尾瀬あきら「とべ!人類」「とべ!人類Ⅱ」

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【特集:お勧め作品⑦】尾瀬あきら「とべ!人類」「とべ!人類Ⅱ」

毎回、冒頭に断り書きを入れないと趣旨が非常に分かりづらいこの特集。
まずは、以下の2点をご了承下さい。

  1. 本ブログはNHK-FMのラジオドラマを紹介するブログです(「はじめに」をご参照下さい)。
  2. でも、この記事はこれからラジオドラマ化されたら嬉しいなあと思っている小説・漫画等を紹介する記事ですので、この記事で紹介した作品はラジオドラマになっていません(この特集の第1回をご参照下さい)。

いちいち面倒くさいので「お勧めの作品」に変わる適当なタイトルを考えたいのですが、なかなか上手いタイトルが見つかりません…

さて、今回紹介する作品は尾瀬あきらさんの漫画「とべ!人類」とその続編の「とべ!人類Ⅱ」です。



社会派の色濃い尾瀬あきらさん

尾瀬さんの作品で最も有名なのは「夏子の酒」でしょうか。
ラブコメ作品「初恋スキャンダル」で実質的なデビューをした尾瀬さんですが、その後の作風は社会派の色が濃く、成田闘争を扱った「ぼくの村の話」のように非常に重い話もあります。
青春アドベンチャーではすでに「光の島」が採用されています。
基本的にモーニングやビックコミックスなどの娯楽色が強い雑誌に連載しており、その面では異色の漫画家さんだと思います。

「とべ!人類」とは

「とべ!人類」は1970年代に毎日中学生新聞に連載された、尾瀬さん初期のSF作品です(当時は松本めぐむ名義)。
SFといっても宇宙船内に地球上と同じような重力があることの説明が特にないなど、SF的な考証を重視しておらず、設定的にはハードSFというよりジュブナイル作品です。
とはいえ、目が覚めたら宇宙船「ホモ・サピエンス号」に乗せられていた7人の少年少女達が、人類の新たな母星となるはずの「カノウプス系第3惑星P3」へ向かうために苦闘するというストーリーで、主人公達は核戦争による人類最後の生き残りという重い使命を負わされており、意外とハードな内容です。

少年少女のサバイバル

この作品は尾瀬さん初期のヒット作「初恋スキャンダル」以前の作品であり、漫画家になった当初から尾瀬さんが社会問題へ強い意識をもっていたことが窺われます。
しかし、核戦争の是非がどうこう以前に、宇宙船でのサバイバルや仲間達との友情や恋愛が話の中心で、素直に楽しめる娯楽作品でもあります。
本作は「尾瀬あきら選集2」に収録されていますので、詳しくは是非、直接読んで頂きたいところなのですが…
これって絶版のようです。
うーん。

「とべ!人類Ⅱ」とは

そして「とべ!人類Ⅱ」です。
ⅡはⅠから約100年後のホモ・サピエンス号が舞台で、いわゆる「世代宇宙船もの」といわれるジャンルのSF作品です。
世代宇宙船ものとは、SF界の巨匠ロバート・A・ハインラインの「宇宙の孤児」から始まったSFのジャンルで、何世代も掛けて恒星間航行を行う宇宙船を舞台にしたSF作品です。
ちなみに青春アドベンチャーでは「エデン2185」が世代間宇宙船ものです。
このジャンルの作品においては、たいていの場合、世代を経るにしたがって当初の目的が見失われていくという展開を迎えるようです。
本作におけるホモ・サピエンス号は単なる宇宙船ではなく、人類存続を掛けた移民船でもあるのですが、閉鎖された環境で宇宙飛行の目的だけでなく、この人類絶滅の危機という事実も忘れ去られています。
そうした中で、再び複数の勢力に別れ争うようになってしまう人々。

予想以上にハードな展開

Ⅰはジュブナイル色の強い、言ってみれば子供向きの作品ですが、Ⅱは少年向けとはいえかなりハードな社会派SFで内容的にも色々な(?)ちょっと上の年齢向きの作品です。
物語の結末も、ほとんど甘さのない、でも完全な絶望ともいえないハードなものです。
私はⅠを読んで随分してからⅡを読んだのですが、正直、Ⅰがとても好きだったので、この展開にはびっくりしました。
きちんとⅠの続編として成立していながら、がらっと雰囲気は変わっています。
でも読み進めていくうちにこちらもとても好きになりました。
テーマはⅠもⅡも同じ(人類は相互理解はできるのか)だと感じます。
そして、ⅡはSFとしてよくできた作品だと思いました。
こちらは「尾瀬あきら選集3」に収録されているのですが…
がーん。
こちらも絶版のようです。

絶版なのが残念

ということで入手の困難さからお勧めしづらい面もあるのですが、Ⅰが10話、Ⅱも10話くらいで青春アドベンチャーに丁度のサイズです。
「宇宙の孤児」も適度な長さのSFでこちらも青春アドベンチャー向きだと思いますが、少年少女が主人公という意味でも「とべ!人類」シリーズはぴったりの作品だと思います。
ちなみに「宇宙の孤児」と「とべ!人類Ⅱ」は主人公たちが迎える結末が全く違います。
読み比べると面白いかもしれません。

読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。


次の特集は「最多原作者」シリーズです。記事はこちらになります。


次の特集は、お勧め作品の田中芳樹さんの「マヴァール年代記」です。
こちらの記事をご覧ください。


「青春アドベンチャーにしたら」面白いのではないか!と思う記事の一覧はこちらです。
私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。
是非ご覧ください。



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