梅原克文「二重螺旋の悪魔」

ドラマ化希望作品

特集【お勧め作品⑤】梅原克文「二重螺旋の悪魔」  

ラジオドラマのブログなのにラジオドラマ化されていない作品を取り上げる、このシリーズ。
この謎の企画の趣旨がわからない方、間違えてこのページにたどり着いてしまってそもそも「青春アドベンチャーって何?」という方はこちら(第1回)とこちら(はじめに)をご覧ください。
さて、前回から時間が空いてしまった第3回目の今回は梅原克文さんの「二重螺旋の悪魔」を紹介します。


「ソリトンの悪魔」も良いのだけれど…

実は現在、当ブログでは勝手に4回連続の予定で「深海・謎の未確認生命体」シリーズ(第1弾第2弾)をお送りしています。
このテーマで青春アドベンチャー化して欲しい作品として真っ先に思いついたのは梅原さんの「ソリトンの悪魔」でした。
「ソリトンの悪魔」は海上都市、油田基地、海中等を舞台にしたSF・冒険ものの大作であり、大事故や潜水艦シーンなど派手な見せ場の連続のエンターテイメント作品です。
「ソリトンの悪魔」に出てくる謎の生命体は、「海に降る」や「遠い海から来たCOO」に出てくるSFに出てくる謎の生物としてはごく典型的な”アレ”とは全く異なった、とてもSF的な「ソリトン生命体」。
とても面白いアイデアですが、本作全体はハードSF的な読みにくい作品ではなく娯楽色の強いジェットコースタードラマです。
作品の完成度という点でも、今回紹介する「二重螺旋の悪魔」に勝っていると思います。

でもお薦めは「二重螺旋」

…と思うのですが、梅原さんの作品で一つお勧めするとやはり「二重螺旋の悪魔」になります。
寡作の作家の、しかも初期の作品(実質的なデビュー作?)で、もともとはSF同人誌「宇宙塵」に掲載された中篇をベースに作り直した作品のため、全体の構成バランスはあまりよくありません。
おそらく中篇がベースとなっているであろう第1部は第2部以降とかなりの毛色が違う内容ですし、下巻以降(第3部)はまた大きく雰囲気が変わります。

「若書き」であるからこそ

しかし、それが良いのです。
若い作家が勢いのまま、力のまま、より面白いエンタテイメントを追求して貪欲に話を変転させたことが作品に迫力を与えていると思います。
第1部も面白いですが、物語の最後には第1部終了時では想像もできないところまで連れて行ってくれます。
ラストはちょっと予定調和的かもしれませんが、この大作にふさわしい爽やかな?エンディングです。

遺伝情報を種にしたSF

内容を書き忘れていました。
採用しているSF的なギミックはDNAのジャンクデータであるイントロン。
この科学的には一見無意味と考えられているデータに恐ろしい情報が秘められているとしたら。
そしてそのデータを仕組んだものがいるとしてら、それは”神”なのではないか。
話は恋人を死なせてしまった主人公・深尾の個人的な戦いから始まり、やがれ人類全体の運命へとつながっていきます。
遺伝情報を使ったSFは一時期、結構、流行ったジャンルで「パラサイト・イブ」(瀬名秀明)などのベストセラーもありましたが、冒険活劇としてのケレン味、勢いでは「二重螺旋の悪魔」の方が上だと思います。
そもそも「二重螺旋の悪魔」の方が先に発表された作品だったはずですし。

神を狩れ

また、よく考えると「神との戦い」というテーマは、私の心の一冊である「神狩り」(山田正紀)のテーマでもあります。
自身の作品をSFと呼ばれることを好まない梅原さんですので「神狩り」を引き合いに出されるのは、梅原さん、山田さんともに嫌かもしれませんが、私は両作とも(ちょっと違ったニュアンスで)大好きです。

読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。


「深海・謎の生命体」シリーズの第4弾(最終回)はこちらです。


次の特集は何でもベストテンの第4弾です。


次のお勧め作品は「妖精作戦シリーズ」です。


「青春アドベンチャーにしたら」面白いのではないか!と思う記事の一覧はこちらです。
私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。
是非ご覧ください。



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