特集【お勧め作品①】小川一水「天涯の砦」「疾走!千マイル急行」
今回から始まったこのシリーズ。
私が「青春アドベンチャーで取り上げてくれたらいいなあ」「あの青春アドベンチャー作品を好きな方ならこっちも気に入るのではないだろうか」と思った作品を勝手に取り上げていきます。
つまりこのシリーズで紹介する作品は基本的に青春アドベンチャー化されて「いない」作品ばかりです。
ブログの趣旨とずれてきているかも知れませんが、ご笑覧下さい。
なお、私自身も自分の気に入る作品に常に飢えています。
「こいつにはこの作品があうんじゃないか」と思った作品があった方は是非ご紹介下さい。
記念すべき第1回は小川一水さん
さて、記念すべき第1回(第2回があるかは不明)は小川一水さんの「天涯の砦」と「疾走!千マイル急行」です。
小川さんの作品としては既に「イカロスの誕生日」が放送されています(さらに2018年3月には「時砂の王」放送)。
これはこれで良いのですが、小川一水さんの作品で私が最も好きな作品は、今のところ長編では「復活の地」、短編集では「老ヴォールの惑星」です。
また、実は小川さんは現在、完成すれば恐らく代表作と呼ばれるであろう大長編「天冥の標」を執筆中です。
しかし今回は青春アドベンチャー向きの作品として敢えて「天涯の砦」と「疾走!千マイル急行」を挙げさせて頂きました。
天涯の砦
「天涯の砦」は、地球と月を中継する軌道ステーション「望天」で大事故が起こり、残された数少ない生存者達がわずかな連絡手段を頼りに絶望的なサバイバルを始める話です。
限定された連絡手段、真空の軌道上という苛酷な環境、大気圏突入の危機、そして裏切者の可能性など、次々と危機的な状況が起こる中で様々なドラマが繰り広げられます。
主人公である青年の成長物語である点、青春アドベンチャーの枠に何とか収まりそうな分量の作品である点も今回、推薦した理由です。
災害パニックモノは小川さんの得意分野であり、逆に青春アドベンチャーも「スフィア」の例のようにパニックものが生きる番組だと思います。
本作は小川作品の代表的分野であるハードSFの中で最も青春アドベンチャーに嵌る作品と考えています。
疾走!千マイル急行
一方、「疾走!千マイル急行」は、最高級の蒸気機関車で旅行に出た14歳の少年が各国の政治・軍事の謀略の只中に投げ込まれていく話です。
最初は故国の技術と贅を尽くした(という触れ込みの)超特急で単なる旅行に出たはずであったのですが、やがてこの超特急が帯びている密命が明らかになります。
そして少年達は激変する国際情勢に翻弄されながら蒸気機関車を唯一の武器にとして故国を守る道を探していきます。
少年達の成長物語であることと、分量も上下巻なのでうまく省略すればぎりぎり入る分量かと思い、青春アドベンチャー向きと書かせていただきました。
正直、私の趣味からするとやや若年層向けすぎるのですが、いうならば小川作品のもうひとつの代表分野であるライトノベルの代表として選んだものです。
名作日本SFへのオマージュ
ところでこの「疾走!千マイル急行」で思い出すのが、アドベンチャーロード時代に制作された、山田正紀さん原作の「謀殺の弾丸特急」。
列車で逃げるという設定自体が、それほど特異なものではないため、特に似ているという訳ではないのですが、改めて考えると小川さんの小説って、過去の日本の名作SFをモチーフにしたと思われる作品が結構多い。
「復活の地」は小川さんが大好きだと公言している小松左京さんの「復活の日」を意識したタイトルだと思いますし、「導きの星」は眉村卓さんの名作「司政官」シリーズを思い出させずにはいられません。
そういう意味でも小川さんは日本SFの系譜に連なる人であると思います。
読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。
なお、本記事で言及した他の作品についても一言だけ書きたいので、次の記事に続くこととさせていただきます。
「青春アドベンチャーにしたら」面白いのではないか!と思う記事の一覧はこちらです。
私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。
是非ご覧ください。
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