遺体を捜す人たち 作:足立聡(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : 遺体を捜す人たち
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A-
  • 分類 : 冒険(山岳海洋)
  • 初出 : 2022年11月26日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 足立聡
  • 演出 : 平竣輔
  • 主演 : 長友郁真

僕に登山ガイドは向いていないと思う。学生をガイドするとき、特にそれを感じる。
ましてや接客業とかはとても無理だ。
でも山に登る資金をためるためには働かないといけない。
そんな僕に1日3万円くれる仕事の話が舞い込んできた。
その会社、民間の山岳捜索会社に話を聞きに行くと責任者は語り始めた。
「遭難者が出ても警察や消防みたいに最初に連絡が来るわけじゃあない。それってどういうことかわかる?日数が経っているってことだよね。だから、見つけられないもしくは見つけられてもほとんどが遺体なんだ。」


本作品「遺体を捜す人たち」は民間の山岳遭難救助捜索活動を描いたオーディオドラマでNHK-FMのFMシアターで放送されました。

民間山岳捜索会社

近年の登山ブームで山岳遭難も増加傾向にあり、行方不明者の捜索には、山岳救助隊(消防)や山岳警備隊(警察)といった行政機関のほか、山岳会や地元の消防団といった民間組織が関わります。
本作品はそのうち民間の会社による活動を描いた作品です。
民間といってもボランティア団体ではなく家族からの依頼を受けお金を貰って活動します。
作中の言葉を借りると「お金儲けをするつもりはないけどお金はかかるから」ということです。

救出ではなく捜索

この種の作品としては、自身山に登っていた石塚真一さんの漫画作品「岳 みんなの山」が有名です。
「岳」の場合、主人公・島崎三歩が一種のスーパーマンであることもあり、多くの救助の場面が描かれる(もちろん助けられないことも多い)のですが、本作品はかなり違います。
実際の民間捜索会社の活動内容についても、本作のモデルとされる「山岳遭難ネットワーク」のホームページ(外部サイト)によると、例えば2022年の実績では「新規案件16件中、行政機関による発見5件、当チームによる発見10件、生存救出1件」となっており生存救出の割合がとても低いことがわかります。
そのため本作品は危険なクライミングを通じた感動的な「救出」を描くのではなく、淡々とした「捜索」が続く作品となっています。
そのため本ブログでの分類を「冒険(海洋山岳)」にすること自体が不自然なのですが、他に適当なジャンルもなく、あのアイキャッチ画像を使いたいというのもありまして…

ストーリーとしてはありがちだけど

またあくまでドラマですので、主人公・早川陽希の人生の問題を絡めた起(会社訪問)・承(初めての捜索)・転(特別な捜索)・結(その後)がはっきりしたわかりやすい作品となっていますが、ストーリー自体に特に意外性はありません。
ただ、遭難者の生への尊厳(行動や決断を否定しないこと?)を尊重したいというつくり手や関係者の態度は伝わってきます。
また、私自身は山へ登ることはないのですが、死に対して最大限の配慮ができる人が捜索してくれると思うとなぜかホッとする思いがありますし、(遭難した時は苦しかったと思いますが)高山の美しい自然のもとに眠っているということに慰めが得られるようにも感じました。

内向的な主人公

さて、本作品の主人公、早川陽希を演じるのは俳優の長友郁真さん。
青春アドベンチャー「<あの絵>のまえで」の第5話「聖夜」で遭難するクライマーを演じていたのはなんとも皮肉です。
ちなみにこの早川、人づきあいが苦手な性格であり、とても陽気で楽天的な「岳」の三歩とは対照的ですが、山岳ものの主人公としてはむしろこちらがデフォルト。
神々の山嶺」の羽生丈二や「孤高の人」の加藤文太郎(特に漫画版)はかなりの変人ですよね。

ちょっと脱線

ところで最後に脱線なのですが上記でも言及した「岳 みんなの山」の結末問題。
物議を醸しかねない終わり方なので賛否が別れるのは理解できるのですが、個人的には「三歩の最後の行動は今までの彼のしてきたことを台無しにする」という主張はいまひとつピンときません。
三歩は山で生還者にも死者にも平等に対しています。
生還者には「また山においでよ」、死者には「よく頑張った」。
誤解を恐れずに言えば山で死ぬことを否定していません。つまりは自己責任をサポートするのみ。
彼のレスキューは超人的なクライミング能力と楽天性があればこそですが、実際、かなり無理もしていましたし、彼が怪我すらほとんどしないのは幸運に支えられている面も大きかった。
結局、三歩は最後まで三歩として生きたということであり、良くも悪くもそれ以上ではないように感じます。


(補足)
本作品は、当ブログが年末に実施した2022年のFMシアターリスナー人気投票で第1位の得票(12票)を得ました。
本作品のほかに人気だった作品にご関心のある方は別記事をご参照ください。



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