太陽の城 月の砦 作:中村小夜(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 太陽の城 月の砦
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 歴史時代(海外)
  • 初出 : 2024年2月26日~3月8日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 中村小夜
  • 音楽 : 日高哲英
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 華優希

12世紀半ば。地中海の東に位置するシリアの地。
十字軍の遠征からすでに半世紀が経過していたが、キリスト教徒のエルサレム王国とイスラム教徒の諸王国に分裂し、まさに乱世の状況にあった。
そんな中、シリア北部の町アレッポにひとりの英雄が現れる。
ザンギー朝第2代の君主マフムード。
彼は、隣国ダマスカスからアーミナを娶る一方、宿将シール・クーフとその甥ユーセフをエジプトに送りその政治に介入。着々と勢力圏を広げていた。
これは「ダマスカスの花嫁」と呼ばれた女と「信仰の光」、「信教の誉れ」と呼ばれたふたりの男。3人の男女の絡み合った運命の物語である。


本作品「太陽の城 月の砦」は小説家・中村小夜さんによるオリジナル脚本のラジオドラマです。
中村小夜さんの作品は2023年に「昼も夜も彷徨え」が並木陽さんの脚色でオーディオドラマ化されていますが、本作品は青春アドベンチャーのために書き下ろされたオリジナルの脚本です。

小説原作とオリジナル

小説のオーディオドラマ化と比較して最初から枠に合わせて設計される点でオリジナルには優位性があります。
ただ、小説家と脚本家とで必要とされる才能や技術は異なると思います。
「昼も夜も彷徨え」で脚色を担当された並木陽さんは青春アドベンチャーで、

  1. 執筆した原作小説が採用される(斜陽の国のルスダン
  2. オリジナル脚本を執筆(暁のハルモニア
  3. 他の方の小説を脚色(ハプスブルクの宝剣

という流れをだどり、特に3で予想以上の才能を発揮されたのですが、中村小夜さんもこの流れに載るのでしょうか。

舞台は12世紀のシリア…!?

さて、本作品は12世紀の中東が舞台の作品です。
物語の雰囲気を知るためにはまず中村小夜さんのnoteのアレッポの記事をご覧いただくとよいと思います。
雰囲気出ますよね。


ちなみに時代的には、前作「昼も夜も彷徨え」と比較すると少し前からほぼ同時代、並木陽さんの「悠久のアンダルス」もほぼ同時代、「紺碧のアルカディア」は少し後の時代が舞台です。
地理的にみると「昼も夜も彷徨え」の後半とほぼ同じ、「悠久のアンダルス」の舞台アンダルシアからは遥か東方、「紺碧のアルカディア」の目的地であるコンスタンチノープルよりは南東方といったところでしょうか。
…わかりづらいですよね。
この辺は一度整理しないといけないですね…

重複する登場人物

何はともあれ舞台的に最も類似性があるのはやはり「昼も夜も彷徨え」。
実は登場人物も一部重複しています。
藤岡正明さん演じるファーディルはのちに立派になった姿が「昼も夜も彷徨え」で描かれていますし、なにより上口耕平さん演じるユーセフは歴史上、圧倒的に有名な別の名前で知られており、後半ではそれが明示されます。
この辺はバレバレではあるのです公式ホームページでは明示されていませんので一応伏せておきます。

「昼も夜も彷徨え」との相違

このように本作品も「昼も夜も彷徨え」も歴史上有名なキャラクターが多数登場します。
ただ、作品の内容、雰囲気はかなり違います。
というのも「昼も夜も彷徨え」の主人公モーセは歴史上とても有名な人物ではありますが、それは宗教史、哲学史の面であり、その結果「歴史もの」という言葉で想定される内容よりはかなり静的、内省的な内容でした。

良くも悪くも普通の歴史もの

それこそがわたしが「昼も夜も彷徨え」を気に入った点だったのですが、それに対して今作の主人公達は政治史、軍事史の面で有名な人物であり、その結果、本作品もいわゆるドンパチが多めで、ロマンスもわかり安いものになり、良くも悪くも「普通の歴史もの」です。
これは青春アドベンチャーという番組の傾向を踏まえたものなのかもしれませんが、それがよかったのかどうか…
戦争もの、謀略ものとしてみると、エジプトの宰相が自らなんども敵地に潜入してみたり、そんなアクロバティックなことがなぜできたかを問われても「まあ色々と…」であっさり済ませちゃったり、誠実なことで有名なあの方の歴史上最大の汚点ともいうべき行動が「もっとあのお方を知りたい」というなんともリリカルな理由で処理されていたり、アサシンという飛び道具の扱いが雑だったり、どうもゆるゆるな感がぬぐえない。

やっぱり聴く人を選ぶ気がする

あとやっぱりなんというか宝塚的というか、少女漫画的というか、ミュージカル的というか、なんとも舞台的な恋愛劇が受け入れられるかによって人を選ぶ感も受けました。
具体的に言うと、男からの「これを愛と呼んでも私は構わぬ。」で終わる呼びかけに対して、女の「これを愛と呼んでも私は構わないわ」で締めるやり取り。
このあたりをすっと受け入れられる感性を持つかどうかが境目のような気がします。
私?私の即物的な感性では、どちらかというとぞわぞわと落ち着かなくなってしまいまして…
ここを演じるおふたりに力がはいっているからこそではあるのですが。

主演級のお三方

さて、本作品で主演を務めるのは、元宝塚歌劇団花組トップ娘役の華優希(はな・ゆうき)さん。
青春アドベンチャーでは2022年の「黒い瞳のボヘミアン」以来の主演ですが、前作では割と陰のある役立ったので、本作のお転婆なアーミナは少し意外でした。
しかも話が進むにつれ、徐々に大人の女性の演技に代わっていく。
さすがは元トップ娘役です。

その他の出演者

また、華さんの並ぶ主要キャストは「軽業師タチアナと大帝の娘」以来の出演になる上口耕平さん(ユーセフ役)と渋い中年役で多数の出演経験のある横田栄司さん(マフムード役)。
大変失礼ながら、私、横田さんって「天下城」のイメージが強く、少ししゃがれた声もあり、もっとおじさんぽいビジュアルを想定していたのですが公式コメントの写真(外部リンク)をみるとなかなか素敵な方ですね。
闇の守り人」のジグロが印象的だった酒向芳さんとあわせてなかなか素敵な組み合わせです。
その他、もはや常連と言っても過言ではない藤岡正明さんや元ヤングシンバの横山賀三さんも出演されています。

是非こちらも

最後に中村小夜さんのXでのポストとヒロ・ヒロイさんのYouTubeの動画を紹介します。
前者は舞台になじみのない一般の方が地理的な感覚をつかむのに最適。
後者はシナリオ作りの経緯から説明されており視聴の際に必見。
これさえ見ておけばこのブログなんて必要ない?
まあそれは言わない約束ですよ。


各回サブタイトル

最後に恒例の各回サブタイトルを紹介してこの記事を終わりたいと思います。

  1. ダマスカスの花嫁
  2. アレッポの光と影
  3. 決戦前夜
  4. ミシュミシュの森
  5. 急転
  6. 裏切り、そして死
  7. 剣なき戦い
  8. 黒の花嫁
  9. アサシン迫る
  10. エルサレムへの道

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