- 作品 : 海に降る
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 職業
- 初出 : 2012年11月19日~11月30日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 朱野帰子
- 脚色 : 永津愛子
- 音楽 : 小林洋平
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 大塚千弘
天谷深雪は有人潜水調査船〈しんかい6500〉の女性初のパイロット候補生。
JAMSTEC(海洋研究開発機構)の有人探査部に所属し、かつてしんかい6500の開発に携わりながら深雪を捨ててアメリカへ渡った父への思いを引きずりながらパイロットを目指している。
高峰浩二はJAMSTECの広報部に中途採用された男性。
正体不明の深海生物「白い糸」の発見に生涯をささげた父の夢を継ぐために畑違いのJAMSTECに転職してきた。
二人はそれぞれの夢をかけ深海へ向かう。
深海・未確認生命体シリーズ①
「北壁の死闘」・「脱獄山脈」で山岳冒険小説の楽しさ、ラジオドラマとの相性の良さを書きましたが、海洋冒険小説もまたラジオドラマ向きの題材だと思います。
山岳もので吹雪の音がラジオドラマに映えるのと同じように、海洋ものの波や水泡の音も作品世界に入り込むために非常に効果的です。
2012年では「氷山の南」が海洋冒険ものでしたが、過去の青春アドベンチャー系列の番組でも海を舞台とした作品がたくさんあります。
今回は、2012年11月に放送された「海に降る」を記念?して4回連続で「深海・未確認生命体」シリーズで記事を書いてみたいと思います。
正統派お仕事もの
さて、第1弾はずばりその「海に降る」です。
冒頭に海洋冒険小説について書きましたが、実は本作品で肝心の潜行シーンが描かれるのは主に最後の2話だけであるため、このブログのジャンルは「職業」にしました。
腹違いの弟の発言により閉所恐怖症を発症してしまった深雪と、父の夢を適えるために強引な行動にでる高峰。
それにこの二人を取り巻くJAMSTECの人々の理想と現実の狭間で奮闘する姿が作品の主な内容です。
社会人の皆さんには言うまでもないことですが、実際に仕事を進めていくときには、会社の方針的な大きな問題から細々した事務的なことまで、万事なかなか綺麗ごとでは済まない場面も多いものです。
この作品はフィクションですので、かなり爽やかな描かれ方にはなっていますが、現実的な問題もきちんと踏まえて描かれていることに共感できる内容でした。
ちょっとした疑問
とはいえ、正直言って作品中の高峰の行動は、実際にやったらとても上手くいくとは思えませんし、そもそも技術者の夢とか意地とかの個人的な思いのために税金を使われたら堪らんなあ、という気もします。
その辺、NHKの「プロジェクトX」の一部の回(「技術者の意地に火がついた」的な内容の回)と共通する胡散臭さを多少感じるのですが、まあフィクションですしあまり爽快感がないのも困りますしね。
あと、そもそも海面下7000mで生息できる海生***(ネタばれのため伏字にしました)って実際に存在できるものなのでしょうか?
マッコウクジラは2000mの深海にも潜れるとはいいますが、なにで7000mですし。
この辺は原作を読めば説明があるのかも知れませんが何となく引っかかりました。
とにかく、深海に潜るとはどういうことかについての科学的、経済的、政治的側面を踏まえたうえで、青年の成長物語として仕事や恋愛も交えてしっかり描かれていますし、最後はきっちり潜行シーンもありよくできた作品だと思います。
青春アドベンチャー初主演の大塚千弘さん
出演は主役の深雪役が女優・歌手の大塚千弘さん。
公式ブログ(外部リンク)をみましたがかわいらしい方ですね。
同じNHK-FMのFMシアターにも複数回出演経験があるようで、ラジオドラマも手馴れた感じで安心して聞けました。
本作品のあと青春アドベンチャーでも、「きりしたん算用記」(2017年)、「夜のストーリーボックス」(2019年)などでも主演することになります。
一方、途中の大演説?が印象的な高峰役は多田直人さん。
キャラメルボックス所属の舞台俳優さんで、こちらもさすがに安心して聞ける演技だったと思います。
こちらも注目
なお、本作の関連作として2013年7月にFMシアターの枠で「星を掘れ!」が放送されています。
朱野さん原案のオリジナル作品です。
こちらの記事もご覧ください。
「深海・謎の未確認生命体」シリーズの第2弾はこちらです。
2015/7/26追記
「海に降る」が有村架純さん主演でTVドラマ化とか。
WOWOWで2015年10月10日放送開始予定とのことです。
TVドラマより約3年早いラジオドラマ化。
相変わらず青春アドベンチャースタッフの先物買いの才能が冴えていることが証明されていますね。
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