神々の山嶺 原作:夢枕獏(特集オーディオドラマ)
チベットではサガルマータ、ネパールではチョモランマ、そして英語名はエベレスト。1993年6月、この神々の名前を持つ山の頂を目指した日本の登山隊を待っていたのは、2名の死者をだしたうえので敗退という最悪の結果であった。登山隊に参加したカメラマン深町誠は、失意の中、それでも支払わなければならない登山の借金の返済のため、カトマンズに残って写真を撮り続けていた。そして現地人の店先で売られていた、ある古いカメラに気がつく。それは1924年に、初のエベレスト登頂を目指して帰らなかった名登山家ジョージ・マロリーが、エベレストに持って行ったものと同形式のカメラであった。それが本物のマロリーのカメラであれば、エベレスト登山史上最大の謎 -マロリーはエベレスト初登頂に成功していたのか- が判明するかもしれない。興奮してカメラを持ち帰った深町だが、彼の目の前に羽生丈二(はぶ・じょうじ)が現れることによってミステリーは一層深まっていく。羽生丈二。かつて日本のトップクライマーでありながら日本山岳界から忽然と姿を消した異端の登山家。マロリーはエベレストに登頂していたのか、そして、羽生丈二はこのカメラとどういう関係があるのか。ふたつのミステリーを追う深町の旅が始まった。