サハラの涙 原作:山崎晴哉(アドベンチャーロード)

格付:B
  • 作品 : サハラの涙
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B+
  • 分類 : アクション(海外)
  • 初出 : 1988年5月9日~5月20日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 山崎晴哉
  • 脚色 : 山崎晴哉
  • 演出 : 松本順
  • 主演 : 大塚ちか子

百合子は、自称「正義はわからないけど愛なら一杯ある」女子高生。
両親が早くに他界したため、遠縁の坂本悠馬(さかもと・ゆうま)の家に住んでいる。
悠馬は百合子のあこがれの人であるが、実は今売り題し中の世界的な大泥棒であった。
ある日、悠馬が親友・大地有太郎からの依頼で、東ヨーロッパ・ロジアーノのスパイ・ジェイコブスキーの付け髭を盗んだことから事件は始まる。
その付け髭には「サハラの涙」と呼ばれる秘宝の在処が秘められていたのだ。
事件に巻き込まれ誘拐されてしまう百合子。
彼女を追って、悠馬と仲間達はアフリカのアルーラ王国に向かうが、そこでは思いもよらない大冒険が待っていたのだ。



当記事はNHK-FMのアドベンチャーロードという番組で放送されたラジオドラマ「サハラの涙」を紹介するものです。

原作付き?オリジナル?

アドベンチャーロードという番組は、基本的に小説などの原作がある作品をラジオドラマ化する番組でしたが、本作品は放送中で「作:山崎晴哉」とコールする一方で、脚色者がコールされていません。
そのため、「ロスト・タイム」などと並んで数少ないオリジナル脚本の作品だと思っていたのですが、この記事を書くにあたり検索したところ、本作品の放送の2カ月前に山崎晴哉さんの著書で「サハラの涙―ユウマとユリ」なる小説が出版されていることに気がつきました。
そのため、本作品は山崎さんの小説をベースに山崎さんご自身が脚本を書いたものではないかと考えました。

その他の例

青春アドベンチャー系列の番組で、原作者自身が脚本を書かれた作品は、数は少ないですが類例はあります。
具体的には、「愛と青春のサンバイマン」・「笑う20世紀」(藤井青銅さん、1991年・1994年)、「あたしの嫌いな私の声」(成井豊さん、1992年)、「昔、火星のあった場所」(北野勇作さん、1994年)、「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」(寺田憲史さん、1996年)、「恋愛映画は選ばない」(吉野万理子さん、2013年)などが該当します。
いずれの方々も脚本を書かれてもおかしくない経歴の方ばかりです。

本職は脚本家

実は、山崎さんも本職はアニメを中心とする脚本家だそうです。
Wikipediaによれば「巨人の星」や「キン肉マン」のメインの脚本家だったとか。
何より、宮崎駿さんと組んで世紀の傑作「ルパン三世 カリオストロの城」をものにしているので、脚本家としての実績は十分すぎるほどです。
そのため、本作品も、原作者=脚本家と推測し、冒頭のとおりの記載としました。
誤りがあればご指摘ください。
なお、原作は本作品の後、「マドリッドの朝焼け」、「函館のコスモス」、「ウィーンの微風(そよかぜ)」、「メルボルンの小百合」と4作品もシリーズが発刊されているようです。
人気シリーズだったんですね。

コバルト文庫

さて、本作品の原作は、「集英社文庫コバルトシリーズ」(現在の「コバルト文庫」)という少女向けの文庫シリーズで発刊された作品です。
今ではライトノベルや携帯小説などがその役割を担っているのかもしれませんが、昭和末期には「少女小説」とも呼ばれる「淡い恋+α」がメインテーマの小説ジャンルがあり、コバルト文庫はその中心でした。

例えば…

本ラジオドラマが放送されたアドベンチャーロードは、現在の青春アドベンチャーと比較すると男性向けのイメージの強い番組でしたが、実はこのジャンルの作品を原作とする作品も意外と多く、「スターライトだんでぃ」、「いつか猫になる日まで」、「少女探偵に明日はない」などが該当します。
番組は異なりますが、既に紹介した作品では、新井素子さん原作の「星へ行く船」(カフェテラスのふたり)、折原みとさん原作の「夢みるように愛したい」(サウンド夢工房)、藤本ひとみさん原作の「王女アストライア」(青春アドベンチャー)なども類似のジャンルですね。

コテコテ・お手軽・ライト

まあ、とにかく本作品も、一言で言えば「恋と冒険」の話です。
本作品の場合、どちらかという「冒険」の方がメインになっていますが、そういう作品ですので、基本的にはコテコテのキャラクター造形とお手軽な展開、そしてあくまでライトな雰囲気が特徴の作品です。
まずキャラクターで言うと、「坂本龍馬の子孫で世界的な大泥棒」(悠馬)、「アラン・ドロンの息子」(アランジュニア)、「マリリン・モンローの娘」(マリリン清原)、「クレオパトラの子孫」(パトラ女王)、「東欧某国のスパイ」(ジャイコブスキー)、「世界的な殺し屋」(ワシノビッチ)と、属性と名前を聴いただけで、ほとんどキャラクターの性格まで想像できてしまう、お手軽さ。
冒険の目的となるお宝も「古今東西見たことがない大きさと輝きのダイヤモンド」というわかりやすさ。
普通の少女(百合子)が、普通でない状況に巻き込まれ、普通でない人たちと冒険を共にするというこのコテコテの展開。
大体、アフリカに行ったからって道をふさぐのが象、豹、ゴリラだとか、結局最後はチャンバラで締めくくる(一応、アランが剣道をしていたことは伏線になっている)、なんてあまりに安易です。

いいんですよ、これはこれで

はっきり言ってB級ではありますが、それを徹頭徹尾貫いている様はむしろすがすがしいですし、最後のいかにも気障な終わり方も、意外と悪くない余韻があります。
予言村の転校生」などでも書きましたが作品の終わり方は評価に大きな影響を与えますね。
とにかく、単純な冒険活劇として、気軽に聞くには悪くない作品です。

アニメ声優大挙出演

冒険活劇といえば、キャストもそれにあわせてあり、堀秀行さん(悠馬役、「魁!!男塾」の剣桃太郎)、塩沢兼人さん(大地有太郎役、「機動戦士ガンダム」のマ・クベ)、小山茉美さん(パトラ女王役、「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻アラレ)、塩屋翼さん(セイヤ役、「伝説巨人イデオン」のユウキ・コスモ)、宮内幸平さん(老人役、「ドラゴンボール」の亀仙人)、そして井上真樹夫さん(ナレーション、「ルパン三世」の石川五エ門)など、往年のアニメ声優さんがズラリです。

他にもアニメぽさが

アニメといえば作中のBGMで頻繁に「機動戦士Zガンダム」の曲が使われるのも懐かしさを誘うところです。
また、作品の冒頭は、百合子の日記を脚本家(ナレーションと同じ井上真樹夫さん)が読むシーンから始まります。
つまりこの作品の脚本家がナレーションしているような仕立てになっており、なかなかスムーズな導入部だと思います。

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