折紙宇宙船の伝説 原作:矢野徹(ふたりの部屋)

格付:B
  • 作品 : 折紙宇宙船の伝説
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : B+
  • 分類 : 幻想(日本/シリアス)
  • 初出 : 1982年11月29日~12月3日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 矢野徹
  • 脚色 : 加藤直
  • 音楽 : 芦田容子
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 高下初

太平洋戦争のさなか陸軍から派遣されて訪れた山奥の山村。
そこは日本の他のどこでも聞いたことがない不思議な昔話があふれる村だった。
不思議なのは昔話だけではない。
少女の心のまま体の発達も止めた女性。
いつまでも飛び続ける紙飛行機。
数年に一度、村に現れる死者の国。
からくりのコウノトリで空に飛び立つカラクリ師…
遠い昔、あの山の奥に、どこか遠い星の宇宙船か墜落したのではないか。
そんなことを想像させられる。
そこは、この世の現実の姿とかけ離れているかのような山里だった。



矢野徹(やの・てつ)さんといえば、日本のSF黎明期を支えた方のひとり。
冒険小説「カムイの剣」等で作家として知られていますが、同時に1960年代から積極的に海外のSF小説を日本語に翻訳したことでも知られており、訳書の数は著書の数を大きくうわ回ります。
当ブログではすでにFMアドベンチャーで放送された「カムイの剣」とアドベンチャーロードで放送された「カムイの剣2」を紹介済みですが、今回は「ふたりの部屋」で放送された矢野さんのもう一つの代表作「折紙宇宙船の伝説」のラジオドラマをご紹介します。
それにしてもNHK-FMの帯ドラマ番組「青春アドベンチャー」、「サウンド夢工房」、「アドベンチャーロード」、「FMアドベンチャー」、「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」のうち3番組で原作が採用されたのは矢野徹さんくらいかも知れません。
まあ「FMアドベンチャー」と「サウンド夢工房」以外の4番組で採用されている新井素子さんというもっとすごい例もあるのですが。

土俗的な風俗…淫靡な雰囲気

さて、本作品はNHK松本局が制作したラジオドラマです。
作品の舞台は明示はされていませんが、矢野さんの故郷でもある愛媛県のどこかなのでしょう(作中で近くの街として善通寺の地名が出てくる)。
基本的には土俗的な雰囲気の漂う山奥の山村を舞台に、ある男が巻き込まれる不思議な事件を描いています。
回によって、男が村に派遣された太平洋戦争中の出来事の回想だったり、終戦後10年以上経過した後に村を再訪した際の出来事だったりするのですが、いずれも通常の計りを超えた逸脱した村の常識、出来事に巻き込まれていきます。
逸脱と言えば作品全般にちりばめられたエロティックな出来事も特徴的。
そもそも古い因習が残る山奥の村、というだけで淫靡な連想も湧こうというものですが、本作品は第1話から、その雰囲気が濃厚。
しかも4話などでは、*ん*という言葉が連発されるなどかなり露骨な描写です。
ホントに連発なんですよ、ち*こ。これいいんですかね、NHKさん。

各回のタイトル

ちなみに本作品の各回のタイトルは以下のとおりです(放送を聞き取っただけなので正しい漢字かは不明)。

  1. お仙の話
  2. 刺青の女の話
  3. 久遠の里
  4. きっかい杢兵衛
  5. 知らぬ衛門村ふたたび

原作が良く分からない

…とここまで作品紹介をしてきたのですが、実はこのラジオドラマは原作との関係が良く分からない作品です。
ネットで調べると本作品は「文庫本なら厚めの一冊分くらい」(参考:外部リンク)の分量の作品で、特に後半は村で生まれた超能力持つ青年が都会で大活躍する作品らしい。
慌てて近所の図書館で原作を探してきたのですが、「日本SF作家クラブ 日本SF短編50Ⅱ」や「70年代日本SFベスト集成5」に収められている30~40ページ程度の短編しか見つかりませんでした。
これによれば、超能力青年はお仙の息子・衛門で読心能力者らしいのですが、少なくともこの短編で特に大活躍するようではありません。
この短編は紹介用の抄訳なのか、プロトタイプ版の短編なのか、その辺すら良く分かりませんでした。
この辺は電子書籍版を見るしかないのかな…

「ラジオ図書館」版もある

ちなみに、「折り紙宇宙船の伝説」にはこのNHK-FM版とは別にTBSラジオの「ラジオ図書館」で1981年11月に放送されたラジオドラマもあるようです。
そちらは鈴木清順さん脚色で、新井純さん、佐藤博さんなどが出演とのこと。
こちらは原作準拠なのでしょうか。
一度聞いてみたいものです。

出演者紹介

さて、本作品の出演者は高下初(たかした・はじめ)さんと田島令子さんのおふたり。
高下さんは来歴がよくわからないのですが、松山局が制作したFMシアター「同行二人」、「共通一次のルート・ザ・ループ」に出演されていますし、作中でも愛媛にお詳しいような発言がありましたので、恐らく地元の方又は地元出身の方なのだとおもいます。
一方の田島令子さんはFMアドベンチャー「血と黄金」で主演されているほか、すでに紹介済みの作品では「無頼船長トラップ」や「マージナル」にも出演されています。



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