- 作品 : コクハラ
- 番組 : FMシアター
- 格付 : AA-
- 分類 : スラップスティック
- 初出 : 2023年4月8日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 小峰孝之
- 音楽 : サキタハジメ
- 演出 : 松浦禎久
- 主演 : 篠山輝信
水島さんはボクの初めての部下だ。
仕事はまじめで丁寧。ミスをしてもちゃんと謝ることができる。
ボクの意見に流されずきちんと自分の意見も持っているし、相手へのフォローも忘れない。
一言で言って「可愛い部下」だ。可愛い…
可愛い?
あれ?俺、さっきから「可愛い」しか考えてなくないか?
うすうす感じてたけど、これ、そうだよな?やっぱ、そうだよな…
パワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラ、アルハラ、カスハラ、アカハラ…
ハラハラし通しの今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。
アルコールが強くなく、体育会系でもない私としてはずいぶん過ごしやすい世の中になったと思っていますが、そうであってもさすがにハラハラが多すぎて戸惑いも多い。
そんなハラスメント時代のオーディオドラマがこの「コクハラ」です。
コクハラとは
コクハラ(告白ハラスメント)という言葉は実際に存在するそうで、脈のない状態で告白することなのだそうです。
そんなことされたことないなあ、という悲しい感想は置いておいて、確かに告白されることが多い方だとお断りするの労力も相当なものなのでしょう。
あくまで想像の世界なのですが… また悲しい話になってきたので先に進めましょう。
12歳違いの男女
本作の主人公・新井とヒロインの水島はちょうど干支が一回り(12歳)違う上司と部下。
上司と部下という、ただでさえパワハラを気にしないといけないセンシティブな関係なのに、新井は自分の好意に気が付いてしまいます。
ハラスメント問題は現代の職場におけるリスクマネジメント上の重要課題です。
当然、恋心と職務への責任感とに引き裂かれる新井の苦悩が描かれるのだと思ったのですが…これが思ったほどシリアスな話ではないのです。
シリアスな話じゃないの?
まずこれがいい。
もちろんテーマは極めて真面目ではあるのですが、随所に突っ込みが入る脚本のほか、音響効果や音楽がどこかとぼけていることもあり、ほのぼのとした雰囲気で作品は進捗していきます。
コメディでも行けた?
特に小峰貴之さんの脚本がいい!
今回はほのぼの寄りのスラップスティックな形で演出されており、これはこれで良いのですが、もっとコメディよりの作品作りもできた脚本だと思います。
ハラスメントキーホルダーなどの小物も効いていましたし。
あくまで素人の感想ですが、中盤まではもっと弾けた演出をして、最後にしんみりしめるような形もありだったように思います。
まあそれだと空回りしちゃっていたかもしれないのですが。
5人の会話劇
あと出演陣もいいですよね。
出演者は篠山輝信さん、吉本実憂さん、野間口徹さん、七味まゆ味さん、名村辰さん、山崎和佳奈さんの6名なのですが、このうち山崎和佳奈さんはハラスメントキーホルダーの声だけなので、掛け合いは実質的に5人だけ。
それぞれに明確な役割があり不要な役は一つもない中、声と演技が個性的でオーディオドラマとして聞き分けがしやすいのは、キャスティングをした方(演出の松浦禎久さん?)と出演者の皆さんの演技の勝利でしょう。
まあ実際可愛いよね
出演者の中で、個人的に好印象だった方を挙げるとすれば吉本美憂さん。
「優しい死神の飼い方」でもそうでしたが、吉本美憂さんの声と演技、可愛いですよね、実際。
また野間口徹さんが、コメディ作品だった「あたふたオペラ 『からめん』」の時以上に(おそらくかなり意識的に)コミカルな演技をされているのも印象的。
この辺ももっとコメディ全振りのバージョンも聞きたかったと思わせられた原因だったと思います。
脚本のポテンシャルへの評価も含めて今回の格付けはしてみました。
最後に
で、まあ結局コクハラについてはどうしたらよいのでしょうかね。
作品内での結論は聞いてのお楽しみなのですが、好きな相手に不快になってほしいはずがないので、結局は慎重に様子見するしかないのかな。
考えてみればハラスメントが問題になる以前の当たり前の話なのかもしれません。
【2023年リスナー人気投票上位作品】
当ブログ主催の2023年FMシアター/特集オーディオドラマ・人気アンケートで、当作品が第1位の得票を得ました(ロゼットの朝、クジラの歌を聴かせてあげると同率首位)。
詳しくは別記事をご参照ください。
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