恋愛映画は選ばない 原作:吉野万理子(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 恋愛映画は選ばない
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2013年6月3日~6月14日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 吉野万理子
  • 脚本 : 吉野万理子
  • 演出 : 小見山佳典
  • 主演 : 石田ひかり

目黒花歩里(かおり)は大手通販会社に勤める独身の会社員。
30歳の時に転職してきて、もうすぐ10年。
仕事は頑張ってきたけど、気がつけば40歳はもう目の前だ。
そんな花歩里の身辺が最近、妙に騒がしい。
一緒に独身を謳歌してきた親友の結婚。
気の強い後輩職員の入社。
母親の病気。
そして新しい出会い。
40歳を前に色々な選択肢が目の前に現れてきた花歩里。
選んでしまうと自分の持っている選択肢が減ってしまう気がする。
でも選ばなければ前には進めないこともわかっている。
どこにでもいるアラフォーの女性の人生の転機?を描く。



吉野万里子さんの小説を原作としたラジオドラマです。
この作品、タイトルに「恋愛」とはいっていますが、どちらかというと仕事の方が中心テーマで、このブログでのジャンル分けでは「職業」に分類される作品です(このブログにおけるジャンル分類についてはこちら)。

青春アドベンチャー向きか?

というより、はっきりいってNHK-FMのもうひとつのラジオドラマ番組である、FMシアターで放送しそうな作品。
作品中で色々事件は起きますが、さすがに「アドベンチャー」というのには無理があり、「青春アドベンチャー」という番組で放送するのが適当か微妙な感じを受けました。
もちろん色々なジャンルの作品が楽しめのがこの番組の良いところです。
でも、あまりに日常っぽい作品はほどほどにして頂きたいのが本音です…

連続して聴きすぎた

いきなりこういうことを書いたのには、私の側の勝手な理由もあります。
実は本作品のタイトルが「恋愛映画は選ばない」と「ない」で終わることから、ちょっとした特集として、前々回の「僕は勉強ができない」と前回の「ロズウェルなんか知らない」と「ない」で終わる似たようなタイトルの作品を紹介してみたのです。
しかし改めて考えると、これらが全て日常系の作品。
作品紹介にあたり両作品とも聴きなおしたため、さすがに日常系の作品に飽きてきていました。すみません、勝手で。
でも、ここまで来れば毒を喰わらば皿まで。
次回の紹介作品は青春アドベンチャーを代表する、日常系中の日常系作品にしてやろうかな(一体、私は何と戦っているんだか…)

アドべンチャーではないけど

さて、話を本作品に戻しますと、内容は冒頭に書いたようにアラフォーキャリアウーマンが巻き込まれる波瀾万丈な日常の話です。
確かに「アドベンチャー」ではないのですが、花歩里が体験する事件は、リアルな生活で起きたら十分にドラマチックなことばかり。
特に、挑戦的な後輩とのやりとりは、聴いていても結構胸が痛いです。
そのため、作品自体は結構ドキドキしながら楽しく聴くことが出来ました。

石田ひかりさん主演

主役の花歩里役を演じているのは石田ひかりさん。
いわずと知れた有名女優さんですね。
花歩里って一応、立派なキャリアウーマンですし、何気に他人に対する評価がきついキャラクターです。
例えば、「もっと興奮したっていいのに。私は逆だった。私はがっかりしていた。」とか、「断った瞬間、理由は明快だった。○○が偽者だと思ったから。」(ともに14話より)といった感じ。
結構、きついでしょ?
でも、石田さんの優しい語り口のお陰で、かなり丸い印象のキャラクターになっています。

大塚千弘さんが攻め

また、花歩里をライバル視する若手の井ノ原秋菜役は大塚千弘さん。
大手商社から転職してきたバリバリのキャリアウーマンで、事あるごとに花歩里に食ってかかり、花歩里をイライラさせる役です。
面白いことに大塚さん、昨年放送された「海に降る」では、転職してきたばかりの、やたらと積極的な同僚にイライラ『させられる』役でした。
本作品では大塚さんの演じる井ノ原秋菜役が攻める側であり、攻守が逆転する形となっていて、聴いていてなかなか面白かったです。

女性の意識は変わったのか

ところで、話は横道にそれますが、バブル真っ盛りの1990年のサウンド夢工房時代に、林真理子さん原作の「映画みたいな恋したい」というラジオドラマが作られています。
私は聞いたことがないのですが、本作品タイトルだけを比較すると全く真逆なのが面白いところです。
この20年で日本女性の生き方は変わったのか、変わっていないのか。
あんまり安易なことを書くと林さんと吉野さんに怒られそうですが、考えてみるのもちょっと面白いですね。

原作者兼脚本家

本作の脚本は吉野万里子さん。
つまり原作者である吉野さんが自らラジオドラマの脚本化したという珍しい形ではあるのですが、吉野さんの場合、FMシアター「想い出預かります」で同じ役割を担当されています。
原作を未見なので詳しくはわからないのですが、かなり原作を改変している脚本だそうです。
古くは、「アドベンチャーロード」時代に放送された島田満さん原作の「ぼくらのペレランディア」や「サウンド夢工房」時代に放送された藤井青銅さん原作の「愛と青春のサンバイマン」が原作者自らが脚色した作品だったと記憶します。
また本年放送された「泥の子と狭い家の物語」はもともとオカモト國ヒコさんが舞台用に書いた脚本をベースに自らラジオドラマ用の脚本を書いた例です。
もともと吉野さんは小説を書く前に脚本を書いていた方だそうですので、ベストチョイスなのではないでしょうか。
この辺の経緯については吉野さんご本人のブログが詳しいので、そちらも是非。


http://dramadays.blog12.fc2.com/blog-entry-318.html(外部リンク)

(外部リンク)

今後に期待

ちなみに本作品を演出した小見山佳典さんは今まで青春アドベンチャーでは本作品と上記の「泥の子と狭い家の物語」だけしか演出していません。
2作品ともこのような特徴的な成り立ちの作品です。
本作品では演出と制作統括(プロデューサー?)を兼務する形だからできたのでしょうか。
今後も是非、色々仕掛けて頂きたいものです。
できれば次回はもっと冒険色、SF色の強いものでお願いしたいところではありますが。

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