ブラックローズ 作:吉田小夏(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : ブラックローズ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 幻想(日本/シリアス)
  • 初出 : 2026年1月26日~2月6日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 吉田小夏
  • 音楽 : 川田瑠夏
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 上口耕平

闇市はさまざまな人々を飲み込み、今日もけだるさと活気の不思議な混交に満ちていた。それはそのころの日本そのものといっていい。
松島六郎は「カストリ雑誌」といわれる三文雑誌の記者として糊口を凌ぐ。
しかし心は空虚なままだった。
行方不明となった婚約者、南方で死んだ親友。
空襲で生き別れるときに彼女に言われたことが、戦地に旅立った友に言われたことが、いまでも心から離れない。
そのころ闇市に、あるうわさが広がった。
ブラックローズ。
彼は人々の影を求める。そして彼に会いたいと望んだ人間の前だけにあられるという。


本作品「ブラックローズ」は吉田小夏さんにより青春アドベンチャーで3作品目のオリジナル脚本の作品です。
ちなみに1作品目は大正時代の日本を舞台にした「ヨコハマ・ジャスミンホテル」、2作品は17世紀の東欧を舞台にした「青髭公の五番目の花嫁」です。
本作品は「ヨコハマ・ジャスミンホテル」に近い雰囲気の作品で、「ヨコハマ・ジャスミンホテル」が関東大震災後の混乱期を舞台にしているのと対になっているかのように本作品は太平洋戦争後の世相を背景としています。

ジャンル分けが難しい

ストーリーの出発点は冒頭の粗筋のとおりで、戦争で(というより戦争にからんだ人間関係で)心に傷を負った青年が、戦後をたくましく生きる人々やブラックローズといわれる幻想的な存在との関わり合いの中で、過去に折り合いをつけ新たな人生を始めるまでを描いています。
ブラックローズという不思議な存在が狂言回しになるので本ブログでは一応幻想(ファンタジー)に分類したのでが、彼は登場人物たちの妄想上の存在なのか実在?しているのかいまいちはっきりせず、ファンタジー要素は薄いです。

本来あまり望んではいないジャンル

というか、過去にとらわれたうじうじしたインテリが自家発電で悩んでいるだけ作品なので、ファンタジーらしい爽快感はありません。
大体、舞台が終戦直後というだけでどうしてもうじうじした話になりますよね。
よってブログ主の感性的にはあまり期待はしていなかったのですが…
悪くないです。やはりストーリーは概ね予想通りですっきりしないのですが、出演者の演技がなんだか沁みる。

胡散臭い今井朋彦さんが最高

まず、主人公のまわりで、そのイジイジした性格をつついて回るような、松島の親友・白鳥菊次郎役の三浦涼介さんとブラックローズ役の今井朋彦さんがいい。
今井さんは青春アドベンチャーを長年支えてきた名優で「尾張春風伝」や「白狐魔記」、「風神秘抄」のときのような爽やかな役もよいのですが、「影を買う」という不穏な役もいいですね。

心に傷を負った三浦涼介さんも最高

そして三浦涼介さんは「海の綺士団 -Umi No Kishidan-」のドラグート役が印象的ですが、今回の作品に寄せたコメントによればその時は不本意なコンディションだったとのこと。
とてもそうは思わなかったのですが、本作がよいのも確か。
聞いていてキリキリと胃が痛くなるような表現が素敵です。
正直、中川晃教さんが青春アドベンチャーに出始めたころのことを思い出します。
これからに期待大です。

『ブラックローズ』 三浦涼介さん - 青春アドベンチャー
諸君、悩み多き日常から心を解放してみないか?きっと君の知らない無限の世界が広がっているのがわかるだろう。さぁ、目を閉じよ!耳をすませ!毎夜つかの間のスペクタクル、スピーディでスリリングな冒険の世界へ、ようこそ!ウィークデーの夜、5回・10回...

ふたりの暗さに染まる

このふたりの演技に引っ張られたのか主人公・松島を演じる上口耕平さんの暗い演技も印象的。
正直「太陽の城 月の砦」のユーセフが爽やかボーイだったのでその印象が強かったんですよね。
でもこっちの方がずっといいと思いました。

「影をなくした男」放送から約2年

そうそう「影を買う」という点について本作にはモチーフになった作品があることには言及せざるを得ません。
それはシャミッソーによる「ペーター・シュレミールの不思議な物語」。
なんと青春アドベンチャーでは「影をなくした男」というタイトルで2024年にオーディオドラマ化されている作品です。
人工心臓」や「谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド」なども似た趣向の作品ですが、「本歌取り」のような形でオリジナル脚本を作るのは、いかにも劇作家さんの仕事らしい面白い試みです。
正直、文学の知識が必要という点で少しスノッブな感じも受けるのですが、青春アドベンチャーの場合、原典もオーディオドラマ化済み、という状況ですので、気になる人はそちらを聞いて下さい、という意味では親切設計ではあります。

結局いつもの結論へ

…?「そちらを聞いて下さい」?
あっ!聞けないじゃないですか、青春アドベンチャーって過去作を聞く手段がないですから。
やはり配信は必要ですよ、NHKのみなさま。
是非是非、過去作をいつでも聞けるように配信をお願い致します。
先日行った2025年のアンケートでは仮に配信があればどのくらいお金を出せそうかも聞いています。
是非参考にしてください。
よろしくお願いいたします。

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