リテイク・シックスティーン 原作:豊島ミホ(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : リテイク・シックスティーン
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2013年8月26日~9月13日
  • 回数 : 全15回(各回15分)
  • 原作 : 豊島ミホ
  • 脚色 : 中澤香織
  • 演出 : 吉田努
  • 演出 : 吉永淳

高校に入学したばかりの小峰沙織は、クラスメイトになった貫井孝子から衝撃の告白を受ける。
実は孝子は、27歳の未来から過去に戻ってきたタイムトラベラーで、人生をやり直している最中だというのだ。
何も持っていないニートになってしまった自分の原点が、イケていなかった高校生活にあると確信している孝子は、より良い人生を送るために積極的に高校生活をエンジョイし始める。
何の証拠もない、孝子の“未来ネタ”に半信半疑だった沙織だが、全力で人生の再設計を図る孝子につられるように、沙織自身の考え方も少しずつ変わっていく。



豊島ミホさん原作の小説のラジオドラマ化作品です。
青春アドベンチャー作品の原作者の中には、ベストセラー作家もいれば、「仮想の騎士」の斉藤直子さんや「二の悲劇」の法月綸太郎さんのように寡作な作家さんもいます。
本作品の原作者の豊島ミホさんもどちらかという寡作な方、というか現在は小説家として本格的な活動をされておらず、漫画家として(!)、イラストコラム等を中心に活動されています。
青春小説と少女漫画の二足のわらじという点では、サウンド夢工房時代に「夢みるように愛したい」と「天使の降る夜」の2作がラジオドラマ化された、折原みとさんを思い出しますね。

番組ファンが原作者になった

ところで、豊島さんの近況はブログで知ることができるのですが、本作品のラジオドラマ化を受けて書かれた豊島さんのブログを読むと、なんと豊島さん自身、若いころは青春アドベンチャーの大変なファンであったとか。
もちろん自分の作品が青春アドベンチャー枠でラジオドラマ化されたことを、とても喜んでおり、それを読んでいると、こちらまで嬉しくなってしまいます。
本作品の格付けが、そういう意味でちょっと甘くなってしまうのは仕方がないことでしょう。
だって、“こちら側”だった人が原作者になったのですよ。
嬉しいじゃないですか。

(豊島さんのブログの青春アドベンチャー関連の記事・外部リンク)
http://fengdao.exblog.jp/20683311/
http://fengdao.exblog.jp/20793311/
http://fengdao.exblog.jp/20826004/
http://fengdao.exblog.jp/20887988/
http://fengdao.exblog.jp/20898056/
http://fengdao.exblog.jp/20925308/
http://fengdao.exblog.jp/20979706/
http://fengdao.exblog.jp/21011891/

20年も経つと…

そういえば同じ2013年に放送された「世界の終りの魔法使い」の原作者の西島大介さんや1年前の2012年に放送された「見かけの二重星」の原作者のつばなさん、それに後日の2017年に放送された「青春離婚」の紅玉いづきさんも、青春アドベンチャーのファンだったとか。
青春アドベンチャーの歴史も、もう20年になります。
これを聴いて育った世代が、原作者として登場してくる。
それだけの歴史が積み重ねられたということなのでしょう。

懐かしいタイトルが出てくる

ちなみに、西島さんがブログの中で思い出を語っているのは「サラマンダー殲滅」ですが、豊島さんのブログで写真に写り込んでいるのは「魔女たちのたそがれ」。
原作者さんが他の青春アドベンチャーのことを書いている文章を読むのは不思議な気分です。

同年代ではないからこそ

さて、本作品についてですが、何というか「夏への扉」の時も感じたのですが、こういう作品を、実際の夏の終りにやるのは反則ですよ、スタッフのみなさま!
豊島さんのブログにも書いてありますが、大人がこの作品を聴くと、沙織目線ではなく孝子目線で聴いてしまうと思います。
夏の終わり。もう戻らない季節。
私自身、すっかり自分の人生の“あの季節”から遠ざかってしまっており、そういうものが胸に痛すぎます。
本作品の場合、孝子の言動に共感できるかという問題はあるのですが、「ピエタ」や「ふたり」を聴いた時と似た感じのセンチメンタルな気分になってしまったのは事実でした。
まあ、実は、そもそも現実の問題として、8月に仕事をさぼり気味だったせいで仕事上の課題が山積でとっても憂鬱なんですよね!やれやれ。

リテイクしても大きな事件は起きない

まあ、それはともかく、自分の人生をやり直す、というテーマは、既に紹介済みの「リプレイ」と同じですが、「リプレイ」で人生を繰り返すのが主人公自身であるのに対して、本作品でリプレイするのは主人公の友人である孝子。
しかも、孝子は、未来の記憶を利用して歴史改変とか金儲けといった大それた事を企むことは一切ありません。
そのため、孝子が本当に人生をやり直しているのか、それとも虚言癖があるだけなのか、よくわからない状態でストーリーは進行します。
ストーリー上も、タイムトラベル(厳密には「タイムリープ」)という状況を生かしたトリックとか、サスペンスとかは一切ありません。

タイムトラべル要素

しかし、それではタイムトラベル要素がストーリーに一切影響を与えていないかと言えば、さにあらず。
ときどき孝子がみせる暗い表情や、何かを思い詰めたような言動に、タイムトラベル設定(というかタイムトラベルしたと孝子が言っているという設定)は明確に生かされています。
この辺は現在進行形の青春まっただ中の方には、わかりづらいのかも知れず、やはり本作品はもう少し上の世代にこそ共感を得られそうな気がします。

大丈夫か、孝子

それにしても孝子の間違いは、自分の人生が上手くいかない理由を「高校生活がイケていなかったから」と思い込んでしまったことにある気がしてなりません。
もっというと、(本当に孝子がタイムトラベルしているのだとしたら)孝子は高校生の精神年齢のまま27歳になってしまった気がします。
実際、作品中の孝子の台詞は、彼女が高校生であるならともかく、本当に27歳であるならばちょっと考えられないくらい幼いものです。

孝子はリテイクできるのか

屋上デモクラシー」や「バッテリー」、「夢みるように愛したい」のように、中高生の言動がイタいは全然問題ないことだと思いますが、本作品では主人公達4人グループの中で、自称27歳の孝子の言動が一番イタいのです。
大人だって、というか大人だからこそ、自分のダメさ加減に嫌になることは、多々あるのですが、実際にはリテイクなんてできないわけで、それは心にしまって何とかやっていくしかない訳です。
本作品を通じて、孝子がどういう風に考えるようになっていくのか、それは聴いてのお楽しみということにしましょう。

もう少し劇的でも

最初にも書きましたが、念のため言っておくと、あくまで本作品は自分のあるいは友人のリテイクを通じて、自分の生き方を探していく話であって、リテイクによって大事件が起こる話ではありません。
その辺を期待していると、最後まで肩すかしだと思います。
でもまあ、折角のタイムトラベル設定なので、最後くらいもう少し劇的でもよかったかな。
そんな気持ちも多少あったりはします。

主役4人グループ

さて、出演は、主人公の沙織を女優・ファッションモデルの吉永淳さん、自称人生をやり直し中の孝子をアイドル・女優の里久鳴祐果さんが演じています。
20歳と24歳の(青春アドベンチャーとしては)フレッシュなコンビです。
また、二人の同級生(男友達)である大海(おおうみ)君と村山君に、中村倫也さん(26歳、「アグリーガール」で準主演)と山田健太さん(26歳)。
ストーリーはこの4人を軸に進むのですが、この20代の4人が実に自然に楽しそうに高校生を演じているのが好印象です。

中澤香織さんの今後に期待

最後に脚色を担当した中澤香織さんは恐らく本作品が青春アドベンチャーの長編初担当だと思います。
奇をてらった脚本ではありませんが、とても素直にまとまっていると感じました。
今後に期待ですね。


(補足)
本作品は、当ブログが年末に実施した2018年のリスナー人気投票で第2位の得票を得ました。
本作品のほかに人気だった作品にご関心のある方は別記事をご参照ください。


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