- 作品 : レディ・スティンガー
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA
- 分類 : アクション(海外)
- 初出 : 1994年12月5日~12月16日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : クレイグ・スミス
- 脚色 : 大橋泰彦
- 演出 : 芦田健、川口泰典
- 主演 : 春風ひとみ
今日は我ながら上手くやった。
ターゲットは、ひと仕事終えてリラックスしていた腹の突き出た中年男。
確か、名前はボブといったか。
バーで男に一服盛って、ホテルの部屋で彼が熟睡するのを待つだけの簡単なお仕事。
バリーがいうとおりではある。
しかし警察に捕まるリスクを冒しているのはこの私、マギーだ。
バリーごときに楽な仕事などと言われるのは心外だ。
しかし、口の上手いバリーにまた丸め込まれて、今日は、2回目の「仕事」をする羽目になってしまった。
気乗りはしないが、いざ次のバーに行ってみると、とびきりのいい男が座っていた。
目つきが鋭すぎるのが気になるが、いつもどおり仕掛けは上々。
今回も楽な仕事になる…はずだったのだが。
青春アドベンチャーでは数少ない「海外原作の本格的ハードボイルドもの」という奇跡の一作、それが本作品「レディ・スティンガー」です。
他のハードボイルド作品
青春アドベンチャーは四半世紀に及ぶ長い歴史がありますが、同じ「アドベンチャー系」の昔のラジオドラマ番組と比べると、やや作品選択が低年齢向きで、ハードな作品は多くありません。
ハードボイルドものとしては、せいぜい逢坂剛さん原作の「あでやかな落日」、大沢在昌さん原作の「新宿鮫・氷舞」、桐野夏生さん原作の「顔に降りかかる雨」くらい。
「BANANA FISH」3部作もテーマ的にはハードボイルド要素も多いのですが、吉田秋生さんの絵のイメージが強いので、どちらかというとBLの臭いがします。
しかも海外原作
いずれにしろ、それらの作品と比較しても本作品は、海外原作という点で出色です。
その他、基本的に登場人物が全員犯罪者であることといい、海外原作らしい台詞回しといい、全体に流れる雰囲気といい、1980年代の「FMアドベンチャー」や「アドベンチャーロード」の作品と言われても信じてしまいそうなほどです。
主人公は詐欺師
さて、本作品の主人公マギーと彼女の相棒バリーは、男女の詐欺師ペア。
日本風に言うと、一種の美人局(つつもたせ)ですが、ふたりは夫婦ではありませんし、マギーは睡眠薬を使って男から金品を強奪するので、現場でのバリーの出番はありません。
そういう意味ではバリーは相棒と言うよりマネージャー役であり、マギーはバリーに利用されている立場にあります。
そんなふたりなので当然信頼しあっているはずもなく、今回のような事件に出会うとすぐに仲は決裂、それぞれ自分の利害のために動き始めることになります。
脇役も怪しい
そして、この事件のキーとなる「目つきの鋭いいい男」ジャック・シャンクスもまた、腹に一物ある男です。
彼はある目的のためマギーに近づいたのですが、あくまで欲しいのはマギーの「腕」だけであり、そこに人間的な信頼感や友愛の情はありません…なかったはずなのですが…
ハードボイルドらしい道具立て
本作品は巨大な陰謀が背景にあるわけでもなく、長い時間を掛けた緻密な作戦が展開されるわけでもありません。
中盤までの展開もかなりゆっくりとしています。
しかし、裏社会の小さな事件を背景に、詐欺師、マフィア、酒、薬、暴力、そして私刑(リンチ)といったいかにもハードボイルドな小道具が雰囲気良く使われた作品で、なかなか楽しく聴くことが出来ました。
お互い後ろ暗いところがある疑心暗鬼の3人、生き残るのは誰か。
これ以上は聴いて(聞いて)のお楽しみとしましょう。
春風ひとみさん主演
本作品の出演者に話を移しますと、まず主役のマギーを演じるのは元宝塚女優の春風ひとみさん。
「五番目のサリー」、「ジャンヌ」、「カムイ外伝」、「あの夜が知っている」など多くの作品に出演されていますが、主役はこれ1作だけかも知れません。
松重さんもピタリ
また、準主役のジャック・シャンクスを演じる松重豊さん(TVドラマ「孤独のグルメ」の井之頭五郎役でブレイク)も「猫のゆりかご」、「時間泥棒」など他にも主演作がある常連出演者さんでした。
多くの作品に出演されたおふたりですが、個人的には青春アドベンチャーではこの「レディ・スティンガー」が代表作と言って良いくらいはまっていると思います。
バリー役の橋本潤さん(橋本さんのベストは「霧隠れ雲隠れ」だとは思います)も含めて、演者さんの外見のイメージとも一致しているのがなかなか見事です。
残念、田山さん
この3人が主役級で、他には田山涼成さん、前田悠衣さん、関根信昭さんなどがご出演されています。
田山さんは冒頭から登場し、「ついに田山さん主演の作品ができたか!」と思わせるのですが、残念ながら本作品でも主役級とはいきませんでした。
【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。
【近代から現代にかけてのアメリカ合衆国を舞台にした作品】
第1次世界大戦後に完全にイギリスから覇権国家の座を奪い取ったアメリカ合衆国。
その発展期から現代までを舞台にした作品の一覧はこちらです。
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