警官嫌い 原作:エド・マクベイン(FMアドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 警官嫌い
  • 番組 : FMアドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 1984年7月9日~7月20日
  • 回数 : 全10回(各回10分)
  • 原作 : エド・マクベイン
  • 脚色 : 高谷信之
  • 演出 : 伊藤豊英、池松信介
  • 主演 : 山口崇

死体を仰向けにしてわかった。
こいつはマイクだ、マイケル・リアダン。
つまりガイシャは俺の同僚、87分署の刑事だったのだ。
マイクはなぜ殺されたのか。
通り魔に巻き込まれたのか?いや待ち伏せして後頭部を一発。
これは用意周到な犯行。怨恨の可能性も高い。
ヤツも刑事だ、心当たりはいくらでもあるだろう。
つまり、いつ俺の身に降りかかってもおかしくない事態といえる。
なんとも不愉快なことだ。
それに今年の夏は異常に暑い。
何もかもが不愉快なことばかりだ…



エド・マクベインといえば、アメリカを代表する推理小説家。
そしてその代表作といえば「87分署シリーズ」。
同シリーズは56作も執筆された人気シリーズという評価にとどまらず、「警察小説」というジャンルを確立した作品として知られています。
ちなみに「87分署シリーズ」は作品の一部が翻案されて使われることも多く、最も有名な使用例は第10作「キングの身代金」を下敷きにした黒澤明監督の「天国と地獄」(1963年)でしょう。
その「87分署シリーズ」の記念すべき第1作が「警官嫌い」、本作品の原作です。

警察ものはTVドラマ向き

一般的に「警察小説」は推理小説のサブジャンルとして扱われていますが、単に刑事が主役の推理小説かというと少し違い、組織人としての側面や、これと反射的に浮き彫りになる私人としての側面にも光が当てられるのが特徴です。
日本では古くは松本清張さんが書かれた小説の探偵役に刑事が多かったほか、広く言えば鬼平犯科帳や捕り物帖などの時代劇にもその要素がありましたが、やはり大沢在昌さんの「新宿鮫」シリーズのヒットによってよく知られるようになったジャンルと言えるでしょう。
この「警察小説」というジャンル、組織で動くという警察の構造上、作品には多数の人物が登場することが通常で、その面で小説よりTV向きのジャンルという評もあるようです。

今も昔も数少ない警察ラジオドラマ

では、ラジオドラマではどうかというと、やはり音だけで表現しないといけないラジオドラマは登場人物の識別の点でやや不利。
比較的ハードな作品が多かった「FMアドベンチャー」、「アドベンチャーロード」期でも警察小説風の作品は、本作品の他には「檻」(1988年)くらいでしょうか。
しかも「檻」もどちらかというハードボイルド寄り。
作品チョイスがややソフトな方向に振れた青春アドベンチャーでは25年以上の長い期間で「新宿鮫 氷舞」くらいです(しかもこれもハードボイルド系)。
そういう意味で本作品はNHK-FMのアドベンチャー系の帯ドラマ番組でほぼ唯一無二の作品。
毎回、番組名のコールに銃声が入るFMアドベンチャーを象徴するような作品とも言えます。

終盤まで物語は大きく動かず

さて、ストーリーは冒頭で紹介したとおり。
同僚の刑事が殺されたことに衝撃を受け、メンツをかけて捜査を開始する87分署の刑事たちですが、捜査は遅々として進まず。
というか、捜査方法にあまり工夫が見られない展開が続き、物語は淡々と進んでいき、第9話でようやく思い切った捜査手法がとられます。
そういう意味であまりミステリー的な趣向が凝らされた作品とは言いがたいのですが、警察小説の魅力は謎解きの爽快さではなく、職業人・生活人としての登場人物たちへの共感なのでしょうから、これで良いのかも知れません。
ちなみにこのラジオドラマ、なんと35年前の作品であり、今となっては完全な形で聴くことは困難です。
手元にある音源も第7回すべてと第9回の前半部分が欠落しています。
そしてこの2つの部分で丁度、物語が動くんだよなあ~。
なんとも残念です。
もし完全版をお聞かせ頂ける方がいらっしゃいましたら、是非、ご連絡ください。

主演は山口崇さん

さて、本作品の主人公であるスティーブ・キャレラ刑事を演じるのは俳優の山口崇さん。
約5年後の「暗殺のソロ」(1989年)でも主役(そちらは軍人)を演じられています。
その他の配役は、まずキャレラ刑事の恋人のテディ役は平淑恵さん、キャレラのバディのハンク・ブッシュ刑事役は草薙幸二郎さん、その妻のアリス・ブッシュ役は高畑淳子さん(「CF愚連隊」などが印象的)。
高畑淳子さんという有名な女優さんが配されている時点で、このアリスという役が結構重要だと言うことがばれてしまっています。
また「ルパン三世」の銭形警部役で有名な納谷悟朗さんが、キャレラにとって上司(おやじ)にあたるバーンズ警部を演じています。
いかにも、ですね。

もうひとつの87分署もの

さて、残念ながらFMシアターで87分署シリーズの続編がラジオドラマ化されることはありませんでした。
ただし、翌1985年、NHK-FMのもう一つの帯ドラマ番組であった「カフェテラスのふたり」にて「87分署のキャレラ」という作品が放送されています。
ただしこれは、エド・マクベイン研究者として知られる直井明さんの研究本を原作とする作品で、87分署シリーズ自体ではありません。

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