ぼくは勉強ができない 原作:山田詠美(青春アドベンチャー)

格付:C
  • 作品 : ぼくは勉強ができない
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C+
  • 分類 : 少年(中高)
  • 初出 : 1998年11月23日~12月4日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 山田詠美
  • 脚本 : 入山さと子
  • 演出 : 角井佑好
  • 主演 : 森田善之介

僕、時田秀美は17歳の高校生。
父親はいない。
すれっからしな母親とちょい悪の祖父に、日々、女性の本音や社会の本当の姿を教えられて育った。
だから、ちょっとニヒルでクールになってしまうのも仕方がないじゃないか。
僕は勉強ができない。
大多数の先生からは煙たがられているし、同級生とも微妙に話が合わない。
だから学校も少しだけ居心地が悪い。
でも女性にはもてるよ。
年上の恋人・桃子さんとも熱愛中だ。
僕は勉強ができない。
でもそれはいけないことなのだろうか。



1996年に映画化された山田詠美さんの小説をラジオドラマ化した作品です。
山田さんといえば「ベッドタイムアイズ」などの黒人の恋人を題材とした大人っぽい作品の印象が強いですが、この作品は高校生を主人公とした、ある意味、爽やかな作品です。
ただし、本作品でも、恋人の桃子さんとの絡みなどは、高校生が主人公である青春小説としてはかなり大人っぽいもので、山田さんらしいところです。

賛否両論

さて、この作品(原作)、ネットでちょっと検索すると、信者みたいにべた褒めする人と、けちょんけちょんに貶す人の2種類がいて面白いです。
私の印象をまず書きますと、作品中で展開される登場人物達の言動や作品のテーマもさることながら、作者の自分の主張を作品に潜り込ませるやり方がコテコテすぎて、ちょっと引いてしまったというのが素直なところです。
よって、ファンの方には大変申し訳ないのですが、ここから先はちょっとネガティブなことを書くことになります。
ご不快になりそうな方は読まないで下さいね。

そもそも日常系に期待していない

まず、本作のような子供が主役で日常生活が描かれる作品は私はあまり青春アドベンチャーに期待していません。
日常会話をだらだらと流されても折角の青春アドベンチャーの枠が宝の持ち腐れです。
自分が紹介した100作品を分析したこちらの記事でみると、意外と日常系の作品の平均点が高く、日常系全般がダメなわけではないのですが、正直、この作品はあまり楽しめませんでした。

むしろ押し付けてくる

具体的には、作中に登場する幾人かの登場人物達、具体的には、秀美の母親の仁子(じんこ)、秀美の恋人の桃子さん、秀美の祖父などが、あからさまな作者の代弁者として自己主張をしてきます。
彼らの(そして恐らく作者の)主張は、「他人に押しつけられた常識に囚われず自分なりの価値観でクールに行動すること」だと思います。
しかし、その主張が濃厚すぎて、「他人に常識を押しつけられないこと」を著者が押しつけてくる、という状況になっており、矛盾と息苦しさを感じてしまいました。

昔はこれがクールだったのか

例えば秀美はこんな発言をします。

僕は絶対に白黒つける側にはなりたくないんだ。
つけるんなら全部にマルを付けるよ。
そこから僕なりの価値判断でバツにするものをゆっくり選んでいくよ。
世間一般の定義を持ち込むようなちゃちなことはしない!

どうです。
一見、世間に逆らっているようで、ここまで言われちゃうと逆に気味が悪いほどのいい子発言に感じませんか。
もちろん彼らの発言の多くは一般論としては否定しがたいものばかりです。
しかし、それらを自分の都合の良いシチュエーションで都合良く組み合わせて使うことによって総合的にはおかしな行動の言い訳としている。
どうも気持ちよくありません。

相手を貶める描き方

また、作者と対局の立場に立つ登場人物達、例えば大部分の学校の先生達については、極端に戯画化し、興奮した状態で発言させることによって、彼らの主張自体を貶めるような手法をとっています。
実際にはあんな極端な教師はあまりいないと思います。
これもあまり気持ちの良いものではありませんでした。
これに関連して、教師だけでなく、哲学的なことばかりを言っている同級生をこき下ろすシーンがあるのですが、そのシーンも全体が作者の主張の垂れ流しに感じてしまいました。

これも時代の空気か

ただしこの作品が受け入れられた土壌があったのは確かだと思います。
秀美の生活は現在風に言うと「リア充」(=現実が充実していること。オタクの対義語的に使われる)なのですが、秀美は作中でむしろ今でいう「中2病」(=中学2年生などの思春期にありがちな自意識過剰な状態。こちらはむしろオタクに対して使われる)的な扱いを受けています。
そういう意味で秀美の言動は、いつの時代であったとしても、ある年頃の少年少女が共感できる普遍的な要素を含んでいるのだと思います。
ただし、作品発表から20年を経て、当時アウトロー的であった秀美の行動が、今となっては、むしろ羨ましがられるものになってしまっているというのが違和感の原因のひとつだと思います。

森田善之助さんって?

さて、作品の批評はこのくらいにして、本作の出演陣について話を移します。
主人公の秀美役は森田善之介さんという方が演じているのですが、この方がどういう来歴の方なのかわかりませんでした。
この森田さん、正直、前半は青春アドベンチャーで過去聴いた中でもトップクラスの棒読み調で、大丈夫かなと思ったのですが、後半は“こなれて”たのか、いかにも秀美ぽい感じで良いと思います。

2大しょうもない母親

一方、幼稚で我が儘な母・仁子を演じるのは范文雀(はん・ぶんじゃく)さん。
個人的にはアドベンチャーロード時代の「地の崖、幻の湖」など、本作品より少し前のラジオドラマに盛んに出演されていた記憶があります。
ベテランの女優さんであり、さすがの演技です。
私、「ミヨリの森」の記事で仁子のことを「青春アドベンチャーの2大しょうもない母親」と書いてしまったのですが、これは范さんの演技が素晴らしいのが逆効果になっている面があると思います。
ところでこの記事に書くに当たって少し検索して調べていたところ、范さん、2002年に亡くなられていることを知りました。
悪性のリンパ腫とわかったのが本作品が放送された1998年で、その僅か4年後に、満54歳で亡くなられているようです。
何ということでしょうか。若すぎます。

今福将雄さんご出演

また、異常に物わかりの良い「祖父」(作中で名前を呼ばれない)を演じているのはベテランの今福将雄さん。
とても暖かみのある声で飄々と演じています。
こちらは2013年現在92歳でご存命の様子。
頼もしい限りです。


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コメント

  1. S.K より:

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    久しぶりの書込になります。

    蒲生邸事件の冒頭でインタビューパートがありますが素人らしい声に混じって
    「歴史に興味ありますよ!」って話している人が本作の森田さんに聞こえてなりません。
    エンディングの出演者情報に無いので完全に憶測になってしまいますが放送時期的に本作のついでに収録したんじゃないかと想像しています。

  2. Hirokazu より:

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    S.Kさま

    コメントありがとうございます。
    NHKクロニクルを確認してみましたが、確かに名前は出ていませんね。
    でもおっしゃるようなこともありそうな気がします。
    確認することは難しいでしょうが。

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