタバタ作品に過ぎないと批判する人もいるかもしれませんが、作品が進むにつれ徐々に話が収斂し、終盤では両勢力が一箇所に集結し、最後のシーンを迎えるという王道の展開は見事です。

あまり共感できない部分も

ただ、最後の決着の仕方は「人間の小細工は所詮自然の神秘には適わない」的なもので、個人的には賛成しかねる部分もあります。
また、同属間で争うことをやめない人間社会に対する警告という面でも、例えばこの作品の少し後に同じアドベンチャーロードで放送された「最後の惑星」での問題提起の仕方に比べると、本作の核実験反対運動は如何にも抽象的で説得力にやや欠ける気もします。

美しい結末

しかし、決着の場面は(ラジオドラマなので実際に目で見えるわけではありませんが)とても印象的な美しい場面であり、娯楽作品としてみればこれはこれで見事なエンディングだと思います。
なお、青春アドベンチャーにおいて「深海で未知の生物が発見されて軍を含めての大騒動になる」という点で類似するストーリの作品として「Meg」があります。
本作品以上に単純な娯楽作品として楽しめる作品です。

若くして亡くなれた金杉さん

出演は洋助役が金杉太朗さん、哲郎役が内海賢二さん。
金杉太朗さんは、この1988年、「3年B組金八先生」(第3シリーズ)にも出演されていた子役さんで、その後、俳優として数々のドラマに出演されることになるのですが、惜しいことに約20年後の2008年8月に32歳の若さで事故で夭折されました。

脇役が印象的

その他、特に印象的なのは内海賢二さん。
内海さん「最後の惑星」のカレーおじさん役など印象的な役は他にもあるのですが、やはりこの哲郎役が私のアドベンチャーロードにおける内海さんのベストアクトです。
豪快で、捌けていて、それでいて根は大変まじめな哲郎役にぴったりあってたと思います。
また、ノルベール大佐役の家弓家正さんの存在感が素晴らしい。
やはりアクの強い悪役がいないと作品は締まりませんね。
最近の青春アドベンチャーがいまひとつピリッとしないのは、どぎつい悪役が出てくる作品が少ないことが原因のように思えてなりません。


【笹原紀昭演出の他の作品】
アドベンチャーロード期を中心に多くの傑作アクション作品を演出された笹原紀昭さん。
演出作品はこちらに一覧を作っています。


「深海・謎の未確認生命体」シリーズの第3弾はこちらです。



コメント

タイトルとURLをコピーしました