NHK-FMのオーディオドラマにおける「原作」と「作」の違い

何でもベストテン

特集【何でもベストテン④】「原作」と「作」について

前回の「最多放送回数編」からしばらく時間が空いてしまいました。
久しぶりの何でもベストテンです。
今回は藤井青銅さん特集の一環としてオリジナル作品についてのランキングです。
でも、実はランキングにベストテンというほどの厚みがなく、看板に偽りありなのです。
すみません。

「作」=オリジナル脚本

さて、今回取り上げるのは「作」の作品です。
青春アドベンチャーのスタッフ紹介を聞いていると、「原作」と「脚色」のスタッフが読み上げられる場合と、「作」のスタッフのみが読み上げられる場合があります。
一般的に前者は小説などの原作がある作品、後者はオリジナル脚本の作品のようです。
ただし、例えば藤井青銅さんの一部の作品などはラジオドラマ化される前に原作小説が存在したものの、原作者自身がラジオドラマの脚本も書いている(原作者=脚本家)ため「作」表記とされているようです。

藤井青銅さんは殿堂入り

この「作」表記の作品が多い脚本家さんをランキングしようかと思ったのですが、あまりに藤井青銅さんの担当作品数が他を引き離しているため、ここでは藤井青銅さんを除いたランキングとさせていただきました。
藤井青銅さんの作品については、こちらこちらの一覧をご覧ください。
ただし、藤井青銅さん(殿堂入り!)を除いてしまうと3作品以上オリジナル脚本をつくられている方は並木陽さん、樋口ミユさん、今城文恵さんのお三方だけ、2作品の脚本を担当されている方も数えるほどしかいません。
もちろん短編集の1話だけ担当を入れればもう少し差がつくと思いますが、ここはこれらの方々を一覧で紹介して今回のランキングとしたいと思います。
(※)番組名の略称は、SA=青春アドベンチャー、SY=サウンド夢工房、AR=アドベンチャーロードです。

オリジナル脚本作家ランキング

1位 (7作品)

並木陽さん

2位 (4作品)

○樋口ミユさん(※1)

3位 (3作品)

○今城文恵さん

4位タイ (2作品)

○佐々木守さん

  • ステレオ歌謡ファンタジー黒いドレスの女(AR・1985年)
  • イソップ紅白夢合戦(SY・1990年)

○綾瀬麦彦さん


○北野勇作さん


○ウォーリー木下さん


○伊佐治弥生さん


○オカモト國ヒコさん


○鹿目由紀さん


○東憲司さん


○まきりかさん


○今井雅子さん


○吉田小夏さん


○萩田頌豊与さん

補足

この他、完全オリジナル「なにわ純情ナイトメア」と原案付き「負け犬たちのミッドナイト・バス」の蔭岡翔さん、「タイムスリップ源平合戦」以降のタイムスリップ4作品が原案付きながらほぼオリジナルの山本雄史さんも上記の方々に準じる位置づけだと思います。
なお、上記の方々のうち北野勇作さんは原作者として1作品「昔、火星のあった場所」が、並木陽さんも原作者として1作品「斜陽の国のルスダン」が採用されています。

原作付き作品が有利な点

原作付きの作品は原作者の力を借りられるため良質な作品になる可能性も高いのですが、逆にもともとラジオドラマ向けに作られているわけではないですし、脚本家さんの原作者さんへの遠慮があるからかどうかはわかりませんが、原作以上の脚本にするのは難しい面もあるのと思います。
もちろん、原作者自ら替え歌を大量に盛り込んだ「愛と青春のサンバイマン」(藤井青銅さん脚色)や、女性出演陣と渡辺いっけいさんの会話に的を絞った「五番目のサリー」(じんのひろあきさん脚色)、一部の登場人物の設定を大幅に改変した「妖精作戦」(関澄一輝さん脚色)のように工夫されているなあ、と感じる脚本もあります。

オリジナル作品が有利な点

一方、オリジナル作品は脚本家さんの腕次第で、最初からラジオドラマにあった脚本を作ることが可能です。
最近の作品では「屋上デモクラシー」の第8回(高羽彩さん作)がほぼ全編インタビューへの回答という形式を取っているのは面白い試みだと思います。
原作作品にしろ、オリジナル作品にしろ、脚本家さんの腕が重要というのはラジオドラマの共通の特徴だと感じます。

最後に再び藤井青銅さん

なお、冒頭にも書きましたが、オリジナル作品の中で圧倒的な割合を占めるのは藤井青銅さんの作品です。
年末恒例の干支シリーズなどを担当されていたため1991年から2010年まで(2006年を除き)毎年、藤井さん作品が制作されていたことになります。
その他、サウンド夢工房時代の奇作「愛と青春のサンバイマン」やオリジナル脚本で唯一の続編が放送された「ゴー・ゴー!チキンズ」()シリーズなどの作家さんであり、まさに青春アドベンチャーの看板オリジナル脚本家
もはや数を数えてランキングするまでもなく、第1位であることは明確でした。


次の特集は「お勧め作品:妖精作戦シリーズ編」です。
次の何でもベストテンは「最多原作者」シリーズです。


■なんでもベストテン
出演者、作品ジャンル、音楽、PV…
青春アドベンチャー又は本ブログの記事に関して、様々な角度からベストテンを調べてみました。
その一覧はこちらからご覧ください。


※補足※
以下の表はこの記事を最初にアップした2012年時点で、原作表記のものと作表記の作品数を年ごとにとりまとめたものです。
ただその後10年を経て、オリジナル脚本の増加とともに表としてはあまり意味がないものになったため、補足欄に移送して、参考として残しておきます。
なお、この表は前回の何でもベストテンと同じように、青春アドベンチャー・サウンド夢工房・アドベンチャーロードの作品を集計しており、10分番組だった「カフェテラスの二人」や、昔過ぎて調べるのが困難な「二人の部屋」および「FMアドベンチャー」の作品は除外しています。

初出作品数 原作作品数 原案作品数 「作」作品数
合計 うち競作 うち藤井 うちその他
1985 17 16 0 1 0 0 1
1986 17 16 0 1 0 0 1
1987 23 23 0 0 0 0 0
1988 20 19 0 1 0 0 1
1989 25 23 0 2 0 0 2
1990 28 21 0 7 0 0 7
1991 27 16 0 11 0 4 7
1992 22 14 0 8 0 2 6
1993 19 16 0 3 0 1 2
1994 17 15 0 2 0 2 0
1995 20 16 0 4 0 2 2
1996 17 14 0 3 1 2 0
1997 21 17 0 4 1 2 1
1998 18 12 0 6 1 2 3
1999 16 12 0 4 2 2 0
2000 13 9 0 4 2 2 0
2001 15 10 0 5 2 2 1
2002 15 8 0 7 2 1 4
2003 12 8 0 4 3 1 0
2004 9 8 0 1 0 1 0
2005 9 5 1 3 2 1 0
2006 18 15 1 2 1 0 1
2007 15 8 1 6 3 1 2
2008 8 6 0 2 0 2 0
2009 10 8 0 2 0 2 0
2010 11 8 0 3 2 1 0
2011 17 12 1 4 3 0 1
2012 13 10 0 3 1 0 2
合計 472 366 4 103 26 32 45
割合 100.0% 77.3% 0.8% 21.8% 5.5% 6.8% 9.5%

大まかに見るとアドベンチャーロード時代(~1990年3月)は「作」作品が少なく、サウンド夢工房時代(1990年4月~1992年3月)に急増します。
その後、青春アドベンチャー時代(1992年4月~)は徐々に減少していきますが、なぜか2002年・2007年のように突発的に半分近くが「作」作品の年もあります。
合計で見ると全体の約77%を原作作品が占め、「作」作品は約22%になります。
ちなみにわずかにある「原案」作品はタイムスリップシリーズの一部のみが該当します。
「作」作品が約22%を占めるというと結構ありそうですが、22%のうち5.5%は多数の脚本家さんが1話ごとに競作する短編集です。
具体的にはライフシリーズ不思議屋シリーズなどが該当します。

※2013/8/28追記
本記事で「作」扱いしている作品のうち一部は、この記事のアップ後に、ラジオドラマ以前に原作小説があることがわかりました。
具体的には以下の記事ですが、現在、これらの作品は本ブログでの扱いを「原作」扱いに変更してます。
本来遡って、上記の表も修正すべきですが、再集計が大変なのと、今後も同様のことが判明する可能性もあることから、特に修正していません。
ご容赦ください。

※2013/8/31追記
「夢のたてがみ」(サウンド夢工房)も原作扱いに変更したが表は修正せず。

※2013/12/23追記
以上のものとは逆に、「21世紀のユリシーズ」はこの特集では「原作あり」扱いにしていたのですがオリジナルだったようです。
これも本記事の集計は変更していません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました