とけるストーリーボックス　作：小峰貴之ほか（青春アドベンチャー）

本作品「とけるストーリーボックス」はオリジナル脚本5話で構成されるストーリーボックスシリーズの第5弾です。
2023年では3月の「ふれるストーリーボックス」に次いで2作品目の放送となりました。

出演者の特徴

他のオムニバスシリーズ（不思議屋シリーズ、ライフシリーズ）」と異なり、レギュラー的な出演者がいないのが、このストーリーボックスシリーズの特徴です。
特に本作品は5話すべてで主演が異なり、出演者もかなりばらばらという贅沢仕様。
同一作者という点では異なりますがオムニバスという点では類似点がある「夜に星を放つ」も似たような感じでしたので、今後の青春アドベンチャーのオムニバスはこのような形が主流になるのかも知れません。

テーマ

さて、本作品のテーマは「とける」。
なかなか掴みづらいテーマですが、脚本家さんも戸惑ったのか、何が「とける」かは作品によってバラバラ。
結果として良い感じにネタがばらけたように感じました。

分類、格付け、粗筋、一言

各話の概要は以下のとおりです。
例によって個人的に気に入ったかは様々ですが、「アイスが溶けて落ちる」と「鈴木くんはサナギ」はなかなか楽しく聴くことができました。

第1話「私の知らない私の声」

• 分類：幻想(日本/ライト)
• 格付：B-
• 作　：小峰貴之
• 主演：潘めぐみ
• とけるもの：魔法
• 概要：低くて可愛くない自分の声が嫌だ。だから人とも上手く話せない。魔法に頼っても変えたい。
• 一言：あの作品へのオマージュなのかな。専業声優（【推しの子】の有馬かな役）を主演起用したのは作品にあわせて。

第2話「アイスが溶けて落ちる」

• 分類：職業
• 格付：B+
• 作　：足立聡
• 主演：田中要次
• とけるもの：アイス
• 概要：あの脚本家（※記事末注）が教えているからこの学校に入った。なのに「俺は教えられないんだよ、わかんないから」。
• 一言：いちいち癇に障る対応をする田中要次さんが最高。そういえば第1話の回答が出ていた。「書くしかないよね」

第3話「引き籠り免許皆伝」

• 分類：スラップスティック
• 格付：C
• 作　：藤井香織
• 主演：尾美としのり
• とけるもの：どんな人生が正解か
• 概要：引きこもり続けて30年。ついに出番がやってきた。真のニートを目指す資格試験が始まるのだ。
• 一言：ドタバタだがあまり笑えない。人生の正解がわからず引きこもるなんて今更ナイーヴすぎる。

第4話「鈴木くんはサナギ」

• 分類：幻想(日本・シリアス)
• 格付：A-
• 作　：水城孝敬
• 主演：渡邉心結
• とけるもの：鈴木くん
• 概要：同級生の鈴木君は大きな音が苦手だ。今日もクラスの隅っこにいて時々ドロドロしている。
• 一言：今を肯定するありがちな結論が残念だが主演の2人（渡邉心結さん、櫻井優輝さん）の爽やかさが浮世離れした世界観を気持ちよく着地させている。

第5話「お地蔵さんのまにまに」

• 分類：タイムトラベル
• 格付：B-
• 作　：田窪泉
• 主演：平体まひろ
• とけるもの：？？（ネタバレ要素があるので）
• 概要：お地蔵さんに腰掛けたら江戸時代にタイムスリップ！栄養士の知識で少女を救えるか？
• 一言：軽いノリにイマイチ乗れなかった。ジャンルはタイムトラベルではないかも。でも職業とも違うし、ファンタジー？

テーマとの関連

「不思議屋」などにありがちな「ちょっと不思議」系のストーリーが多かったのですが、その中でも第4話は気持ちの良い作品でした。
「とける」の使い方は様々で、正面に据えた第4話のような例もあれば、オチに使った第5話、ストーリー上溶ける必要はないものの印象的に使われている第2話のような使い方もありました。
第1話と第3話はかなり無理矢理な「とける」ですが、要は作品が面白いかどうかが大事なので、縛りを無理矢理強調するより、上手くすり抜ける方向での処理もありだとは思います。

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◆ストーリーボックスシリーズの作品一覧
全5話で構成されるミニ・オムニバス作品の「ストーリーボックス・シリーズ」。
不思議屋シリーズ、ライフシリーズ、10人作家シリーズの系譜を受け継ぐ脚本家競作オムニバスの最新シリーズの一覧はこちらです。

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※2023/12/21追記
脚本の足立聡さんによればモデルがいるとのこと。

この前書いた「アイスが溶けて落ちる」は太田省吾先生がモデルでした。
滝本先輩と同じく感慨深いものがあります。メリークリスマス。 https://t.co/o73qiR2LpH

— 足立聡 (@ohayou55556) December 16, 2023