猫のゆりかご 原作:カート・ヴォネガット・ジュニア(青春アドベンチャー)

格付:C
  • 作品 : 猫のゆりかご
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C+
  • 分類 : SF(海外)
  • 初出 : 1993年4月19日~4月30日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : カート・ヴォネガット・ジュニア
  • 脚色 : じんのひろあき
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 松重豊

私はその時、「世界が終末を迎えた日」という本を書くために、原子爆弾を開発した物理学者・ハニカー博士の遺族を取材していた。
この本は広島に原爆が投下された時にアメリカ合衆国の重要人物達が何をしていたのかをまとめる本になる予定だった。
しかし、取材の過程でハニカー博士が製造に成功したという、氷の特殊な結晶体「アイス・ナイン」の話を聞く。
そして、奇人であったハニカー博士に優るとも劣らない、博士の3人の奇妙な子供達や、生前の博士の近くにいた人々に取材を続け、ボコノン教なる奇妙な宗教に支配される国をめぐるうちに、私は“世界の終わり”に立ち会うことになるのだった。



アメリカを代表するSF作家カート・ヴォネガット・ジュニアの代表作を原作とするラジオドラマです。
青春アドベンチャーでは珍しい「巨匠」の「代表作」を原作とする作品です。

この作品で修士号?

いや、この作品、評価が難しいなあ。
凝った構成といい独特な内容といい、なかなか興味を引かれるのですが、単純に娯楽作品として面白いかというと微妙です。
本作品の特徴を述べるとすれば難解の一言に過ぎます。
このブログでは「完璧な涙」や「昔、火星のあった場所」などのような形而上的な要素が強い尖ったSFは、その作品をチョイスしたスタッフの勇気は認めつつ、娯楽番組としては素直に楽しみづらいという点から辛めの格付けを付けている例が多いのですが、本作品は何となくそれをしづらい迫力がある。
具体的には、SFでありながら、科学と宗教と倫理、国家と人間の本質などどいった現実の諸問題を扱っており、何とヴォネガットはこの作品をもって人類学の修士号を授与されているのだそうです。

気を抜けない

また、世界の終末まで描くスケールの大きな作品でありながら、作品構成は、主人公が取材を続けていくことにより細かいエピソードを積み重ねていく形式です。
そのため、いちいち集中して聴いていないとすぐに先に行ってしまいます。
さらに、登場人物に突拍子がないセリフが多いですし、度々途中に挟まれる”ボコノン教”の警句もいちいち寓意に富んでいます。
そのため、聴く者の集中力と想像力を必要とする作品です。

人を選ぶ

エピソード自体も奇妙で違和感のあるものが多く、エピソードごとに奇妙なSEが入ることもあり全体に妙な雰囲気のある作品になっています。
そしてまた、主人公役の松重豊さんが、低い声で淡々と膨大な量のナレーションをするのがこの雰囲気に拍車を掛けています。
とにかく聴く人を選ぶ作品であることは確かでしょう。
私?
私は正直、ちょっと辛かったかな…
ラジオドラマはもうちょっと気軽に聞きたいものでして…

松重豊さん主演

さて、本作品の主役である語り手(=ジョン)を演じるのは松重豊さんです。
TVドラマ「孤独のグルメ」でブレイクした松重さんですが、1990年代の青春アドベンチャーでは「星の感触」、「バイオレンスジャック」、「バッテリー」など多くの作品に出演されている常連出演者さんでした。
脇役も松本保典さん(あの夜が知っているランドオーヴァーシリーズなど)や前田悠衣さん(わたしは真悟五番目のサリーなど)など実に青春アドベンチャー慣れした面々。
また、本作品、中高年の男性の役が多いのですが、これらを川久保潔さん、八木光生さん、関根信昭さんの旧東京放送劇団3人衆が固めているのも懐かしいところです。

じんのひろあき+川口泰典

一方、スタッフは脚色:じんのひろあきさん、演出:川口泰典さんの名手2人が組んでいます。
お二人とも多くの傑作を手がけられた方で、特にこの二人が組んだ作品としては「わたしは真悟」、「北壁の死闘」、「五番目のサリー」、「BANANA FISH」などがあります。

タイトルに気をつけろ

なお、最後に一言。
アドベンチャーロード時代の「いつか猫になる日まで」もそうでしたが、本作品には、猫はでてきません
そもそも「猫のゆりかご」というほんわかとしたタイトルとは全く異質の作品です。
猫好きの方はお気を付け下さい。

【じんのひろあき脚本の他の作品】
スピーディーな展開、的を絞った見せ場。
青春アドベンチャー初期の名脚色家・じんのひろあきさんの担当作品一覧はこちらです。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。

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